管理会社等との紛争21 区分所有者がマンション内通路の補修及び植栽の剪定をしたことが事務管理にあたらないとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、区分所有者がマンション内通路の補修及び植栽の剪定をしたことが事務管理にあたらないとされた事案(東京地判平成31年3月8日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンションの区分所有者である控訴人が、マンション管理組合である被控訴人に対し、共用部分であるマンション内通路の補修及び植栽の剪定をしたとして、事務管理に基づく費用償還請求又は管理組合規約に基づく費用請求として、上記補修及び剪定に要した費用相当額4万5396円の支払を求める事案である。

原審は、控訴人は、通路の補修及び植栽の剪定を行うに当たり、管理組合規約の定めに従った手続を履践していないとして、控訴人の請求を棄却したところ、控訴人がこれを不服として控訴した。

【裁判所の判断】

請求棄却(控訴棄却)

【判例のポイント】

1 控訴人は、被控訴人が管理すべき共用部分である本件マンションの通路及び植栽について本件補修等を行ったことをもって、被控訴人の事務を管理したものとして、当該費用の償還を請求するところ、上記事務の管理が被控訴人の意思に反することが明らかであるときは、民法上の事務管理は成立しないものと解される。

2 新規約によると、本件マンションの通常の管理に要する経費(第58条)については、区分所有者である組合員からの管理費及び修繕積立金や駐車場等の使用料を主たる収入とし(第56条)、これを適切に配分して会計年度ごとに支出され、内容については理事長が収支決算を行って監事の監査を終了した上、定期総会の決議を受けるものとされている(第57条、第61条)。
そして、通常の管理に要する経費としては、共用設備の保守維持に要する費用が掲げられており(第58条2号)、本件補修等のための経費もこのような通常の管理に要する経費に該当するものと認められる。
旧規約(甲45)においても、本件マンションの通常の管理に要する経費として共用設備の保守維持に関する費用が明示的には掲げられていないという差異はあるものの、区分所有者である組合員からの管理費及び修繕積立金等を主たる収入とし、共用部分の維持修繕については理事会の定めるところによるとされ、定時総会において収支決算の決議を受けると定められていることからすれば、本件マンションの通常の管理に要する経費やその支出について実質的に同様の規定が置かれていると認められる。
このような本件マンションの管理の在り方に照らすと、被控訴人は、管理組合の限られた予算の中で真に必要性のある作業を行うため、被控訴人において、作業を行う順序や頻度、内容等を検討した上で、適当な時期に一定の費用を支出して作業を行うという手続を踏む必要があることは当然であり、そもそも管理組合において、被控訴人がかかる手続を踏まずに経費を要する本件補修等を独自に行うことを容認するとは考え難い

3 また、被控訴人が管理行為として本件マンションの補修等を行う場合には、補修等に係る技術を有する専門業者に依頼するのが通常であり、偶然にも区分所有者の中にそのような専門業者がいる場合であって、他の区分所有者も当該業者に依頼することに異論がないような特段の事情でもない限り、本件マンションの区分所有者個人に対して費用を要する工事を依頼することも想定し難いし、本件においてそのような特段の事情があることを示す証拠は存在しない。
また、控訴人は、平成21年8月にも、事前に被控訴人に対する通知をせずに本件マンションの植栽の剪定を行い、控訴人が警察を呼ぶ事態に至っているほか、控訴人と被控訴人の理事会との間においては、本件補修等の以前から、管理費の支払等をめぐって軋轢が生じていたことからすると、現実に被控訴人が控訴人に何らかの事務を依頼したり、控訴人からの何らかの協力の申し出を容認したりするとはおよそ考えられないというほかない。
以上によると、控訴人が本件補修等を行うことが被控訴人の意思に反することは明らかであったというべきである。

裁判所がどのような事情を考慮して、管理組合の意思に反すると認定したかについて確認しておきましょう。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。