Daily Archives: 2022年2月2日

解雇358 休職期間満了による退職扱いおよび予備的解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、休職期間満了による退職扱いおよび予備的解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

丙川商店事件(京都地裁令和3年8月6日・労判1252号33頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員として稼働していたXらが、それぞれ適応障害等を発症したとして、Xは平成29年11月2日から、X2は同年9月28日から休職していたが、Y社が、主位的に、X1につき平成30年8月2日付け、X2につき同年6月28日付けで休職期間満了による退職扱いとし、また、予備的に、Xらにつき令和元年10月30日付けで解雇するとの意思表示をしたことから、Y社に対し、本件各退職扱い及び本件各解雇はいずれも無効であると主張して、①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、②労働契約に基づき、Xらが復職を申し出た平成31年2月分以降の未払賃金+遅延損害金の支払を求めている事案である。

反訴は、Y社が、Xらが休職を開始して以降、Xらの社会保険料等を立て替えて支払ってきたとして、Xらに対し、不当利得に基づき、それぞれ立替金相当額の利得金+遅延損害金の支払を求めている事案である。

【裁判所の判断】

地位確認請求認容

Y社の反訴請求棄却

【判例のポイント】

1 本件就業規則17条1号は、休職事由の一つとして、文言上、「業務上の傷病により欠勤し3カ月を経過しても治癒しないとき(療養休職)」と規定している。一方で、本件訴訟において、Xらは、Xらの各休職事由につき、「業務上の傷病」であるとは主張しておらず、「業務外の傷病」として取り扱われることについて当事者間に争いはない
Y社は、労働基準法上、業務上の傷病により休職中の従業員を退職させることはできないから(同法19条)、本件就業規則17条1号に「業務上の」とあるのは明白な誤記であり、正しくは「業務外の」であるとして、Xらに同号が適用されると主張する。
確かに、業務上の傷病の場合に休職中の従業員を解雇することは労働基準法19条に反し、強行法規違反として無効の規定となるから、本件就業規則17条1号に「業務上の」と記載されているのは、同規則作成時において、何らかの誤解等があった可能性は否定しきれない。また、一般に、業務外の傷病に対する休職制度は、解雇猶予の目的を持つものであるから、本件就業規則17条1号を無効とはせずに、「業務外の傷病」であると解釈して労働者に適用することは、通常は労働者の利益に働く解釈であると考えられる。
しかしながら、本件においては、上記規定による休職期間満了後も引き続きY社から休職扱いを受けてきたXらが、上記休職期間満了により既に自然退職となっていたか否かが争われている。このような場面において、労働者の身分の喪失にも関わる上記規定を、文言と正反対の意味に読み替えた上で労働者の不利に適用することは、労働者保護の見地から労働者の権利義務を明確化するために制定される就業規則の性質に照らし、採用し難い解釈であるといわざるを得ない。
したがって、本件就業規則17条1号を「業務外の傷病」による休職規程であるとして、これをXらに適用することはできないというべきである。

珍しい事案ですね。

就業規則作成時のケアレスミスにより、休職期間満了による退職処分が認められなかったわけです。

就業規則の作成は、必ず顧問弁護士や社労士に依頼しましょう。