Category Archives: 派遣労働

派遣労働28(ライフ・イズ・アート事件)

おはようございます。

今日は、労働者派遣法40条の6の労働契約申込みみなしが否定された裁判例を見てみましょう。

ライフ・イズ・アート事件(神戸地裁令和2年3月13日・労経速2416号9頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で業務請負契約を締結したA社の労働者としてY社の伊丹工場で製品の製造業務に従事していたXらが、Y社に対し、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律40条の6第1項5号、同項柱書に基づき、XらとY社との間に別紙1「労働契約一覧」記載の各労働契約が存在することの確認及び平成29年4月1日から本判決確定の日まで、毎月末日限り、別紙1「労働契約一覧」の各賃金欄記載の賃金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 請負の形式による契約により行う業務に自己の雇用する労働者を従事させる事業者について、労働者派遣か請負の区分は、当該事業者に業務遂行、労務管理及び事業運営において注文主からの独立性があるか、すなわち、①当該事業者が自ら業務の遂行に関する指示等を行っているか、②当該事業者が自ら労働時間等に関する指示その他の管理を行っているか、③当該事業者が、服務規律に関する指示等や労働者の配置の決定等を行っているか、④当該事業者が請負により請け負った業務を自らの業務として当該契約の注文主から独立して処理しているかにより区分するのが相当である。

2 本件では、①平成28年頃、Y社は機械の保守等を除いてA社の個々の従業員に業務遂行上の指示をしておらず、A社はY社から独立して業務遂行を行っていたこと、②A社が自ら労働時間等に関する指示その他の管理を行っていたこと、③A社は、その従業員に対し、服務規律に関する指示をなし、その配置を決めていたこと、④A社は、Y社から請負契約により請け負った業務を自らの業務としてY社から独立して処理していたこと、⑤A社では三六協定が更新されず同29年1月に失効していたが、これを労働者派遣契約に切り替えれば三六協定がなくてもY社から求められた増産に対応できると誤解し、Y社に派遣契約への切り替えを依頼したという経緯があり、Y社がA社との間の従前の業務請負の実態を糊塗するために労働者派遣契約を締結したものではないことが認められる。
以上の事情を考慮すると、遅くとも平成29年3月頃には偽装請負等の状態にあったとまではいうことはできないというべきである。

上記判例のポイント1の判断基準は、派遣と請負を区別する上で極めて重要なのでしっかり押さえておきましょう。

派遣労働27(エヌ・ティ・ティ マーケティンググアクト事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、派遣先との労働契約成立の是非に関する裁判例を見てみましょう。

エヌ・ティ・ティ マーケティングアクト事件(大阪地裁平成31年2月22日・労判ジャーナル87号69頁)

【事案の概要】

本件は、A社から派遣された派遣労働者の形態でY社において就労していたXが、Y社に対し、XとY社との間には労働契約が成立しており、Y社とA社との間の労働者派遣契約は偽装されたものである等と主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、損害賠償請求をした事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 XとA社との間に労働契約が成立していることに加え、A社において平成28年2月24日付けでXのY社への派遣に係る派遣元管理票が作成されていること、同年3月2日以降、Xの多言語通訳・翻訳センターでの就労に関し、Y社からA社に対して派遣料が支払われていること、以上の点を併せ鑑みると、同日から4月1日までの期間に係る派遣先通知書が同年5月9日付けで作成されていること等のXが主張する事実を踏まえても、Y社とA社との間に、同年3月2日までに労働者派遣契約が成立していたことが認められるというべきであり、XとY社との間に、Y社の面接を受けた日に労働契約が成立したとは認められない

