Daily Archives: 2011年5月12日

賃金30(中谷倉庫事件)

おはようございます。

さて、今日は、取引先の倒産に伴う退職金減額に関する裁判例を見てみましょう。

中谷倉庫事件(大阪地裁平成19年4月19日・労判948号50頁)

【事案の概要】

Y社は、貨物自動車運送業や倉庫業を営む会社である。

Y社は、平成14年5月、年間売上げの3分の2を占める取引先2社が倒産したことから、連鎖倒産を回避するため、企業年金の解約、賃貸倉庫の閉鎖、土地の売却、取締役らの報酬減額、人件費削減の措置を講ずることとした。

Y社は、人件費削減の一環として、平成16年10月、退職金規程を改定し、退職金額をほぼ半額とすることとした。

これに対し、平成17年8月にY社を定年退職したXは、本件退職金規程の改定は無効であると主張し、旧規程と新規程との差額にあたる退職金を支払うように求めた。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 賃金、退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の変更については、当該条項が、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容できるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において、その効力を生ずるものというべきである。

2 そして、上記合理性の有無は、使用者側の就業規則変更の必要性の内容・程度、就業規則の変更により労働者が被る不利益の程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経緯等を総合考慮して判断すべきである。

3 Y社は、必ずしも経営状態が良好とはいえなかったところ、平成14年5月、売上高の3分の2を占める大口取引先が倒産し、売上が激減することとなった結果、経営規模を大幅に縮小し、生き残りをかけ、倒産回避のための措置を講じた。

4 退職金が給与の後払い的性格を有することを考えると、その減額の程度は大きい。しかし、Y社としては、今後、安定した経常利益を計上できる状態にあるとはいいがたく、本件改定を認めなかった場合の上記負担はY社の経営を圧迫することが予想され、倒産の危険も存し、本件改定はやむを得ないと言わざるを得ない

5 Y社は、労働者の過半数で組織する企業内組合の同意を得た。また、Xが所属する上記企業内組合とは別の労働組合に対し、何度も交渉を申し入れたが、同組合はこれに応じようとしなかった。

ここまでしっかりやれば、退職金規程の不利益変更も有効と判断されます。

会社として倒産回避のために必要な措置をとったが、それでもなお、従業員の賃金や退職金を減額しなければならない状況であったということがよくわかります。

不利益変更事案は、合理性の判断がいつも悩ましいですね。顧問弁護士と相談しながら慎重に進めましょう。