漏水事故14 漏水事故について管理会社らの工事の遅延・瑕疵を理由とする損害賠償請求が棄却された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、漏水事故について管理会社らの工事の遅延・瑕疵を理由とする損害賠償請求が棄却された事案(東京地判平成30年4月13日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本件マンション管理組合である原告管理組合及び本件スタジオを賃借している原告アイサイトが、原告管理組合との間で本件マンションの管理委託契約を締結していた被告ホームライフ及び原告アイサイトから本件スタジオの工事を請け負った被告トライに対し、被告トライが原告管理組合から別途請け負った本件マンションの1階メーター点検口に関する工事の遅延及び瑕疵により、本件マンション内に雨水等が漏水する事故が発生し、ゴキブリ、チャタテムシ等が多数発生し、本件スタジオの床・壁が腐敗したと主張して、
①原告アイサイトが、被告らに対し、不法行為による損害の賠償として、連帯して、本件スタジオの修繕費用等5062万9227円+遅延損害金の支払、
②原告管理組合が、被告らに対し、原告アイサイトに生じた損害を原告管理組合が立て替えて支払ったことによる求償金として、連帯して、1038万3122円+遅延損害金の支払、
③原告管理組合が、被告ホームライフに対し、本件管理委託契約の建物設備外観目視点検業務の不履行に基づく損害賠償として88万4940円+遅延損害金の支払を、それぞれ求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件漏水事故は、本件点検口からの漏水、本件点検口の下の地中の本件マンションの外壁の貫通部分からの漏水及び洗面立ち上がり配管及び既存配管のジョイント部分の漏水及び隔壁の不存在が複合的に関与して発生したものであり、本件点検口の下の地中の本件マンションの外壁の貫通部分には、取れて抜けるのではないかと思われるほどの隙間が存在し、配管(躯体貫通部・CD管)からの流入により雨天時には常に漏水していたことが窺えるものの、本件点検口の下の地中の本件マンションの外壁の貫通部分の漏水又は③洗面立ち上がり配管及び既存配管のジョイント部分の漏水だけが本件漏水事故の原因ではないというべきである。

2 外壁・外観の目視点検をする義務とは、文字通り、外壁・外観の目視点検義務であって、建物設備外観に異常がないかを点検する義務であって、建物設備外観に異常がない限り、本件点検口の扉を開けて調べることは含まれていないというべきであり、ましてやパイプスペースの隔壁の有無を目視点検する義務はない
そして、本件点検口の扉の脱落が本件点検口の枠、扉吊し元の腐食によるものであることに照らすと、本件点検口に関する外壁・外観目視点検義務を履行しても、同腐食を見つけるのは困難であるし、扉が本件点検口の枠から取れていたとしても枠内に入っていた状態であれば、雨水が吹き込むとしてもその量は本件点検口が開いていた時とは比較にならないほど少ないものと思われる。
また、原告らが主張する本件漏水事故により生じた損害は、被告トライによる本件改装工事ないしは本件点検口工事の瑕疵による損害であって、それ以前に本件点検口の既存の扉が脱落し得る状態になっていたことは本件の損害と因果関係がない。

上記判例のポイント1のとおり、漏水事故の原因は、本件工事実施以前から存在するいくつかの要因が複合的に関与して発生したものであると認定された結果、管理会社等の責任が否定されました。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。