Monthly Archives: 5月 2011

不当労働行為12(田中酸素事件)

おはようございます。

さて、今日は、配転・出勤停止処分と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

田中酸素事件(中労委平成23年1月19日・労判1022号87号)

【事案の概要】

Y社は、従業員役60名をもって、高圧ガス製造販売および建設機材のリース販売等を行っている。

X組合の執行委員長Aは、平成8年7月、Y社に入社し、平成13年8月から本社のリース部門の業務に従事してきた。

平成20年12月、Y社は、Aに対し、Y社会長に対する暴言等職場の秩序を乱したこと、上長の注意、指示、命令に従わないことなどを理由に6日間の出勤停止処分に付した。

平成21年1月、Y社はAに対し、小野田営業所へ配転する旨命じた。小野田営業所は、本社から車で10分程度の距離にある。

配転後のAは、主として足場材等洗浄作業に従事している。

Aは、本件出勤停止処分と配転は、不当労働行為にあたるとして争った。

【労働委員会の判断】

出勤停止処分・配転ともに不当労働行為にあたる。

【命令のポイント】

1 Y社は、本件リース部門が配達業務等に人手を要しない状態にあったとまではいえず、また、Aの業務遂行能力は若干の指導、補助等を補っても通常の業務遂行に耐えない程度にまで失われ又は欠落していたとはいえないにもかかわらず、Aを敢えて本社リース部門に復帰させず、本件配転により、Aを更なる人手を要する状態にあったとはいえない小野田営業所に配転したということができる

2 そうすると、本件リース部門が業務を縮小したこと、Aが長期間離職していたことを考慮しても、本件配転の合理性には疑問が残るといわなければならない

3 本件配転の合理性に疑問が残ることに加え、Aは、X組合の執行委員長であること、X組合は、結成以来ほぼ恒常的にY社と対立、緊張関係にあったこと、Y社が、第1次解雇の後もAを再度解雇し、第2次解雇が無効であることを前提とする判決が確定するや、Aの弁明等を聴取せずに本件処分を行い、同様にAの意向等を事前に聴取しないで本件配転を行ったことが認められる。

4 これらの事情に照らすと、Y社は、X組合の執行委員長であるA及び同人ら組合活動を嫌悪し、同人を本社から排除し、精神的ないし職業上の不利益を与えるとともに、A及び組合の会社及び他の従業員に対する影響力を減殺する意図をもって本件配転に及んだと認めるのが相当である。
以上検討したところによれば、Y社は、A及び同人らの組合活動を嫌悪し、・・・本件配転を行ったと認められるから、本件配転は、労組法7条1号の不当労働行為に当たる

この命令の内容を見てもわかるとおり、結局、不当労働行為に該当するか否かについては、特別な判断基準があるわけではないのです。

配転が合理的理由に基づいていないといえ、その当事者が組合員であると、不当労働行為に該当する可能性が出てくるわけです。

まして、今回、Aは、X組合の執行委員長です。

会社としては、やり方を考えないと、このような結果になってしまいます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

有期労働契約20(エフプロダクト事件)

おはようございます。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、継続雇用制度による再雇用と雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

エフプロダクト事件(京都地裁平成22年11月26日・労判1022号35頁)

【事案の概要】

Y社は、百貨店を主要取引先としてマネキンの貸出しや百貨店における内装展示等を主力業務とするA社の子会社として、マネキンの製造・メンテナンス、内装展示のための陳列器具の商品管理および物流業務等を業とする会社である。

Xは、Y社の西営業所において、商品管理業務、マネキンメンテナンスとそれに付随する業務を担当し、労働組合の委員長をしていた。

Y社は、平成20年2月、再雇用制度に関する就業規則を制定した。

Xは、平成20年6月、60歳の誕生日をもって、Y社を退職し、翌日付で、平成21年6月を再雇用期限として再雇用された。

その際に作成された契約書には、「業務量の減少等により契約の必要がなくなったとき」や「会社の経営の都合で人員削減の必要上やむを得ないとき」には、契約を更新せず、契約の終了とする旨が記載されていた。

