管理組合運営24 臨時総会における監事の選任案承認事案を否決した決議が委任状による議決権行使に関する手続に重大な瑕疵があるとして無効とされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、臨時総会における監事の選任案承認事案を否決した決議が委任状による議決権行使に関する手続に重大な瑕疵があるとして無効とされた事案(東京地判令和元年10月8日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、被告が開催した平成27年12月6日の臨時総会において監事である原告の選任案承認に係る議案が否決されたところ、原告が、この決議は信義則に反するなどと主張して、同決議の無効及び原告が引き続き被告の監事の地位にあることの確認を求めるとともに、被告の役員経費等支給規程所定の役員報酬として1万6000円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 原告と被告との間において、被告における平成27年12月6日開催の第29期第2回臨時総会の第7号議案に関する決議が無効であることを確認する。

2 被告は、原告に対し、1万3000円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 被告においては、本件臨時総会に先立って、「臨時総会招集のお知らせ」と題する招集通知を発し、同通知には、先立つ通常総会において役員選任に係る議案が取り下げられたため、立候補のあった5名の理事候補者と2名の監事候補者の選任議案(本件議案が含まれる。)について審議を求める旨が記載されている。
また、被告においては、総会に先立って、組合員に対して「≪出席通知・委任状・議決権行使書届≫」との表題の書式(以下「本件書式」という。)を交付しており、組合員は、本件書式に所定の事項を記入して提出することにより、出席通知、委任状及び議決権行使書のいずれかとして利用することができる。
本件書式の出席通知欄には「なお、万一当日欠席となる場合は、議長に一任します。」との記載があり、委任状欄には「※氏名のご指定がない場合は、議長に一任したものと見なします。」との記載があり、議決権行使書欄には「賛成、反対の何れにも○印がない場合は、議案に賛成したものとみなします。」との記載がある。
他方、本件規約55条は総会提出議案について理事会が決議することを定めており、本件規約54条1項は理事会の議事を出席理事の過半数で決する旨が規定されている。

2 これらの本件規約の定め並びに本件臨時総会の招集通知の内容及び本件書式の体裁からすると、総会において審議される議案は、理事会が総会への提案に賛成したものとして組合員にあらかじめ示されていることから、特段の意思表示をしない組合員は当該議案に賛成したものとみなすことができるのであり、本件書式の議決権行使欄の記載はこのことを表したものということができる。
これに対して、委任状欄の記載は上記のとおりであり、提出議案に賛成したものとみなすと記載されているわけではないものの、特定の者を代理人としなかった場合に理事長に委任されたものとみなされた結果、特段の事情のない限り、理事会が総会に提案した議案について反対することは想定されていないということができる。

3 そうすると、委任状によって議決権行使を理事長に一任したとみなされた全ての議決権について、他の役員選任議案ではいずれも賛成票に投じた上、本件議案についてのみ反対票に投じたという取扱いは、委任者たる組合員の委任の趣旨に沿うものといえるかどうか甚だ疑わしいばかりでなく、本件規約の定めに照らして著しく恣意的であるというほかない。
したがって、このような恣意的な取扱いの結果である本件議決は、その手続において重大な瑕疵がある無効なものというべきである。

4 本件臨時総会の開催前の10月に監事の任期満了を迎えていた原告は、本件規約37条3項により、後任の役員が就任するまでの間引き続きその職務を行うべき地位にあったところ、本件議決は無効であるから、本件臨時総会後も原告の監事の地位は継続しているということができる。
しかしながら、平成28年12月3日開催の臨時総会において、翌期(第30期)の役員として理事3名及び監事1名の選任が決議されていることが認められることから、上記の本件規約の定めにより、その地位を失っているというべきである。

総会運営における非常に実務的な問題について述べられています。

総会運営については、管理会社や弁護士等の助言の下、適切に行うように心がけましょう。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。