2 Xは、Y社やA社の行為が、(1)職業安定法44条及び労働基準法6条に違反し、(2)職業安定法が原則禁止する職業紹介に該当し、(3)労働者派遣法26条6項に違反し、(4)不当労働行為に該当し、もって労働者は人格権を侵害された旨主張するが、(1)の点について、XとY社の就労関係は労働者派遣法に基づく労働者派遣に当たり、職業安定法44条が禁止する労働者供給事業には該当せず、労働基準法6条にも違反しないし、(2)の点について、少なくとも、A社がY社に対して求人の申込みをした事実を認めるに足りる的確な証拠はないから、Y社の行為が職業紹介に当たるとは認められず、(3)の点について、本件面接及びその後の一連のY社の行為は、労働者派遣法26条6項の趣旨に反するものの、不法行為法上の違法性は認められず、(4)の点について、不当労働行為に当たるとは認められないから、Y社やA社の行為について、X主張に係る不法行為が成立するとは認められない。

この類型の訴訟は、いつもチャレンジングなものです。

派遣労働26(バックスグループ事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、派遣先における面談後の不採用に対する損害賠償等請求に関する裁判例を見てみましょう。

バックスグループ事件(東京地裁平成29年6月7日・労判ジャーナル71号44頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用契約の締結を申し込んだ派遣労働者Xが、Y社に対し、Y社がXと雇用契約を締結する前に派遣労働者の就労予定先であるA社の担当者と派遣労働者を面接させたうえ、A社の意向を理由としてXを採用しなかった旨主張し、かかる経緯に照らせば、A社とY社は実質的には労働者派遣契約を結んでおり、Y社が派遣労働者に本件面接を行わせ、本件面接の結果派遣労働者を不採用としたことは、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(以下、告示37号)に違反し、Xに対する不法行為に当たるなどと主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料95万円の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、不法行為の根拠として告示37号違反を主張するところ、告示37号の目的は、労働者派遣法の施行に伴い、労働者派遣法に該当するか否かの判断を的確に行う必要があることに鑑み、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分を明らかにすることであり、労働者派遣事業と請負との区分に関する基準であるから、事業者(使用者)に関する何らかの義務を定めるものではなく、本件においてXが指摘するY社の各行為について、告示37号違反による不法行為を認めることはできない

2 本件面接について、労働者派遣法が禁ずる事前面接に当たるとのXの主張は、派遣先による特定行為を禁止する労働者派遣法第26条6項に違反する旨の主張とも解されるところ、同項は「派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない」と規定しており、いわゆる努力義務にとどまると解される上、その義務の主体は「労働者派遣の役務の提供を受けようとする者」であるから、仮に本件面接が同条項の特定行為に当たるとしても、それによって直ちにXの個々具体的な保護法益が侵害され、その責任をY社が負うとは認め難く、Y社が本件面接を行わせたこと自体がXに対する不法行為に当たると認めることはできず、さらに、契約締結自由の原則により、一般に企業には従業員の採用に当たって広範な裁量が認められるところ、同項の趣旨及び本件に顕れた一切の事情を考慮しても、Y社がXを採用しなかったこと自体が権利濫用に当たるとも認め難いから、Y社はXに対し不法行為責任を負わない。

特段異存はありません。

派遣労働25(セールスアウトソーシング事件)

おはようございます。

今日は、派遣労働者の派遣事業者に対する地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。

セールスアウトソーシング事件(東京地裁平成28年6月21日・労判ジャーナル56号50頁)

【事案の概要】

本件は、労働者派遣事業者であるY社との間で雇用契約を締結した派遣労働者Xが、その雇用契約に雇用期間の定めはなく、仮に雇用期間の定めがあったとしても、労働契約法19条により更新されて現在まで存続しており、未払賃金があるなどと主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認並びにその雇用契約に基づく未払賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

