Daily Archives: 2022年2月8日

労働災害109 店長の過重労働による死亡と会社・取締役に対する損害賠償請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、店長の過重労働による死亡と会社・取締役に対する損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

株式会社まつりほか事件(東京地裁令和3年4月28日・労判ジャーナル1251号74頁)

【事案の概要】

本件は、亡Aの相続人であるXらが、被告株式会社Y1の従業員であった亡Aが、Y1における長期間の過重労働により、不整脈による心停止を発症して死亡したため、これにより損害を被った旨主張して、①Y1に対しては債務不履行による損害賠償請求権に基づき、②Y1の代表取締役であったY2に対しては債務不履行による損害賠償請求権又は役員等の損害賠償請求権(会社法429条1項)に基づき、連帯して、X1においては2401万0975円+遅延損害金の支払を、X2においては3513万1830円+遅延損害金の支払を、それぞれ求める事案である。

【裁判所の判断】

被告らは、X1に対し、連帯して、2091万5568円+遅延損害金を支払え。

被告らは、原告X2に対し、連帯して、3093万5452円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y2は、Y1の代表取締役として、Y1の業務全般を執行するに当たり、Y1において労働者の労働時間が過度に長時間化するなどして労働者が業務過多の状況に陥らないようにするため、従業員の労働時間や労働内容を適切に把握し、必要に応じてこれを是正すべき措置を講ずべき善管注意義務を負っていたというべきであるところ、Y1の業務執行を一切行わず、亡Aの労働時間や労働内容の把握や是正について何も行っていなかったのであるから、その職務を行うについて悪意又は重大な過失があり、これにより亡Aの損害を生じさせたというべきである
したがって、Y2は、会社法429条1項に基づき、Y1と連帯して、亡Aの死亡により生じた損害の賠償責任を負うというべきである。

2 これに対し、Y2は、亡Bに名義貸しをしたものにすぎず、Y1の取締役としての職務を行うことが予定されておらず、実際にも職務を行っていなかったから、Y2のAに対する重大な過失はないとも主張する。
そこで検討するに、Y2は、亡BからY1の設立に当たり名前を貸すように依頼を受けてこれを了承し、被告Y2においてY1の代表取締役の登記手続をされたものであり、Y1の経営に関与したり、役員の報酬を得たりしたことも一切なかったのであるから、Y2がY1の業務執行に関わることが一切予定されていない、いわゆる名目的な代表取締役であったことは、被告らが主張するとおりである。
もっとも、Y2は、亡Bからの上記依頼の内容について、Y1の役員になるのかもしれないとの認識を持ち、印鑑登録証も貸したことが認められるのであるから、Y1の代表取締役への就任自体は有効に行われたものであるといわざるを得ず、そうである以上、Y2がY1の代表取締役として第三者に負うべき一般的な善管注意義務を免れるものではない。仮に、Y2が、Y1の実質的な代表者であった亡Bから、Y1の業務執行に関わる必要がないとの説明を受けていたり、Y1から何らの報酬を得ていなかったりしたとしても、それはY1の内部的な取決めにすぎず、そのことからY2がY1代表取締役として負うべき第三者に対する対外的な責任の内容が左右されることはない

たとえ名目的な代表取締役であったとしても、それをもって責任を免れないことは争いのないところです。

労災が発生した場合に、会社のみならず、役員の責任追及をされることがありますので注意しましょう。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。