Y社は、平成21年3月、Xに対し、「業績不振のため」を理由として、同年6月をもってXとの雇用契約を期間満了により終了させる旨の雇用契約満了予告通知をした。

Xは、本件雇止めは無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 Y社は、就業規則41条4項が「再雇用に関する労働条件等については、個別に定める労働契約(労働条件通知書)によるものとする。」とし、本件再雇用の契約書13条で会社の経営上の理由により契約更新が行われない場合を規程していることから、Xが主張するような定年後の継続雇用に対する合理的期待が生じる余地はない旨主張する。

2 しかし、就業規則41条1項、4項を素直に読むと、4項のいう「労働条件等」とは、賃金や労働時間等、雇用の継続を前提とした労働条件等を意味するわけではないと解される。したがって、上記契約書13条の規定は、就業規則に違反し、無効である(労働契約法12条)。

3 就業規則で、再雇用に関し、一定の基準を満たす者については「再雇用する。」と明記され、期間は1年毎ではあるが同じ基準により反復更新するとされ、その後締結された本件協定でも、就業規則の内容が踏襲されている。そして、現にXは上記再雇用の基準を満たす者として再雇用されていたのであるから、64歳に達するまで雇用が継続されるとの合理的期待があったものということができる。

4 ・・・本件再雇用契約の実質は、期間の定めのない雇用契約に類似するものであって、このような雇用契約を使用者が有効に終了させるためには、解雇事由に該当することのほかに、それが解雇権の濫用に当たらないことが必要であると解される。したがって、本件雇止めには、解雇権濫用法理の類推適用があるとするのが相当である。

5 本件雇止めが整理解雇の要件を満たすかどうかを検討する必要があるところ、整理解雇については、人員整理の必要性があったか、解雇を回避する努力がなされたか、被解雇者の選定基準に合理性があるか、労働者や労働組合に対する説明・協議が誠実になされたかという点を総合的に考慮して判断するのが相当である。

6 ・・・昨今の百貨店各店の業績からすると、Xを雇止めにした平成21年6月時点において、Y社における今後の売上高の上昇が期待できる見込みに乏しく、人員を削減すべき必要性を認めることができる。

7 ・・・平成21年4月には、親会社に移籍する予定とはいえ新規に大学卒を採用している。そして、Y社において一時帰休を実施したのは平成21年7月、希望退職を募集したのは同年12月であって、こうした経緯からすると、Y社において、本件雇止め以前にそれを回避すべき努力義務を尽くしたということはできない

8 以上の検討からすると、本件雇止めについて、整理解雇の要件を満たしていると認めることはできず、Y社の業績不振を理由とする本件雇止めは、解雇権の濫用に当たり無効である。

本件は、雇止めが整理解雇として行われた事案です。

このような場合、雇止めであっても、整理解雇の要件を満たしていなければ、無効となります。

解雇回避努力について、厳しく判断されますので、新規採用等の矛盾した行動はやめましょう。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

不当労働行為11(島田理化工業事件)

おはようございます。

さて、今日は、誠実交渉義務と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

島田理化工業事件(静岡県労委平成23年1月27日・労判1022号86頁)

【事案の概要】

Y社は、東京都内に本社および東京製作所を、静岡県内に島田製作所を、福岡県等に営業拠点を置き、電気機器の製造販売を行っている。

平成21年4月、Y社は、X組合に対して、島田製作所(従業員数約200名)を閉鎖し、同製作所で行っていた洗浄装置事業を終息させ、高周波応用機器事業を東京製作所に集約し、180名の希望退職を募集する旨の経営再建プランを説明した。

Y社と支部は、経営再建プランに関して同年8月までに8回の団交のほか事務折衝を行った。その間の6月、Y社は、支部に対して「経営再建プランにおける人員関連施策内容」と題し、再就職あっせん、希望退職、高周波事業の東京地区移転に伴う配転、個別面談について説明する文書を送付した。

また、7月、Y社は、支部に対して高周波事業の東京地区への移転計画、再就職のあっせん及び希望退職者のスケジュールを説明した。

8月の団交において、Y社は、議論は平行線でこれ以上の交渉の進展が困難であるとして、経営マターの協議を打ち切りたい、希望退職募集について労使の合意は必要ないと述べた。

Y社は、7月に説明したとおり、10月に希望退職を募集した。

X組合は、団交におけるY社の対応が誠実交渉義務に違反すると主張し争った。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】

