派遣労働29 派遣元に対する派遣法違反を理由とした損害賠償請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、派遣社員の派遣元に対する損害賠償等請求に関する裁判例を見てみましょう。

イスト事件(大阪地裁令和2年10月15日・労経速107号24頁)

【事案の概要】

本件は、塾等の教育機関への人材派遣等を目的とするY社に派遣の登録をしていたXが、Y社との間で有期労働契約を締結し、その期間満了前に解雇され、その権利ないし法律上保護に値する利益を侵害されたとして、また、仮に労働契約の成立が認められないとしても、Y社が就業条件等を書面で明示しなかったために権利ないし法律上保護に値する利益を侵害されたとして、いずれも不法行為に基づき、解雇がなければ得られたであろう賃金相当額計228万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、Xに対し、賃金の見込額等に関する就業条件を明示した書面を交付していないけれども、労働者派遣法違反から直ちにXの権利ないし法律上保護に値する利益侵害、あるいは、Y社の故意又は過失が認定されるものではなく、この点、Xが平成30年3月頃、A高校における勤務と同様の条件のB学園における非常勤講師の勤務の紹介を受けていたことやB学園との間で直接「1コマ1万円/月額固定」(2コマ月額2万円)の労働契約を締結していたことに照らせば、仮に平成30年8月30日のCの説明が「1コマ1万円」にとどまっていたとしても、それがXに誤解を与えるような説明であったとはいえないから、Y社は口頭とはいえ賃金の見込額等を伝えていたのであるから、Y社による上記書面の交付がないことによって、Xの権利ないし法律上保護に値する利益が侵害されたとはいえず、また、Y社の故意又は過失があるとはいえない

この論理展開は派遣法に限らず、行政法規全般に使われるものですので是非押さえておきましょう。

日頃から労務管理については、顧問弁護士に相談しながら行うことが大切です。