解雇42(京都たつた舞台事件)

おはようございます。

さて、今日は、業務能率不良を理由とする解雇に関する裁判例を見てみましょう。

京都たつた舞台事件(大阪高判平成18年11月22日・労判930号92頁)

【事案の概要】

Y社は、演劇に使用する舞台装置(大道具、小道具)の製作、施工などを業務とする会社である。

Xは、平成14年5月、Y社との間で期間定めのない雇用契約を締結した。

Y社は、平成15年6月、Xに対し、再三の注意にもかかわらず、業務能率が著しく不良であることを理由に、解雇予告をした。

なお、Y社就業規則43条には、解雇事由として、「勤務成績又は業務能率等が著しく不良で、従業員としてふさわしくないと認められたとき」と規定されている。

Xは、本件解雇は解雇権の濫用にあたり、無効であると主張し争った。 




【裁判所の判断】

解雇は有効

【判例のポイント】

1 Xの行為は、舞台稽古中の出来事ではあったが、Xは、何度も指示されても、演者との間が合わないままであり、きっかけ(合図)を出してもらっても、うまく障子を開閉することができなかったものであるから、演者と裏方との緊密な共同作業の中で、他の職人であれば取ることができるようになるタイミングを、最後までつかめなかったものと認められる。舞台芸術では、演者と裏方とが、間あるいはタイミングを合わせることを必要不可欠な要素とするものであるが、Xには、この裏方に必要な演者と一体となって作業するために必要な時間的感覚が欠けているために、上記の都おどりの件が生じたものと認められる。
そして、Xの上記行為の結果、舞台の進行をすべて止めてしまうような事態を引き起こしたり、さらには、主催者らからXを担当から替えるよう求められる事態に至っているのであるから、Xの上記行為は、「業務能率が著しく不良である」場合に当たることは明白である。

2 Xの各行為は、いずれも「業務能率等が著しく不良である」場合に当たるか、それをうかがわせる事実ということができるところ、これらの事実を総合して勘案すると、Xは、他の従業員と協調して作業するという特殊性があるY社での勤務について適合せず、しかもそれはX本人の素質によるものが多いものと認められるから、。Xは、就業規則43条1項が規定する「業務能率等が著しく不良である」場合に該当し、それを理由とするY社のXに対する本件解雇には解雇権の濫用はなく、正当というべきである。

3 なお、Xは、Y社に入社した当初から本件解雇がなされるまでの間、遅刻や欠勤などを一切しなかった旨主張し、その事実は認められるが、そのことを考慮しても上記判断を左右するには至らない。 

成績不良の従業員の解雇については、通常、裁判所は厳しい判決を出します。

しかし、本件では、解雇は有効であると判断されました。

ポイントは、Xの業務能率不良が与える影響の大きさ、顧客からのクレームの存在、他の従業員との協調性が重要であるという業務内容の特殊性、業務能率不良の原因がX本人の素質によること、などです。

この裁判例をどこまで一般化すべきか、悩ましいところです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。