1 島田製作所の閉鎖に関する事項等並びに人員関連施策としての希望退職の募集に関する事項及び高周波事業従事者の東京地区への転任に関する事項のうち、島田製作所の閉鎖に関する事項等はY社の事業の廃止・移管という経営・生産に関する事項であり、そこから生じる労働条件問題の交渉の中で議論されるべきことはあっても、それ自体としては義務的団交事項に当たるということはできない。

2 しかし、経営再建プランの実施に伴う希望退職の募集は、労働者の雇用そのものにかかわることであり、応募する労働者にとっては退職金などの労働条件を含むものであり、また、応募しない労働者にとってもその労働条件に影響を及ぼすことであるので義務的団交事項である。また、高周波事業従事者の東京地区への転任に関する事項は、高周波業務部門全体の東京地区への異動であり、集団的な職場の変更であるので、義務的団交事項である。

 希望退職募集に関しては、経営再建プラン発表後、募集までに、6回の団体交渉のほか事務折衝も行われ、その間に、Y社は、資料を提示して希望退職募集に至った経営状況を説明している。

4 経営再建プランに係る島田製作所の閉鎖に関する事項等自体は、事前協議事項や義務的団交事項とは認められず、同プランに係る人員関連施設としての希望退職の募集に関する事項及び講習は事業従事者の東京地区への転任に関する事項については、Y社は誠実に団体交渉を行っていたと認められることから、不当労働行為には該当しない

地元静岡の事件です。

同命令では、労使間の事前協議中に希望退職を募集したことは、不当労働行為には当たらないと判断されています。

本件では、Y社は、誠実交渉義務を尽くしているといえ、結論は、妥当であると思います。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為10(ヤンマー事件)

おはようございます。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、団交拒否と不当労働行為に関する裁判例を見てみましょう。

ヤンマー事件(中労委平成22年11月10日・労判1016号94頁)

【事案の概要】

Y社は、平成20年8月、工場で就労しいていた派遣労働者に対し、希望者を「期間従業員」として直接雇用すると説明し、具体的労働条件および入社手続に関する資料を配付した。

Y社とX組合は、直接雇用に関する団交を開催し、入社手続書類の1つである誓約書問題等を話し合った。

X組合は、期間従業員就業規則(案)および誓約書等を協議事項とする本件団交申入れを行ったが、Y社は、就業規則については説明する用意がある旨および団交は前回の団交で説明回答しているので応じられないと回答した。

X組合の組合員全員が労働条件契約書とともに誓約書をY社に提出し、Y社は、同人らを直接雇用した。

X組合は、就業規則および誓約書等を協議事項とする団交を申し入れ、団交が開催された。

その後、Y社は、3回、団交に応じている。

X組合は、Y社が2回目の団交を拒否したことは不当労働行為にあたると主張し、争った。

【労働委員会の判断】

2回目の団交を拒否したことは不当労働行為にあたるが、その後の事情変更により救済利益は失われた。

【命令のポイント】

1 労組法7条は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進するために、労働者が自主的に労働組合を組織し、使用者と労働者の関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること、その他の団体行動を行うことを助成しようとする労組法の理念に反する使用者の一定の行為を禁止するものである。
したがって、同条にいう「使用者」とは、同法が上記のような助成しようとする団体交渉を中心とした集団的労使関係の一方当事者としての使用者を意味するものであって、雇用契約上の雇用主が基本的にこれに該当するものの、必ずしもこの者だけに限定されるものではない。雇用主以外の者であっても、当該労働者との間に、近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存する者は雇用主と同視できる関係にあり、同条にいう「使用者」に該当すると解するのが相当である

2 そうすると、本件団交申入れが行われた平成20年9月の時点においては、会社は、組合の組合員との関係において、近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存する者として、雇用主と同視できる関係にあり、労組法7条の「使用者」に該当するというべきである。

3 確かに、Y社は、本件団交を除けば、組合から求められた団体交渉には全てそれなりに誠実に応じており、また、本件団交申入れに対しても、それなりの誠実性が認められる回答をしている。これらの事実関係を併せ考えると、Y社が本件団交申入れに応じなかったことに正当な理由がなかったと断定するには、ためらいを覚えるが、Y社が本件団交申入れに応じなかったことに正当な理由がなかったといわざるを得ない