地位確認請求は棄却

未払賃金等支払請求は一部認容

【判例のポイント】

1 X・Y社間の雇用契約はいわゆる登録派遣であり、本件契約書上も、派遣社員として雇用する契約であること、派遣期間は平成26年9月30日までであること、契約更新は派遣先の判断基準によることがそれぞれ明記されているうえ、派遣労働者が利用した「ショットワークス」は、短期や単発のアルバイトや派遣社員向けの求人情報サイトであったことが認められること等から、派遣労働者が10月以降の雇用継続を期待していたとしても、その期待に合理的理由があるとは認めがたく、労働契約法19条所定の他の要件について検討するまでもなく、X・Y社間の雇用契約が更新されたものとみなすことはできないから、X・Y社間の雇用契約は9月30日をもって雇用期間満了により終了しており、現在まで存続しているとみる余地はないから、派遣労働者の地位確認請求には理由がない。

2 Xは9月後半も本件契約書所定の労務を提供する意向を示していたが、Y社はこれを拒否し、Xの労働債務の履行が不能になっていたと認められること等から、Y社は、派遣労働者に対し、9月16日から30日までの賃金を支払うべき義務を負い、同期間の賃金額については、9月1日から15日までの賃金と同額の7万2800円をもって相当である。

上記判例のポイント1については労働者側にはハードルが高い論点ですね。

一方、判例のポイント2については妥当な判断です。

派遣労働24(日産自動車ほか事件)

おはようございます。

今日は、派遣労働者と派遣先会社との直接の黙示の労働契約の成立が認められなかった裁判例を見てみましょう。

日産自動車ほか事件(東京地裁平成27年7月15日・労経速2261号9頁)

【事案の概要】

本件は、派遣元であるA社との間で期間の定めのある労働契約を締結し、その更新を重ねながら、派遣先であるY社において就労していたXが、①XとA社との間の労働契約及びA社・Y社間の労働者派遣契約は偽装された無効なものであり、XとY社との間には直接の労働契約が黙示のうちに成立しているとして、仮にそうでないとしても、労働者派遣法40条の4及び40条の5の各規定によってXとY社との間に労働契約が成立しているとして、Y社に対し、期間の定めのない労働契約上の地位を有することの確認並びに平成21年6月以降の賃金+遅延損害金の支払を求め、②A社・Y社の職業安定法違反及び労働者派遣法違反等の違法行為によって、XがY社に直接雇用されていれば本来支払を受けることのできたはずの賃金の支払を受けられず、A社から受け取っていた賃金との差額について損害を被り、また、精神的苦痛を被ったとして、A社・Y社に対し、連帯して、不法行為に基づく損害賠償金として、逸失利益、慰謝料及び弁護士費用+遅延損害金の支払を求め、③XとA社との間の労働契約及びA社・Y社間の労働者派遣契約が上記のとおり無効であることから、A社はXがY社に派遣され就労していた期間、Y社から支払を受けた派遣代金額から、A社がXに対して支払った賃金額を控除した額につき、法律上の原因なく利得を得ており、これに対応してXに損失が生じているとして、A社に対し、不当利得返還請求権に基づき上記差額+遅延損害金の支払を求めている事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xと被告らとの間の法律関係は労働者派遣法2条1号にいう労働者派遣にほかならず、職業安定法4条6項にいう労働者供給には該当しない。また、XとA社との契約関係は実体を伴ったものであって、これを無効とすべき特段の事情は見当たらないところである。そして、Xについて、A社との間の関係と並列的に、Y社との間の直接の雇用関係の成立を認めるべき根拠となるような事情は見当たらないというべきである。
かえって、Y社の休業期間中とはいえ、Xが、A社からY社以外の派遣先の紹介を受け、就労していた事実は、Y社との間に直接の雇用関係が存在することを前提とせず、A社からの労働者派遣という法律関係の枠内で就労を継続していたことを裏付けるものであって、XとY社との間で黙示の労働契約の成立を認める余地はないというべきである

