名誉毀損14 区分所有者兼防火防災管理者である原告に対する名誉毀損行為により慰謝料150万円の支払が命じられた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、区分所有者兼防火防災管理者である原告に対する名誉毀損行為により慰謝料150万円の支払が命じられた事案(東京地判平成28年11月9日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンションの区分所有者であり、同マンションの防火防災管理者である原告が、耐震及び設備改修に関する集会を開催した際に参考資料として参加者に配布した同マンションの建替計画案をきっかけとして、同マンションの居住者の1人である被告が、同マンションの複数名の居住者や原告の勤務先会社、同マンション管理組合が相談していたマンション管理士・行政書士に対して送付した手紙により、原告の社会的評価を著しく低下させ、その名誉権を侵害したと主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償+遅延損害金の支払を求めるとともに、人格権(名誉権)に基づく将来の名誉毀損行為の差止めを求め、また、民法723条に基づく名誉回復措置として謝罪文の交付を求めている事案である。

【裁判所の判断】

1 被告は、原告に対し、150万円+遅延損害金を支払え。

 被告は、原告の名誉を毀損する内容を含む文書、図画又は電子メールの配布、送付又は送信をしてはならない。

【判例のポイント】

1 被告は、本件手紙の送付行為は、本件マンションの住民の負担軽減という公益目的に出たものであると主張している。
しかし、本件手紙は、全体の論調としても、本件マンションの区分所有者の中で被告の意見への賛同者を募るための社会的に容認された行為としての相当性を明らかに超えた、邪推に基づく原告に対する誹謗中傷となっていること、管理組合の総会等における正常な議論ではなく、実力で原告の行動を阻止しようとすべく、F管理士や警察署に対処を相談・要請するにとどまらず、真相究明という名の下に、原告の勤務先や国会議員まで巻き込んで原告に対して圧力をかけようとする節が窺われるなど、常軌を逸したものとなっており、原告に対する過度の敵対意識も表れていることに照らすと、本件手紙の送付行為が、専ら公益を図る目的に出たものであると評価することはできない。
よって、本件手紙の送付行為につき、違法性の阻却を認めることはできない。

2 これによる損害額は、①従前の原告と被告との関係、②被告が本件手紙の送付行為に及んだ経緯や動機、③本件手紙の表現ぶりやその真実性の検証の程度、④本件手紙の送付行為の範囲、⑤本件手紙の送付行為の頻度ないし時期、⑥原告が被った社会生活上の不利益の程度、⑦その後の被告の態度等を総合勘案して決すべきである。
・・・以上の諸事情を総合考慮すると、本件における原告の精神的苦痛を慰謝するには、本件手紙の送付行為がいわゆる非マスメディア型の名誉毀損行為であって実際の伝播の程度がさほど高くないことや、被告が本件手紙の送付行為に及んだ当初の目的を考慮してもなお、やや高額の慰謝料が相当というべきであり、本件については150万円をもって被告の違法行為と相当因果関係を有するものと認めるのが相当である。

3  民法723条が、損害賠償のほかに回復処分を規定した趣旨は、その処分により、加害者に対して制裁を加えたり、また、加害者に謝罪等をさせることによって被害者に主観的な満足を与えたりするためではなく、金銭による損害賠償のみでは填補され得ない、毀損された被害者の人格的価値に対する社会的、客観的な評価自体を回復することを可能ならしめるためである。
そうすると、同条に基づき、被告に対して原告への謝罪文の交付を請求することは、その低下した社会的評価を対外的に回復する処分にはあたらないので、認めることができない(原告が関係者に対して本件の顛末を説明するに際しては、本判決の写しを用いてこれを説明することで足りる。)。

同種の名誉毀損事案と比較しますと、かなり高額な慰謝料が認められています。

区分所有建物における紛争として名誉毀損事案は決して珍しくないので、過去の裁判例をチェックするととても参考になると思います。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。