4 Y社が本件団交申入れに応じなかったことに正当な理由がないといわざるを得ず労組法7条2号の不当労働行為が成立するとしても、上記のような事実経過や上記内容の第5回団体交渉が実施されたことによって、本件団交要求の目的となっていた事項につき、組合の影響力を行使する機会を与えられたと認めるのが相当である。したがって、本件について救済の利益は存しないというべきである

結論は妥当であると考えます。

この命令では、労組法上の「使用者」性について、規範を上げ、認定しています。

労基法上の「使用者」と異なるので、注意しましょう。

また、Y社は、かなり誠実に団体交渉に応じていました。

その中で、一度、団体交渉を拒否したことが不当労働行為と認定されたことは、参考になります。

さらに、参考にすべきなのが、不当労働行為性は肯定されながら、「救済の利益」がないと判断された点です。

会社側としては、多いに参考にすべき点ですね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為9(日本工業出版事件)

おはようございます。

さて、今日は、昇進・昇格と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

日本工業出版事件(大阪府労委平成22年11月15日・労判1016号93頁)

【事案の概要】

Y社は、従業員50名をもって技術雑誌、図書の出版を行っている会社である。

X組合の組合員中Y社の従業員は、Aのみである。

平成7年4月に営業職として入社したAは、Y社大阪営業所において、会社の発行する雑誌および書籍への広告スポンサーを獲得することや雑誌および書籍を販売する業務に従事している。

平成20年4月、Y社は、平成10年4月に入社し、大阪営業所に勤務しているBを主任に昇格させたが、Aを主任に昇格させなかった。

X組合は、Aを主任に昇格させなかったことが不当労働行為にあたると主張し争った。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない。

【命令のポイント】

1 Y社における昇格制度について、Y社は、(1)業務の必要性及び業務内容等に応じ、従業員の職務遂行の応力を基準にして、当該役職に必要な資質及び適性のある従業員の昇格を、取締役会で協議の上、決定、任命していること、(2)勤務成績、やる気、向上心、協調性、コミュニケーション能力等を総合的に勘案し、昇格を決定する能力主義で運用していること、(3)営業職の評価において、営業成績の中でもとりわけ新規受注額を最も重視して評価を行っていること、が認められ、Y社における昇格制度自体、合理性が認められる

2 Y社が営業成績の中でも特に重視して評価を行っている新規受注額においても、A組合員はB主任の約4分の1以下と、極端に低いのであるから、平成18年度及び同19年度におけるA組合員の営業成績、営業活動を通しての会社への貢献度がB主任よりも高かったということはできない

3 Y社が、組合を嫌悪した結果、会社の裁量の範囲を逸脱して、A組合員を主任に消火買うさせなかったと認めることはできず、平成20年4月に、Y社がA組合員を主任に昇格させなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱いであるとはいえない。

結論は妥当であると考えます。

組合が、本件のようなケースを不当労働行為として争うのであれば、せめてAとBの営業成績が拮抗してほしいところです。

会社としては、合理的な裁量の範囲で、人事権を行使すれば足り、それ以上でもそれ以下でもありません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為8(リコー事件)

おはようございます。

さて、今日は、定年後再雇用と不利益取扱いに関する命令を見てみましょう。

リコー事件(東京都労委平成22年12月7日・労判1018号96頁)

【事案の概要】

Y社は、事務機器の製造販売を営む会社である。

Y社は、定年退職者の再雇用に関する基準を改定することとし、労使協定を締結し、就業規則も改定した。

この再雇用基準では、(1)定年前の3年間の出勤率が平均で95%以上あること、(2)業務を遂行するうえで支障がない健康状態であると会社産業医が判断すること、(3)就業規則の「懲戒事由および区分」の各号に定められている行為によって懲戒処分を受けていないこと、あるいは服務規律違反を繰り返していないこと、(4)組織活動を円滑に遂行することができる協調性があることとされていた。