2 Xは、Y社には派遣労働者を受け入れた派遣先として法令を遵守し、信義誠実に従って対応すべき条理上の義務があるところ、Y社が、その義務に反して法令違反を行い、東京労働局の指導も無視して、Xの就労を拒絶したことにより、Y社での就労の継続についての期待が侵害されており、長期間にわたって派遣労働者として不安定な地位を強いられ、庶務的業務を押しつけられたことによって精神的苦痛を被ったとも主張している。
しかし、Y社が労働者派遣法を遵守したとしても、直接・間接雇用を問わず、XがY社での就労を継続できる合理的な期待があるとまでいえないことは既に述べたところから明らかであるし、東京労働局の指導した雇用の安定の措置としては、Y社によるXの直接雇用のほか、グループ会社での雇用、A社による別の派遣先の就業が例示されていたところ、XはY社による直接雇用以外は受け入れない姿勢を示していたことからすれば、合意に至る可能性が低いとして交渉に応じなかったことを捉えて不法行為に当たるとするのは相当でないというべきである
また、長期間派遣労働者として不安定な地位にあったとする点も、XがY社から直接雇用された地位、その他派遣労働者以外の地位を法律上当然に期待できたわけではなく、A社との契約の更新、Y社での庶務的業務の担当を含めた就労の継続が、Xの意思に反した不相当な方法で行われていたことをうかがわせる証拠もないから、この点を捉えて不法行為であるということもできない

この争点については、原告側に厳しい判決が続いています。

派遣労働23(ティー・エム・イーほか事件)

おはようございます。

今日は、派遣社員のうつ病罹患と自殺に対する損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

ティー・エム・イーほか事件(東京高裁平成27年2月26日・労判1117号5頁)

【事案の概要】

本件は、Aが代表取締役を務めるY社に雇用され、Z社に派遣されて中部電力浜岡原子力発電所で空調設備の監理業務等に従事していたXが平成22年12月9日に自宅で自殺したことから、その妻子が、派遣先会社の出張所長であったBらに対し、Xのうつ病を認識し、又は認識することができたのに安全配慮義務等を怠り、Xを自殺に至らしめたとして、A及びBに対しては不法行為に基づき、派遣会社に対しては債務不履行及び会社法350条に基づき、派遣先会社に対しては債務不履行及び使用者責任に基づき、損害賠償請求をした事案である。

原審は、原告の請求を全て棄却した。

【裁判所の判断】

派遣会社及び派遣先会社は、連帯して合計150万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 当裁判所は、Xの自殺についてY社らに法律上の責任はないとする点は原判決と同じであるが、Y社及びZ社は、従業員であるXの体調不良を把握した以上、安全配慮義務の一環として、具体的に不良の原因や程度等を把握し、必要に応じて産業医の診察や指導等を受けさせるなどすべきであったのに、これを怠り、その限度でXに対して慰謝料の支払義務が生じたものと認められる

2 ・・・Xの体調が十分なものではないことを認識することができていたのであるから、Y社及びZ社は、それぞれ従業員に対する安全配慮義務の一環として、上記の機会や同年12月にXが自殺に至るまでの間に、XやXらの家族に対し、単に調子はどうかなどと抽象的に問うだけではなく、より具体的に、どこの病院に通院していて、どのような診断を受け、何か薬等を処方されて服用しているのか、その薬品名は何かなどを尋ねるなどして、不調の具体的な内容や程度等についてより詳細に把握し、必要があれば、Y社及びZ社の産業医等の診察を受けさせるなどした上で、X自身の体調管理が適切に行われるよう配慮し、指導すべき義務があったというべきである。
それにもかかわらず、Y社及びZ社は、いずれもXに対して通院先の病院や診断名や処方薬等について何も把握していないのであって、従業員であるXに対する安全配慮義務を尽くしていなかったものと認めることができる。

