不当労働行為10(ヤンマー事件)

おはようございます。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、団交拒否と不当労働行為に関する裁判例を見てみましょう。

ヤンマー事件(中労委平成22年11月10日・労判1016号94頁)

【事案の概要】

Y社は、平成20年8月、工場で就労しいていた派遣労働者に対し、希望者を「期間従業員」として直接雇用すると説明し、具体的労働条件および入社手続に関する資料を配付した。

Y社とX組合は、直接雇用に関する団交を開催し、入社手続書類の1つである誓約書問題等を話し合った。

X組合は、期間従業員就業規則(案)および誓約書等を協議事項とする本件団交申入れを行ったが、Y社は、就業規則については説明する用意がある旨および団交は前回の団交で説明回答しているので応じられないと回答した。

X組合の組合員全員が労働条件契約書とともに誓約書をY社に提出し、Y社は、同人らを直接雇用した。

X組合は、就業規則および誓約書等を協議事項とする団交を申し入れ、団交が開催された。

その後、Y社は、3回、団交に応じている。

X組合は、Y社が2回目の団交を拒否したことは不当労働行為にあたると主張し、争った。

【労働委員会の判断】

2回目の団交を拒否したことは不当労働行為にあたるが、その後の事情変更により救済利益は失われた。

【命令のポイント】

1 労組法7条は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進するために、労働者が自主的に労働組合を組織し、使用者と労働者の関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること、その他の団体行動を行うことを助成しようとする労組法の理念に反する使用者の一定の行為を禁止するものである。
したがって、同条にいう「使用者」とは、同法が上記のような助成しようとする団体交渉を中心とした集団的労使関係の一方当事者としての使用者を意味するものであって、雇用契約上の雇用主が基本的にこれに該当するものの、必ずしもこの者だけに限定されるものではない。雇用主以外の者であっても、当該労働者との間に、近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存する者は雇用主と同視できる関係にあり、同条にいう「使用者」に該当すると解するのが相当である

2 そうすると、本件団交申入れが行われた平成20年9月の時点においては、会社は、組合の組合員との関係において、近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存する者として、雇用主と同視できる関係にあり、労組法7条の「使用者」に該当するというべきである。

3 確かに、Y社は、本件団交を除けば、組合から求められた団体交渉には全てそれなりに誠実に応じており、また、本件団交申入れに対しても、それなりの誠実性が認められる回答をしている。これらの事実関係を併せ考えると、Y社が本件団交申入れに応じなかったことに正当な理由がなかったと断定するには、ためらいを覚えるが、Y社が本件団交申入れに応じなかったことに正当な理由がなかったといわざるを得ない

4 Y社が本件団交申入れに応じなかったことに正当な理由がないといわざるを得ず労組法7条2号の不当労働行為が成立するとしても、上記のような事実経過や上記内容の第5回団体交渉が実施されたことによって、本件団交要求の目的となっていた事項につき、組合の影響力を行使する機会を与えられたと認めるのが相当である。したがって、本件について救済の利益は存しないというべきである

結論は妥当であると考えます。

この命令では、労組法上の「使用者」性について、規範を上げ、認定しています。

労基法上の「使用者」と異なるので、注意しましょう。

また、Y社は、かなり誠実に団体交渉に応じていました。

その中で、一度、団体交渉を拒否したことが不当労働行為と認定されたことは、参考になります。

さらに、参考にすべきなのが、不当労働行為性は肯定されながら、「救済の利益」がないと判断された点です。

会社側としては、多いに参考にすべき点ですね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。