管理会社等との紛争44 管理会社の誤った説明により室内の水道管から給水されないことに対して専有部分の水道管交換という不要な修繕工事をしたことを理由とする損害賠償請求が棄却された理由とは?(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理会社の誤った説明により室内の水道管から給水されないことに対して専有部分の水道管交換という不要な修繕工事をしたことを理由とする損害賠償請求が棄却された理由とは?(東京地裁令和4年3月3日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンションの区分所有者である控訴人が、同マンションの管理会社である被控訴人の誤った説明により、室内の水道管から給水されないことに対して専有部分の水道管交換という不要な修繕工事をしたことによって不要な費用を負担させられたとして、被控訴人に対し、不法行為又は上記マンション管理組合と被控訴人との間の管理委託契約上の善管注意義務違反に基づき、損害賠償として10万円の支払を求めた事案である。

原審は、控訴人の請求を棄却したため、控訴人がこれを不服として控訴した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 被控訴人は、控訴人に対し、被控訴人の担当者及び提携業者による本件部屋の現地調査によっては給水されない原因を特定できず、詳細な調査を行っていないため原因を断定できない旨を伝え、また、控訴人が依頼する業者が工事を行う場合も、事前に現地確認をしてもらう必要があることや、工事の結果、共用部分に問題がある場合もあり得ることを伝えている
これらの事情に照らせば、控訴人は、被控訴人から専有部分の給水管の工事を行った場合にも改善しない可能性があることを告知されながら、自らの判断でクラシアンに対して給水管の工事を依頼したものであって、その費用は控訴人自らが負担すべきである
結果として共用部分の水道管に原因があったものといえるが、控訴人が被控訴人に水圧の低下を連絡した時点において、問題が指摘されていたのは本件部屋の台所部分にすぎず、被控訴人の担当者が現地確認を行った際にも本件部屋のトイレの水圧に不具合は見当たらなかったことからすると、被控訴人として共用部分に不具合があることを積極的に疑うべき事情があったとはいえず、被控訴人が提携業者に対して再調査を提案すべき注意義務を負っていたとは認められない
さらに、被控訴人が控訴人に対して上記のとおり原因が不明であることや本件部屋の給水管の交換工事をしても解消しない可能性があることを伝達していることなどからすれば、本件マンションの管理義務上の過失があったとも認められない
他に被控訴人が控訴人に対する関係で善管注意義務に違反したことを認めるに足りる証拠はない。

善管注意義務違反は、結果責任ではありませんので、しかるべき手続に基づき判断し、合理的な対応をした場合には義務違反とはなりません。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。