3 もっとも、Xは、Y社に入社した際の面接で健康面に問題はないと述べ、妻もこれに同調しただけでなく、入社後も平成20年から平成22年まで毎年7月に実施された健康診断において精神面の不調等を訴えてはいないし、Y社やZ社に対してうつ病に罹患しているとの診断書等を提出したこともないが、このことは、X自身が解雇されることなどを恐れてうつ病又はうつ状態に陥っていることを明かそうとしなかったものと考えられるのであって、仮にAやBにおいて、Xに対して直截に具体的な病名等を確認しようとしても、Xが素直にこれに応じてうつ病又はうつ状態にあることを説明したか否かについては、不明という他はないが、Xがそのような不安を抱くようになった原因の1つには、AやBのXに対する日頃の対応があったのではないかとも考えられ、そのこと自体、Y社やZ社における従業員に対する安全配慮義務の履行が必ずしも十分なものでなかったことを推認させるものである

会社関係者のみなさんは、この裁判例を十分理解する必要があります。

「安全配慮義務」という言葉は知っていても、その具体的な内容まで理解している方は多くありません。

どこまでやれば安全配慮義務を尽くしたといえるのか。 まさにここがポイントです。

定期的なセミナー、勉強会を開き、ブラッシュアップをしていかなければなりません。

労務管理とはそういうものなのです。

派遣労働22(日本精工(外国人派遣労働者)事件)

おはようございます。

今日は、派遣労働者12名による派遣先会社への地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。

日本精工(外国人派遣労働者)事件(東京高裁平成25年10月24日・労判1116号76頁)

【事案の概要】

本件は、派遣元会社から派遣先会社であるY社に対し、派遣元会社に雇用され、平成18年11月10日以前は、業務処理請負の従事者として、翌11日以降は、労働者派遣の派遣労働者として、Y社の工場等において就業していたXら(帰化者を含む日系ブラジル人)が、Y社と派遣元会社との労働者派遣契約の終了に伴い、Y社の工場における就業を拒否されたことについて、主位的に、(1)派遣元会社と派遣先であるY社との間の契約関係が請負契約であった当時のXら、派遣先会社であるY社及び派遣元会社の三者間の契約関係は、違法な労働者供給であり、XらとY社との間で直接の労働契約関係が成立しており、平成18年11月11日以降、派遣元会社と派遣先会社でありY社との間の契約関係が労働者派遣契約に変更された後も、労働契約関係は変化なく維持されていたから、Xらと派遣先会社であるY社との間に直接の労働契約関係が継続していたというべきであること、(2)そうでないとしても、XらとY社との間には、黙示の労働契約が成立していたというべきこと、(3)(1)及び(2)の労働契約の成立が否定されるとしても、Y社には、派遣法40条の4に基づき、Xらに対する雇用契約申込義務があったというべきであるから、XらとY社との間には当該義務に基づく労働契約が成立していたというべきであることを主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに上記労働契約に基づいて平成22年1月以降の月例賃金等の支払を求めるとともに、予備的に、(4)長年にわたりXらの労務提供を受けてきたY社には、Xらに対する条理上の信義則違反等の不法行為が成立すると主張して、Y社に対し、それぞれ200万円の慰謝料等の支払を求めたものである。

原審は、Xらの主位的請求をいずれも棄却し、予備的請求を、50~90万円の限度で認めた。

当事者双方が、それぞれ敗訴部分を不服として控訴した。

【裁判所の判断】

原判決中Y社敗訴部分をいずれも取り消す。

上記各取消部分に係るXらの予備的請求をいずれも棄却する。

Xらの本件控訴をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Y社は、冨士TRYと労働者派遣契約を締結するまでは、長年にわたり、請負契約の形式を使って実態は労働者派遣としてXらを受け入れてその労務の提供を受けてきたのであり(いわゆる偽装請負)、これは派遣法に違反していたことは明らかである。そして、このようなY社の対応は、当時の派遣法が製造業務について労働者派遣を禁止していたことを考慮したことによるものであると推認されるところである。しかし、Xらは、偽装請負の下においても、継続して冨士各社に雇用され賃金の支払を受けていたのであり、実態が労働者派遣とした場合と比べて、Xらに不利益があったとは認められない
したがって、Y社が偽装請負の下でXらから労務の提供を受けていたことをもって、Xらの権利又は法律上保護された利益が侵害されたものと認めることはできず、Y社に不法行為責任があるということはできない

