労働者性30(思いやり整骨院事件)

おはようございます。

今日は、整骨院院長の雇用契約成立に基づく未払賃金等支払請求に関する事案を見てみましょう。

思いやり整骨院事件(大阪地裁令和2年1月17日・労判ジャーナル97号18頁)

【事案の概要】

本件は、柔道整復師であるY社の元院長Xが、「思いやりグループ」と称する本件整骨院を含む複数の事業所若しくは法人からなる集団の中で「総括」等と呼称される地位にある者に対し、主位的に、Xと総括の間に雇用契約が締結され、Xが総括経営に係る整骨院に勤務して労務を提供した旨主張し、未払賃金・未払時間外割増賃金・付加金等の支払並びに雇用保険資格取得届を怠ったという債務不履行に基づく損害賠償請求をした事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 総括は、Xから、高頻度かつ定期的に、本件整骨院の収支状況に関する詳細な報告書等の提出を受けるのみならず、さらに口頭での報告を受けていたことが認められ、この点は、総括のXに対する本件整骨院の業務に関しての指揮監督の存在を強くうかがわせるものであり、そして、Xが本件整骨院での業務に関与することによって得た収入は、売上高その他業績による変動がみられない「基本給」及び「交通費」名目での固定的な性質のもので、この点は、Xが労務提供の対価としての賃金を得ていたとの評価になじみやすいものといえ、また、Xが本件整骨院での業務に関与する契機となった求人情報は「正社員」若しくは「アルバイト・パート」を募集するもので、X自身「アルバイト勤務希望」と記載するなどした履歴書を作成したことが認められるところ、これはX及び統括がともに雇用契約の締結を念頭に置いていたことを推知させる事情にほかならず、また、Xが本件整骨院の院長を辞するに際しての「退職届」の作成は、他者に雇用されているとの意思を有していたことをうかがわせるものであるから、Xと統括の間には、業務委託契約ではなく、雇用契約が締結されたと認定することができる

2 雇用保険の手続不履行による債務不履行責任の有無等について、Xは、本件整骨院の院長を務めている間、統括に対し、雇用保険資格取得届の手続をするよう求めた形跡は見当たらず、そのような取扱いを受け容れていたとみる余地があることに照らせば、統括に対して慰謝料の支払を命ずるまでの精神的損害が発生したと認めるには足りないから、債務不履行に基づく損害賠償には理由がない。

マッサージ店等は労働者性が争われやすい分野です。

業務委託契約を締結する場合には、その実態が雇用契約に近づかないように細心の注意をしましょう。