Daily Archives: 2019年6月3日

不当労働行為220 団交における抽象的な説明と誠実交渉義務(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、非常勤講師の契約更新を議題とする3回の団交における大学の対応及びその後の団交申入れに応じなかったことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

学校法人明治大学(非常勤講師・更新拒絶)事件(東京都労委平成30年12月18日・労判1196号92頁)

【事案の概要】

本件は、非常勤講師の契約更新を議題とする3回の団交における大学の対応及びその後の団交申入れに応じなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 大学は、第1回及び第2回の団体交渉では、Bの雇止め理由について、A学部の判断を支持するという結論を述べるだけで、教育機関として妥当と判断した、一連の総合的な判断を支持した等の抽象的な説明を繰り返し、A学部が、本件事務折衝の経過を踏まえた上で、Bとの信頼関係を回復できず、同人を雇止めにすると判断するに至った具体的な根拠等について、何ら回答していない。また、大学は、第3回の団体交渉において、Bの雇止めの理由と謝罪文の評価について回答したものの、雇止め決定プロセスや29年度のBの雇用に係る組合の質問には明確な回答をしておらず、信頼関係の回復についての議論になることもなかった。
本件事務折衝において、大学が、今後信頼関係の措置が執られるのであれば、29年度の雇用を検討する余地がある旨説明していたことからすれば、Bの29年度の雇用に向けた適時の交渉が必要であったにもかかわらず、本件代替交渉における大学の上記対応は、組合とA学部が事務折衝を重ねて詰めてきた議論を後戻りさせるものといえ、事務折衝の経緯を踏まえた上で交渉が継続できるような対応であったとは到底いうことができない。
大学は、A学部の教授を出席させるか、又は、A学部から十分な説明を受けた理事を出席させ、事務折衝の経緯を踏まえた上での交渉に努めるべきであったといえる
したがって、本件団体交渉における大学の対応は、不誠実な団体交渉であったといわざるを得ない。

2 ・・・これは、要求事項について交渉の余地はなく、団体交渉が行き詰まっていることを理由に、組合が従前の要求事項を繰り返す限り、団体交渉に応じる必要がないとの意思を示したものと解釈するほかなく、団体交渉を拒否したものといえる
そして、前記で判断したとおり、本件団体交渉において、大学は誠実交渉義務を尽くしておらず、団体交渉が行き詰まりの状態に達していたとは認められないから、大学が組合の28年9月19日付及び11月11日付団体交渉申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。

上記命令のポイント1のようなケースはよく目にします。

一応説明はしているけれど、抽象的な説明にとどまっており、具体的な根拠資料等を提示しない場合には、不誠実団交と判断される可能性がありますので注意が必要です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。