不当労働行為9(日本工業出版事件)

おはようございます。

さて、今日は、昇進・昇格と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

日本工業出版事件(大阪府労委平成22年11月15日・労判1016号93頁)

【事案の概要】

Y社は、従業員50名をもって技術雑誌、図書の出版を行っている会社である。

X組合の組合員中Y社の従業員は、Aのみである。

平成7年4月に営業職として入社したAは、Y社大阪営業所において、会社の発行する雑誌および書籍への広告スポンサーを獲得することや雑誌および書籍を販売する業務に従事している。

平成20年4月、Y社は、平成10年4月に入社し、大阪営業所に勤務しているBを主任に昇格させたが、Aを主任に昇格させなかった。

X組合は、Aを主任に昇格させなかったことが不当労働行為にあたると主張し争った。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない。

【命令のポイント】

1 Y社における昇格制度について、Y社は、(1)業務の必要性及び業務内容等に応じ、従業員の職務遂行の応力を基準にして、当該役職に必要な資質及び適性のある従業員の昇格を、取締役会で協議の上、決定、任命していること、(2)勤務成績、やる気、向上心、協調性、コミュニケーション能力等を総合的に勘案し、昇格を決定する能力主義で運用していること、(3)営業職の評価において、営業成績の中でもとりわけ新規受注額を最も重視して評価を行っていること、が認められ、Y社における昇格制度自体、合理性が認められる

2 Y社が営業成績の中でも特に重視して評価を行っている新規受注額においても、A組合員はB主任の約4分の1以下と、極端に低いのであるから、平成18年度及び同19年度におけるA組合員の営業成績、営業活動を通しての会社への貢献度がB主任よりも高かったということはできない

3 Y社が、組合を嫌悪した結果、会社の裁量の範囲を逸脱して、A組合員を主任に消火買うさせなかったと認めることはできず、平成20年4月に、Y社がA組合員を主任に昇格させなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱いであるとはいえない。

結論は妥当であると考えます。

組合が、本件のようなケースを不当労働行為として争うのであれば、せめてAとBの営業成績が拮抗してほしいところです。

会社としては、合理的な裁量の範囲で、人事権を行使すれば足り、それ以上でもそれ以下でもありません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。