管理組合運営39 区分所有者が賃料値上げ反対等を内容とするセミナーを開催するためマンションの会議室の使用及び同セミナー開催通知の掲示を申し込んだものの、理事長及び副理事長が不許可とした行為が違法とはいえないとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、区分所有者が賃料値上げ反対等を内容とするセミナーを開催するためマンションの会議室の使用及び同セミナー開催通知の掲示を申し込んだものの、理事長及び副理事長が不許可とした行為が違法とはいえないとされた事案(東京地判平成29年1月23日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本件マンションの区分所有者兼管理組合員である控訴人が、本件マンション敷地の賃料値上げ反対等を内容とするセミナーを本件マンションにおいて開催するため、本件管理組合に対して、本件マンションの会議室の使用及び本件セミナー開催通知の掲示を申し込んだところ、本件管理組合の理事長及び副理事長である被控訴人らが当該申込みを不許可とした行為により、控訴人は、本件マンションの区分所有者らに対して、ポスティングで本件セミナーの開催を通知し、本件会議室外の廊下で本件セミナーを開催せざるを得ず、控訴人の、区分所有者の共同の利益に関する事柄を本件区分所有者らに対して伝える権利及び本件会議室を使用して充実した本件セミナーを行う権利を侵害され、精神的苦痛を被ったと主張し、被控訴人らに対し、共同不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料10万円+遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。

被控訴人らは、本件行為は正当な行為であるから共同不法行為は成立しないとして、控訴人の請求を争った。

原判決は、被控訴人らは区分所有法や本件マンションの管理規約によって定められた業務を遂行すべき者であり、本件行為は法的には本件管理組合の行為であるから、被控訴人らに共同不法行為は成立しないとして、控訴人の請求を棄却したため、控訴人は、原判決の全部を不服として本件控訴を提起した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 被控訴人らは、以下のような理由から本件申込みを不許可とし、その旨を3月24日の定例理事会に報告して了承されたことが認められる。
ア 本件セミナーの講演者とされているAの営業活動が行われるおそれがあったこと
イ 本件チラシ1には「管理組合セミナー」と大きな字で記載され、本件管理組合が主催していると誤解されると困ること
ウ 本件チラシ1には、本件セミナーの内容がR裁判、地代、管理会社等についてと記載されており、理事会の検討が必要な事項であること

2 本件マンションの敷地をめぐって本件管理組合とRとの間で裁判が係属し、本件管理組合は、Rから、本件区分所有者らに対する賃料増額の求めについて介入をやめるよう指摘を受けた経緯があることから、本件申込みが許可され、本件チラシ1が掲示板に掲示されるとともに本件セミナーが開催された場合には、本件管理組合が本件セミナーを主催したと誤解され、本件マンションの管理運営に支障が出ることも予想された
また、本件セミナーにおいてAが営業活動を行い、本件区分所有者らの和を乱し、本件マンションの管理運営に支障が出ることも予想された
したがって、被控訴人らが、本件申込みを不許可としたことは、何ら不合理なものとはいえず、本件管理組合の理事長又は副理事長としての義務に違反したとはいえない。

まず、本件で問題とすべきは、理事長、副理事長個人の行為ではなく、管理組合の行為です。

その上で、管理組合が不許可としたことの合理性が認められています。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。