組合員であるXは、Y社の従業員であるところ、平成17年4月、配転をめぐり上司とあつれきが生じ、無断外出等を理由にけん責処分を受けた。

平成20年8月、Xは定年退職したが、Y社は、Xにけん責処分歴があることなどを理由に再雇用しなかった。

Xは、Y社がXを再雇用しなかったのは、不利益取扱いにあたると主張し争った。

【労働委員会の判断】

Xを再雇用しなかったことは不当労働行為にはあたらない。

【命令のポイント】

1 Xがけん責処分を受けたのは、同人の組合加入がY社に通知された日より半年以上前であるから、けん責処分自体が不当労働行為に当たらないことは明らかである

2 Xが平成20年8月の定年退職後、再雇用されなかったのは、再雇用基準では少なくとも懲戒処分されなかったのは、再雇用基準では少なくとも懲戒処分を受けていないことが要件となっていたのに対し、同人は平成17年11月にけん責処分を受けていたことによるものである。また、会社が懲戒処分歴のある従業員を再雇用した例はない

3 したがって、他の特段の事情がない限り、Xが再雇用されなかったことをもって、組合員であることを理由に差別した不当労働行為であると認めることはできない。

結論は妥当だと思います。

継続雇用制度について、不当労働行為という視点から争われたもので、参考になりますが、事案としては、不当労働行為にあたるようなケースではありません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為7(戸田工業事件)

おはようございます。

さて、今日は、労働協約の解約と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

戸田工業事件(山口県労委平成22年12月9日・労判1018号94頁)

【事案の概要】

Y社は、従業員約400名をもって機能性顔料事業等を営んでいる会社である。

Y社は、昭和49年、X組合との間で「社会保険料の労使負担割合を35対65とする内容の労働協約」
を締結し、労使折半を超えて社会保険料の15%をY社が補助する取扱いを全従業員に適用してきた。

平成21年3月、Y社は、X組合に対し、業績悪化を理由に本件補助を廃止し、労使負担割合を法定どおりの折半とする(手取給与は月平均1万5000円減)旨および代替措置として賞与に年間0.4か月を上乗せする(手取給与は月平均1万1000円減)旨提案した。

その後の交渉の中で、Y社は、廃止時期を先送りし、家族手当1000円の増額および保険手当(本件補助の25%相当額)の新設という代替措置(手取給与は月平均1万円減)を提案した。

これに対し、X組合は、本件補助の廃止提案の撤回を求め、本件補助の代償としては100%の別手当を要求して対立した。

その後、Y社は、給与規定の改定により本件補助の廃止を実施しようとしたところ、X組合から労働協約に違反する給与規定の改定は許されないと指摘されたことを受けて、労働協約の解約を予告した。

【労働委員会の判断】

労働協約の解約は不当労働行為にあたらない。

【命令のポイント】

1 Y社が平成21年3月に本件補助の廃止提案をした背景には、・・・平成20年度下期以降、会社の業績が急激に悪化したことに伴い、諸施策を実施していたこと、また、一般正規従業員を除いた、定年後再雇用社員、役員、執行役員及び管理職については、平成18年度以降、順次、本件補助を先行廃止していたという客観的事実が認められる

2 これらの事実からすると、経営状況の悪化に伴い、経営改善に向けた諸施策を実施して、さらなる労務費の適正化に努めていた会社が、一般正規従業員の本件補助の廃止提案をしたことには、それ相当の必要性があったと認められる。

3 Y社は、一連の労使協議の中で、順次、譲歩案を提示していったことが認められる。これに対してX組合は、本件補助の100%を別手当で支給することを求め続けたのであり、X組合が譲歩案を検討することについて言及したとはいえ、譲歩案を提示した事実はない

4 Y社は、本件労働協約の解約に先立って、社会保険事務所及び協会けんぽの担当者から、本件補助は法の趣旨に反するもので好ましくないという改善指導を重ねて受けていた。Y社はそれを是正すべく、平成21年10月から、本件補助の廃止及び会社提案による代償措置の運用を開始することを目的として、就業規則変更の手続きに移行したものであるが、その時点で、X組合の意見書により本件労働協約の存在を認識したのであるから、労働組合法第15条第3項及び第4項の規定に従ってその是正を急いだとの事情は理解できる

5 以上のとおり、Y社による本件労働協約の解約自体は、直接支配介入行為に該当するものとすることはできず、Y社が支配介入を行ったとするX組合の主張は採用できない。したがって、Y社の対応は、不当労働行為には該当しない。

