Daily Archives: 2021年5月10日

同一労働同一賃金19 無期転換労働者には正社員の就業規則が適用される?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、無期労働契約転換後の労働者に、正社員の就業規則が適用されるべきとの主張が認められなかった裁判例を見てみましょう。

ハマキョウレックス(無期転換)事件(大阪地裁令和2年11月25日・労経速2439号3頁)

【事案の概要】

本件は、労契法18条1項に基づき有期労働契約から期間の定めのない労働契約に転換したXらが、転換後の労働条件について、雇用当初から無期労働契約を締結している労働者(以下「正社員」という。)に適用される就業規則(以下「正社員就業規則」という。)によるべきであると主張して、Y社に対し、正社員就業規則に基づく権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、労働契約に基づく賃金請求権又は不法行為に基づく損害賠償請求権として、無期労働契約に転換した後の平成30年10月分の賃金について正社員との賃金差額(X1につき9万1012円、X2につき9万3532円)+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 前訴は、X1とY社との間で、有期の契約社員と正社員との労働条件の相違が労契法20条に違反する場合、当該有期の契約社員の労働条件が正社員の労働条件と同一のものとなるかが争われた事案であるのに対し、本件訴訟は、XらとY社との間で、労契法18条に基づく無期転換後の無期契約社員の労働条件が正社員の労働条件と同一のものとなるかが争われた事案であることが認められる。
そうすると、本件訴訟は、前訴と争点を異にするものであるから、本件訴訟におけるXらの主張に前訴におけるX1の主張と類似の趣旨のものがあったとしても、本件訴訟が前訴における紛争の実質的な蒸し返しに当たるということはできない。

2 X告らは、Y社の回答が上記のとおりであることを認識した上で、無期転換後の労働条件は契約社員就業規則による旨が明記された無期パート雇用契約書に署名押印してY社に提出しており、XらとY社との間には、無期転換後も契約社員就業規則が適用されることについて明示の合意があるというべきである。

3 Y社において、有期の契約社員と正社員とで職務の内容に違いはないものの、職務の内容及び配置の変更の範囲に関しては、正社員は、出向を含む全国規模の広域異動の可能性があるほか、等級役職制度が設けられており、職務遂行能力に見合う等級役職への格付けを通じて、将来、被告の中核を担う人材として登用される可能性があるのに対し、有期の契約社員は、就業場所の変更や出向は予定されておらず、将来、そのような人材として登用されることも予定されていないという違いがあることが認められる。
そして、無期転換の前と後でXらの勤務場所や賃金の定めについて変わるところはないことが認められ、他方でY社が無期転換後のXらに正社員と同様の就業場所の変更や出向及び人材登用を予定していると認めるに足りない。
したがって、無期転換後のXらと正社員との間にも、職務の内容及び配置の変更の範囲に関し、有期の契約社員と正社員との間と同様の違いがあるということができる。
そして、無期転換後のXらと正社員との労働条件の相違も、両者の職務の内容及び配置の変更の範囲等の就業の実態に応じた均衡が保たれている限り、労契法7条の合理性の要件を満たしているということができる。

この裁判例、そのまま読むと、無期転換後の社員と正社員との間においても同一労働同一賃金問題が生じるように読めます。

同一労働同一賃金の問題は非常にセンシティブですので、顧問弁護士に相談して対応するようにしてください。

ひとまず高裁、最高裁判決を待ちましょう。