2 Y社が冨士TRYと労働者派遣契約を締結するに際して、Xらに説明をしなかったとの点は、労働者派遣契約の前後を通じて実態は労働者派遣であることに変わりがなく、また、この点の説明は第一次的には使用者である冨士支社がすべきものである。この点においても、Y社に不法行為責任があると認めることはできない。

3 Y社の藤沢工場で就労していた日本人の派遣労働者が正社員に採用され、日系ブラジル人の派遣労働者が採用されなかったとの事実は認められるが、本件全証拠によるも、日本人と日系ブラジル人との取扱いに上記のような差異が生じた具体的な経緯、理由等は明らかではなく、国籍を理由として差別的取扱いを受けたとまでは認められないから、不法行為が成立するということはできない。

上記判例のポイント1の視点は、是非、参考にしてください。

派遣労働21(日産自動車ほか(派遣社員ら雇止め等)事件)

おはようございます。

今日は、更新を繰り返してきた派遣社員らに対する雇止め等の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

日産自動車ほか(派遣社員ら雇止め等)事件(横浜地裁平成26年3月25日・労判1097号5頁)

【事案の概要】

本件は、X1及びX2は、Y社を派遣先、A社を派遣元とする派遣労働者として勤務していた者であり、Y社との間で労働契約が成立しているとして、Y社に対し、労働者たる地位の確認及び平成21年5月以降到来する分の賃金の支払を求めるとともに、Y社及びA社に対し、不法行為に基づく慰謝料300万円を連帯して支払うよう求めた。

(なお、実際には、原告は、X1ないしX5の5名いる。)

【裁判所の判断】

本判決確定の日の翌日以降の賃金の支払を求める部分は却下

その余の請求は棄却

【判例のポイント】

1 X5は、派遣従業員から期間従業員となること、期間従業員から派遣従業員となることを「地位のキャッチボール」と呼称し、これは派遣制限期間の潜脱を目的として設計されたものであり、無効な契約である旨の主張をしている。
そこで、この点について検討するに、期間従業員として採用される際にY社担当者から、期間従業員としての期間終了後は、再び派遣従業員となって引き続き就労することができる旨の説明がされていたり、派遣労働期間が終了する頃に派遣従業員を対象とした期間従業員採用説明会が開催されるなどしていたことからすると、X5のみならず、Y社横浜工場で就労していた多くの派遣従業員が、短期間で派遣従業員からY社の期間従業員となり、再び派遣従業員となっていたことが推認されるところ、このような契約形態が常態化していたのは、Y社において、作業効率の観点から一定の経験を積んだ就労者を確保しつつ、他方で、いわゆる期間の定めのある労働契約の雇止めに際して期間更新の合理的期待を抱かせないようにすることにより期間従業員の雇止めが無効にならないようにする意図及び派遣期間制限違反が生じることを回避する意図が背景にあることが推認される

2 しかしながら、労働者派遣法は、派遣労働期間の制限を定め、制限にかかるクーリング期間を設定しているところ、同法が平成24年10月1日に改正されたことによって離職後1年以内の労働者派遣が禁止されるまでは、派遣就労先において期間労働者として就労していた者を再び派遣労働者として雇用することを禁止する定めはなかったこと、また、クーリング期間中に派遣労働者を直接雇用することを禁止する定めもないことに照らせば、このような運用を行った場合に期間従業員に対する雇止めが有効となるか等は別途検討されるべき問題であるとはいえるものの、こうした扱いが当時の労働者派遣法の派遣期間制限に直接違反するものとはいえない