妥当な結論だと思います。

会社が、代償措置として、かなりの譲歩案を提示している一方で、組合側が譲歩の姿勢をほとんど示していないことから、このような結論になりました。

なお、労働組合法15条3項、4項は以下のような規定です。

労働組合法15条(労働協約の期間)
3項 有効期間の定がない労働協約は、当事者の一方が、署名し、又は記名押印した文書によって相手方に予告して、解約することができる。一定の期間の経過後も期限を定めず効力を存続する旨の定があるものについて、その期間の経過後も、同様とする。

4項 前項の予告は、解約しようとする日の少くとも90日前にしなければならない。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為6(小堀不動産管理事件)

おはようございます。

さて、今日は、廃業後の別会社への雇用約束と不当労働行為に関する裁判例を見てみましょう。

小堀不動産管理事件(滋賀県労委平成23年1月28日・労判1020号93頁)

【事案の概要】

Y社は、平成21年3月当時、従業員3名をもって不動産の仲介および管理を行っていた。

Xは、平成16年2月にY社に採用され、平成19年4月、管理職ユニオン・関西(組合員約350名)に加入した。

平成21年1月、Y社の専務は、全従業員に対して会社を廃業すると告げ、全従業員に3月31日をもって解雇する旨通知し、同日、全従業員を解雇し、その後まもなく事業を廃止、解散登記をした。

なお、同年3月、Y社の専務は、従業員から「会社がつぶれたらどうなるのか」と尋ねられて、「Z社(Y社の社長が代表取締役をしているマンションの管理運営を行っている株式会社)で雇ってもらえるように社長に言うてみる」旨回答したが、その後、Z社での雇用は、社長の了解が得られなかったと伝えた。

労働組合は、経営悪化を理由に会社を廃業し、これに伴って組合員であるXを解雇したことが不当労働行為にあたると主張した。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない。

【命令のポイント】

1 Y社と申立組合とがさほど険悪な関係にもなっていない状況で、申立組合を排除するため、あるいはXが組合員であることを嫌悪してこれを排除するため、Y社が廃業という究極の手段を取ろうとすることは考えられない

2 専務が従業員らにZ社での雇用の話をしたとしても、同社の社長の承認がないままに明確な雇用の約束をしたとは考えられず、せいぜいが同社での雇用についての検討をする程度での話があったと認めるのが相当であり、それも結局は社長の同意が得られずに、Xを含めて従業員全員が解雇されて、同社に雇用はされなかったのであるから、Xが不利益取扱を受けたということはできず、さらにこれだけでY社の申立組合あるいは組合員排除の意思を推認することもできない

結論は妥当だと思います。

この事案で、不当労働行為に当たると判断することはかなり無理があります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為5(萬世閣事件)

おはようございます。

さて、今日は、不当労働行為に関する救済命令を見てみましょう。

萬世閣事件(北海道労委平成23年1月14日・労判1020号94頁)

【事案の概要】

Y社は、洞爺湖萬世閣、登別萬世閣等のホテルを経営しており、その従業員は544名である。

平成20年12月、Y社の従業員らは、X組合の結成大会を開催し、Aを執行委員長に選出した。

Aは、登別萬世閣の調理長を補佐する顧問職を命じられていた。

X組合はY社に団体交渉を申し入れた。

Y社は、登別萬世閣において就業規則変更のための従業員代表者選出手続の社員集会を開催した。

集会後、Y社が代表者から意見聴取を行っていたところ、Aが「ちゃんと確かめないでサインをしないのはいいのか」などと発言したため、Y社常務は、「意見があるなら、さっき質疑応答の機会に言えばよかったのではないか」と述べ、Y社社長は、「どのように思おうと自由であるが、正式な手続を踏んでいるのだから、手続を妨害するんじゃない」と発言した。

平成21年4月、Y社は、Aに対して、「顧問職というのは社長との信頼関係の上に成り立っているわけで、今、社長解任を訴えているAさんとはこの信頼関係が成り立たない。故に顧問職を解任します」と通告した。

