賃金189 求人票の記載と入社面接時の説明が異なる事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、試用期間中における求人票との労働条件相違と差額賃金請求に関する裁判例を見てみましょう。

カキウチ商事事件(神戸地裁令和元年12月18日・労判1218号5頁)

【事案の概要】

本件は、Y社(運送事業者)の従業員(トラック運転手)であったXらが、Y社に対し、労働契約に基づき、未払賃金、未払割増賃金+遅延損害金並びに付加金+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 確かにXらがY社入社前に見たY社のホームページには大型ドライバーで月給36万円いじょうとの条件が記載されていたが、Y社が1月にハローワークに申し込んだ求人票には「基本給13万円~15万円、基本給+精務給+各種手当で35万円~」と記載されており、入社前の面接の際、A及びBが、基本給のみで35万円との説明をすることはにわかには考え難いこと、Xらは、Y社入社前、Y社と同業の会社に勤務し、運送会社の賃金体系を把握しており、X1も、基本給が月額35万円ではなく、手取りで月額35万円と認識していた旨を供述し、時間外手当等を含めないと月額35万円に届かないことを認識していたことからすると、Xらが基本給月額25万円であると認識していたものと認めることはできない

2 Xらは、8月7日の個別面談の際、Y社側から本件契約書1・2に署名するよう求められたので、十分に確認しないまま署名した旨供述するが、Xら及びCらは労働条件が採用面接時の説明と相違するとしてY社に抗議して本件説明会が開催され、そこでもY社側と労働条件についてやりとりをしているのであるから、Xらが労働条件に無関心なまま本件契約書1・2に署名したとは考え難く、Xらの上記供述はいずれも採用できない。

裁判所がいかに事実認定をするのかがよくわかりますね。

求人票の記載と入社面接時の説明が異なる事案は見かけますが、事実認定はケースにより異なりますので注意が必要です。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。