管理会社等との紛争13 管理組合に対する宅配物の宅配ボックスへの誤投函を防止するための有効な対策を取らない等を理由とする損害賠償請求が棄却された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理組合に対する宅配物の宅配ボックスへの誤投函を防止するための有効な対策を取らない等を理由とする損害賠償請求が棄却された事案(東京地判令和2年1月16日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンションの区分所有者かつ居住者である原告が、同マンション管理組合である被告組合及びその理事である被告Y2に対し、被告らが①本件宅配ボックスに欠陥があること及び欠陥のない機種の存在を知っていながら本件宅配ボックスに欠陥がないと主張していること、②欠陥のある本件宅配ボックスの使用を開始したこと、③原告宛ての宅配物の本件宅配ボックスへの誤投函を防止するための有効な対策を取らないこと並びに④本件宅配ボックス内の宅配物に記載された個人情報を盗視したことにより、原告の権利・利益が侵害されたと主張して、不法行為(共同不法行為)に基づき、本件宅配ボックスの使用中止及び廃棄、本件宅配ボックス内の宅配物に記載された個人情報の盗視の中止並びに原告が被った損害額265万円の一部である100万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件宅配ボックスの利用を拒否していた原告宛ての荷物が、平成30年11月から令和元年9月までの1年弱の間に合計8回、本件宅配ボックスに配達されたことが認められる。
しかしながら、原告の意思に反して原告宛ての荷物を本件宅配ボックスに配達したことによる責任は当該配達をした者が負うべきものである。
また、仮に被告組合に原告宛ての荷物が本件宅配ボックスに配達されないようにするために何らかの対応をする義務が存在するとしても、被告組合は原告の住戸宛ての荷物を本件宅配ボックスに入れることを禁止する旨の張り紙を一見してわかるように本件宅配ボックスに掲示しているところ、これにより通常の宅配者であれば原告の住戸宛ての荷物を本件宅配ボックスに配達することはしないというべきであるから、被告組合は原告宛ての荷物が本件宅配ボックスに配達されないようにするための十分な措置を採っているというべきであり、上記のとおり被告組合の掲示に反して原告宛の荷物が複数回にわたり本件宅配ボックスに配達された事実が存在することを踏まえても、これ以上に被告組合が原告に対して何らかの義務を負うということはできない

2 原告は、被告らが本件宅配ボックス内の宅配物に記載された個人情報を盗視したことが原告に対する不法行為に当たると主張する。しかしながら、原告が主張する上記事実を認めるに足りる証拠はない。
他方、被告組合は、本件宅配ボックス内に長期滞留する荷物について管理人が宛先を確認することはあるという限度で原告の主張を認め、証拠によれば当該事実は認められるところ、証拠によれば、本件宅配ボックスの使用細則においては、保管期間が保管開始の時から72時間とされ(5条)、保管期間が経過したにもかかわらず保管品の引き取りがない場合には、被告組合は宅配ボックスを開扉の上、保管品を保管又は廃棄する等の措置を採ることができるとされていること(6条)が認められる。
本件宅配ボックス内に荷物が長期滞留することは、他の住人のための本件宅配ボックスの使用を妨げる行為であり、それを解消する目的で管理人が滞留している荷物の宛先を確認する必要性は高いと認められることに加え、管理人のそのような行為は本件宅配ボックスの使用細則で許容されていると解されること、管理人は荷物の宛先という上記目的達成のための必要最小限度の個人情報を確認しているに過ぎないことに照らせば、管理人が本件宅配ボックス内に長期滞留する荷物について宛先を確認したことをもって被告らの原告に対する不法行為を構成するということはできない。

区分所有建物においては、本当に様々な問題が生じます。

本件のような一見些細な問題のように見えても訴訟まで発展することは決して珍しくありません。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。