管理組合運営25 管理組合に対する給水増圧ポンプの設置工事の請求が棄却された理由とは?(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理組合に対する給水増圧ポンプの設置工事の請求が棄却された理由とは?(東京地判令和元年8月27日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、区分所有者である原告が被告管理組合に対し、本件マンションに係る別紙系統図のAの部分に、本件マンション510号室への給水圧力が0.2メガパスカルに至るまで給水増圧ポンプを設置する工事をせよ。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件居室においては給水圧力の低下に伴う吐水量の不足が生じており、その原因は、本件マンションにおいて高架水槽方式という給水方式が採られていることや共用部分である縦管の老朽化等によるものであると認められる。
そうすると、本件居室における給水圧力を上げるためには、給水方式の変更や縦管の交換等を行うことが考えられるが、これらは正に「共用部分の管理に関する事項」(区分所有法18条1項本文)に当たるから、被告の総会において決議される事項である。
原告は、これらに代わるものとして本件工事の実施を求めるが、本件工事を実施することによる利益は原告ないし本件居室の占有者のみが享受することを考慮すると、本件工事の実施が「共用部分の管理」に当たるといえるかは疑問があるし、仮に「共用部分の管理」に当たるのであれば、やはり被告の総会において決議される事項であって、原告が被告に対して直接請求できるものではない
この点、原告は、本件工事の実施が、同法18条1項ただし書の「保存行為」に当たるから、原告が単独ですることができると主張するが、上記「保存行為」とは、共用部分の滅失、毀損を防止して現状の維持を図る比較的軽度な行為をいい、共用部分の点検、清掃や蛍光灯の交換等がこれに当たると解されるから、本件工事の実施が上記「保存行為」に当たるとはいい難いし、管理規約には保存行為も含めて被告がその責任と負担で行うとの定めがある(32条)ことが認められるから、原告の主張は理由がない。
また、原告は、管理規約22条5項に基づき、被告に対して本件工事の実施を求めるが、同項にいう「漏水等の事故」とは、漏水や漏電のようにそれ自体において重大な被害が生じるほか、これを放置すると更に深刻な被害が生じかねない事象をいうものと解されるから、本件居室に生じた給水圧力の低下は、それによる支障の程度に照らすと、上記「漏水等の事故」に当たるとはおよそいい難い

「共用部分の管理」や「保存行為」の定義・意味を理解するのは参考になる事案です。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。