派遣労働30 勤務態度不良を理由とする派遣労働者の雇止め(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、勤務態度不良を理由とする派遣労働者の雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

スタッフマーケティング事件(東京地裁令和3年7月6日・労経速2465号31頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と期間の定めのある労働契約を締結して就労していたXが、Y社による雇止めの無効を主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、雇止め以降本判決確定までの期間における賃金月額29万4737円他+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 Y社は、Xが自らの勤務態度や知識不足等について繰り返し指導を受けたにもかかわらず改善がみられなかったと主張し、その証拠としてb社やY社の従業員が送信した電子メールを提出するが、これらのうち乙第1号証・第2号証については,そもそもXの勤務態度等に問題がある旨が指摘された事実を認めることができず、乙第7号証・第8号証によれば、a社の会議等においてXの接客方法が問題視された事実が認められるものの、それを踏まえてXに対し指導がなされた状況や指導を受けたXの対応に関する証拠はなく、Xが勤務態度等について指導を受けたにもかかわらず改善がみられなかった事実を認めることはできない
そうすると、本件雇止めは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないものというべきである。

2 Y社は、令和2年2月13日、X代理人に対し復職に向けた打合せの機会を設けることを申し入れており、遅くとも同日以降はXの就労は履行不能でなかった旨を主張する。
しかし、当該申入れは、Xが「雇い止めに至る経緯で問題があったことを素直に認めて今後改善するということであれば、受け入れを検討する」、「自分は悪くないという態度で、気に入らないことがあるとかみつくという姿勢が改まらないのであれば受け容れられない」という内容であったものと認められ、結局のところ、Xが態度を改めなければ復職させない旨を申し入れたものというべきであるから、Y社がXの就労を拒絶している事実を左右するものではない
また、Y社は、Xが、同月以降他社において就労していたこと、本件雇止め前から別の仕事に移ることを希望していたことを指摘して、Xが本件労働契約に基づき就労する意思があったとは認められない旨を主張するが、雇止めを受けた労働者が他社において就労していたからといって直ちに雇止め前の労働契約に基づく就労の意思を喪失したものとはいえず、Xが本件雇止め前に異動を希望していたことについても本件労働契約に基づく就労の意思を否定するものでないことは前示のとおりであって、Y社の主張は採用することができない。

非常に基本的な内容ですが、実務においては極めて重要な内容です。

勤務態度を理由とする解雇・雇止めの注意、就労の意思の有無についての判断方法についてしっかりと理解しておきましょう。

日頃から労務管理については、顧問弁護士に相談しながら行うことが大切です。