3 また、Y社において、派遣労働者の希望の有無にかかわらず、派遣労働期間と期間雇用契約期間とを交互に設置して就労を継続させることを制度化していたことを認めるに足りる証拠はなく、上記の扱いは、派遣制限期間ごとに派遣就労先を変更することを避けて、同一の就労場所での継続的な就労を希望する派遣労働者の要請に応えたものともいえる。そして、Y社は、X5を職場推薦したように、1年以上就労している有能な派遣従業員についてはY社の正社員に登用する制度を用意し、派遣労働者を正規雇用化する措置も講じていたことを併せて考慮すれば、Y社の派遣労働者に対する上記のような扱いが、当時の労働者派遣法の潜脱を目的とするものであるとまでいうことはできない

「地位のキャッチボール」が行われている現場は、全国各地にあると思います。

有名なマツダ防府工場事件判決とともに参考にしてください。

派遣労働20(日本S社ほか事件)

おはようございます。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、派遣先との黙示の労働契約の成立および派遣先などへの損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

日本S社ほか事件(東京地裁平成26年4月23日・労経速2219号3頁)

【事案の概要】

本件は、A社及びA社を吸収合併したY社との間で派遣労働契約を締結し、派遣先であるS社において就業していたXが、①S社との間において、期間の定めのない労働契約が成立していると主張して、S社に対し、期間の定めのない労働契約上の地位確認並びに賃金及び遅延損害金の支払いを求めるとともに、②Y社らが、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律違反を行ったことにより、Xの権利・利益を侵害したと主張して、Y社らに対し、共同不法行為に基づく損害賠償及び遅延損害金の連帯支払を求め、さらに、③S社が、Xの直接雇用を拒否し、Xの派遣就業を終了させたことにより、S社との間の直接雇用の実現に対するXの期待権を侵害したと主張して、S社に対し、不法行為に基づく損害賠償及び遅延損害金の支払いを求めるとともに、④Y社が、XとS社との間の直接雇用の実現を侵害したことにより、上記直接雇用の実現に対するXの期待権を侵害したと主張して、Y社に対し、不法行為に基づく損害賠償及び遅延損害金の支払いを求める事案である。

なお、請求③及び④は、いずれも請求①を主位的請求とする予備的請求である。

【裁判所の判断】

いずれの請求も棄却

【判例のポイント】

1 労働者派遣法の趣旨及びその取締法規としての性質、さらに派遣労働者を保護する必要性等にかんがみれば、仮に労働者派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合においても、特段の事情のない限り、そのことだけによっては派遣労働者と派遣元との間の雇用関係が無効となることはないところ(最判平成21年12月18日)、本件労働者派遣契約及び本件派遣労働契約が、労働者派遣法における派遣受入期間の制限等に関する一連の行政的取締的法規に違反するものであったとの事情をもって、本件派遣労働契約が無効になるものと解することはできないし、本件においては、上記特段の事情は窺われないから、本件派遣労働契約は有効に存在していたものと解するのが相当である。

2 労働者派遣法40条の4は、派遣先の派遣労働者に対する労働契約の申込義務を規定したにとどまり、申込みの意思表示を擬制したものでないことは明らかである。すなわち、労働者派遣法40条の4は、その規定の実効性を確保するために、厚生労働大臣による指導又は助言、労働契約締結の申込みの勧告、それに従わないときは勧告を受けた者の公表という、飽くまでも間接的な方法で労働契約の締結の申込みを促すという制度を採用しているにとどまる。仮に、S社が、派遣受入期間の制限を超過していることを知りながら、労働者派遣を受け入れていたとしても、そのことをもって、上記申込みの意思表示が擬制されるものではない

