有期労働契約100 担当業務の移管を理由とする雇止めの有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、担当業務の移管によりなされた雇止めが有効と判断された裁判例を見てみましょう。

バンダイ事件(東京地裁令和2年3月6日・労経速2423号10頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で有期労働契約を締結していたXが、Y社に対し、XY社間の上記有期労働契約は労働契約法19条1号ないし2号に該当し、Y社がXの更新申込みを拒絶することは客観的合理的理由を欠き社会通念上相当であると認められず、これを承諾したものとみなされるとして、労働契約に基づき、①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び②平成30年4月分以降本判決確定の日までの賃金として毎翌月25日限り22万1644円(平成30年2月ないし4月支給の平均賃金)の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件雇用契約は約11年10か月の間合計14回にわたり更新され、その間、Xは、概ね週5日・1日7時間30分勤務を継続してきた。そうすると、一般的に見れば、契約期間満了時において、労働者において有期労働契約が更新されるものと期待することはあり得ることであり、そのように期待することについておよそ理由がないとはいえない。
もっとも、その期待が労働契約法19条2号の適用上「期待することについて合理的な理由あるものであると認められる」か否かを判断するには、上記に見た有期労働契約の更新の回数や雇用の通算期間、雇用期間管理の状況のほか、当該雇用の臨時性・常用性、それまでの契約更新の具体的経緯、雇用継続の期待を持たせる使用者の言動などの諸事情を客観的に見た上で、当該有期労働契約の契約期間満了時においてどのような内容の期待を持つのが通常であるのかを具体的に認定・判断する必要がある。

2 本件においてXが本件雇用契約の期間満了時に合理的に有すべき契約更新に対する期待は、上記のような事情を踏まえたものというべく、その具体的内容は、X雇用の臨時性やその後の環境変化によってXの当初担当業務が減少しX雇用の臨時性が前景化する中、その労働条件に内容や分量が見合うような担当業務をY社内に確保することができれば本件雇用契約は更新される、という内容のものであったとみることができる。結局、本件において、Xが本件雇用契約の期間満了時に合理的に有すべき契約更新に対する期待は、以上のような具体的内容を有するものとして、労働契約法19条2号の適用上、本件雇用契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認めることができる

3 当初サンプル発送業務は当時の海外販売会社とY社の事業部がグローバル戦略室に在籍していたXを介して行うものであったところ、前記のとおり、Y社商品の海外流通が進展してきたために、グローバル戦略室のXを介するよりも、海外販売会社とY社の事業部が直接やり取りした方が合理的かつ円滑であるということになり、海外販売会社・Y社事業部間の直接のやり取りが増加し、Xの担当業務が減少していくという状況下においてY社が一気通貫体制を構築する中で、Xが担当していたサンプル発送業務を平成30年4月から各事業部に完全移管した結果、Xの担当業務は、なくなったものである。前記のとおり、サンプル発送業務に要する時間が、上記完全移管によって1か月換算で平均約53時間から約8時間まで減少していることから見ても、上記完全移管について合理的必要性があったということができる。

4 Y社は、平成30年4月1日以降、Xの主な担当業務がなくなることを踏まえ、Xの雇用維持のための有意な措置を複数採ったということができる。そうであるにもかかわらず、Xは、Y社から提示された措置について真摯に向き合わなかったのであって、そのような状況下でY社に更なる措置を講ずべきであったとまではいえないから、Y社は、雇止め回避の努力を尽くしたとみることができる

5 Y社は、Xにその担当業務減少の状況を説明するなどしてXの意向を確認するなどしているし、前記で検討したとおり、Xの雇用維持のため複数の措置に取り組んできたのであり、前記のとおり、平成29年11月30日にも改めて状況を説明した上でXの雇用維持のための措置を複数提示してXに検討の機会を与えた経過が存する。これらからしても、Y社のXに対する本件雇止めの説明が不十分とみることはできず、本件雇止めの手続の相当性を肯認することができる

整理解雇類似の進め方により有効に雇止めを行うことができています。

ポイントをしっかり押さえることが肝要です。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。