【労働委員会の判断】

Aを調理長顧問解任により降格したことは不当労働行為にあたる。

社長らのAに対する発言は不当労働行為にあたらない。

【命令のポイント】

1 Y社側の発言が行われたのが、労働組合結成から間もない時期であるという状況を考慮しても、常務、社長の発言それ自体を、組合への威嚇ないし組合蔑視の発言と認めることはできず、法第7条第3号の不当労働行為には該当しない。

2 Aの顧問職は、直接的な人事権を持たず経営上の機密を扱うものでもないから、組合に加入して、組合活動を行うこと自体は、顧問職の立場と矛盾しない。したがって、組合対策をすべきところを行わなかったから信頼関係が破壊されたとするY社の主張は理由にならない

3 以上からすると、降格には相当な理由が認められず、会社の組合嫌悪の意思も顕著であり、Aが組合の執行委員長である立場に鑑みると、Aの降格は、法第7条第1号の組合活動を故とする不利益取扱いに当たり、同時に法第7条第3号の組合への支配介入に当たる。

妥当な結論だと思います。

法的な対策が必要なところを感情的な対策をとってしまったために、このような結論になってしまったのだと思います。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為4(日本レストランシステム(団交)事件)

おはようございます。

さて、今日は、団交拒否と損害賠償に関する裁判例を見てみましょう。

日本レストランシステム(団交)事件(大阪地裁平成22年10月28日・労判1021号90頁)

【事案の概要】

Y社は、各種レストランチェーン店の経営を業とする会社であり、従業員数は社員1000名、アルバイト従業員は約5000名である。

Xは、主として近畿2府4県において、セメント、生コン産業、トラック輸送その他の一般業種で働く労働者により組織される労働組合であり、その組合員数は約1800名である。

Xは、平成20年12月22日、Y社に対し、団体交渉を開催するよう求めた。

Y社は、同月24日、「団体交渉に応じる義務はない」と述べ、団体交渉を拒否した。

Xは、平成21年1月8日、労働委員会に対して、不当労働行為救済を申し立て、Y社に対して団体交渉応諾およびポスト・ノーティスを求めた。

労働委員会は、Y社の団交拒否を不当労働行為であると認めた。

Y社は、初審命令を不服として、中央労働委員会に対し再審査を申し立てた。

中央労働委員会は、再審査申立を棄却した。

その後、Y社は、Xに対し、再審査命令において命じられたとおりの内容の文書を交付した。

Xは、Y社に対し、団結権及び団体交渉権を侵害されたとして、損害賠償請求をした。

【裁判所の判断】

本件団交拒否は、不法行為をあたり、20万円の支払いを命じた。

【判例のポイント】

1 Y社は社員約1000名、アルバイト従業員約5000名を抱え、レストランチェーンを手広く経営し、専門の人事部署を有する企業であり、本件団交申入れに対して速やかに対応できない事情は全く窺われない

2 Y社は、本件団交申入れに対し、当初からこれを拒否する姿勢を明確にしていた

3 Y社は、本件団交申入れにおいて示されたXからの要求事項につき、回答書において「義務のない要求事項」と述べるものの、回答書あるいはその後の電話におけるやりとりにおいて、Xに対し要求内容に関する確認を行ったり、要求事項に対する会社としての見解を公式・非公式に示すなどの措置を全くとっていない

4 Xが労働委員会に救済申立てをした後、Y社はXに対して団体交渉には応じるような素振りを見せるようにはなったが、Xの複数回にわたる団体交渉開催要請に対し、個別事項以外の交渉には応じられないとか大阪へは行けない等と述べ、速やかに団体交渉に応じようとはしなかった。

5 これらの事実によれば、本件団交申入れに対するY社の一連の対応は、Xの団体交渉権ないし団結権を不当に軽視するものとして、Xに対する不法行為を構成するというべきである

6 本件団交申入れに対するY社の不法行為によって、Xには労働組合としての団体交渉権を否定されたことによる社会的評価の低下による無形損害が発生したところ、Xの損害については、Y社が、Xによる救済申立後にようやく団体交渉に応じ、協定書の締結にまで至ったことや、Y社からの団交拒否が労働委員会において不当労働行為であると認定されたことを誠実に受け止める旨の文書の交付を受けたことにより相当程度回復されたというべきである

たいした理由もないのに、団交拒否するとこのようなことになります。

会社の対応のまずさが随所に出ています。

会社としては、団体交渉をなめてはいけません。 気をつけましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。