3 Y社らにおいて、労働者派遣法が定める派遣先の常用雇用労働者の雇用安定を目的とした一連の行政的取締規定(派遣受入期間の制限等)に違反するとの事実があったとしても、そのことのみで、派遣労働者であるXに対するY社らの不法行為が成立するものと解することはできないところ、Xが、Y社らの上記法令違反行為によるものとして主張する被侵害利益の内容やその法的根拠は不明瞭である上、上記法令違反行為によって、Xの主張する損害(賃金減額分及び慰謝料)が生じるものと解すべき事情も見当たらない。
以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、XのY社らに対する労働者派遣法違反による共同不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。

特に目新しい判断はありません。

これまでの裁判例と同様の判断ですね。

派遣労働19(U社ほか事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう。

今日は、派遣社員の引き抜き・派遣先との契約継続妨害を理由とする派遣会社からの元社員、同業会社への損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

U社ほか事件(東京地裁平成26年3月5日・労経速2212号3頁)

【事案の概要】

本件は、X社が、従業員であったC及びDに対し、在職中から、Y社と共謀して、X社の従業員の引き抜き等をしたとして、Y社に対しては、X社の雇用契約上の債権を侵害した等として不法行為に基づいて、C及びDに対しては、秘密保持義務、競業避止義務及び雇用契約上の誠実義務に違反したとして債務不履行ないし不法行為に基づいて、損害賠償と遅延損害金の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社に対し、102万6672円の支払いを命じた。

Cに対し、102万6672円の支払いを命じた。

Dに対し、166万9941円の支払いを命じた。

【判例のポイント】

1 そもそも、在職中の従業員は、使用者に対し、誠実義務として、使用者の正当な利益を不当に侵害してはならないよう配慮する義務を負っており、具体的にいえば、使用者の営業上の秘密を保持すべき義務や使用者の利益に著しく反する競業行為を差し控える義務を一般的に負っている
そして、引き抜きが、単なる勧誘の範囲を超え、著しく背信的な方法で行われ、社会的相当性を逸脱しているといえる場合に初めて違法になると解される。

2 顧客の奪取が、社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法なものといえる場合に違法となると解される。ところで、本件では、問題となっている行為が、C及びDがX社在職中に行われており、もともと従業員が労働契約上の誠実義務を負っていることを踏まえれば、引き抜きや顧客の奪取が退職後に行われた場合に比して、より厳しく違法性の有無が判断されるべきと解する。

3 労働者は、職業選択の自由の一環として、退職し又は他社に転職する自由があり、企業は、労働者が自由な意思に基づいて退職ないし他社に転職することを認めなければならないし、これによって従前勤務していた企業に損失が生じたとしても、これを甘受しなければならないし、ことに、X社のように労働者派遣を業として行っている会社において、派遣労働者は労働条件が有期であったり、派遣先が決まらない間は待機中として有給休暇の消化をやむを得なくされるなど、正社員に比べるとその労働条件が不安定になっており、派遣労働者がより良い労働条件を求めて、転職することは当然の理である。
さらにいえば、X社のように労働者派遣を業としている会社において、派遣労働者の退職によって損失を生じる可能性がある場合には、当該派遣労働者の労働条件を改善して引き留めを図ったり、他の派遣労働者を適宜補充するなどの自助努力により損失を最小限にとどめることができるし、取引先の喪失についても、同様に新たな契約締結交渉等の努力を行うことができるところである。本件においては、X社が、かかる自助努力をどの程度行ったかは定かではないが、本来であれば自助努力によって回避可能な損失を漫然と被告らに負担させることは相当でない

4 以上の観点から、本件のEの引き抜き及び甲ハウスとの契約締結妨害についてみるに、引き抜きについては転職の勧誘にとどまるもので違法性がなく、X社と甲ハウスとの契約締結を妨害した点が問題になるにすぎないことや、EがY社から甲ハウスに派遣された当初の現場も3ヶ月程度で終了していることからすれば、Dが賠償すべき損害としては、3ヶ月分とみるのが相当である。

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特に上記判例のポイント3の考え方は参考にしてください。

厳しい内容ですが、これが現実です。