不当労働行為6(小堀不動産管理事件)

おはようございます。

さて、今日は、廃業後の別会社への雇用約束と不当労働行為に関する裁判例を見てみましょう。

小堀不動産管理事件(滋賀県労委平成23年1月28日・労判1020号93頁)

【事案の概要】

Y社は、平成21年3月当時、従業員3名をもって不動産の仲介および管理を行っていた。

Xは、平成16年2月にY社に採用され、平成19年4月、管理職ユニオン・関西(組合員約350名)に加入した。

平成21年1月、Y社の専務は、全従業員に対して会社を廃業すると告げ、全従業員に3月31日をもって解雇する旨通知し、同日、全従業員を解雇し、その後まもなく事業を廃止、解散登記をした。

なお、同年3月、Y社の専務は、従業員から「会社がつぶれたらどうなるのか」と尋ねられて、「Z社(Y社の社長が代表取締役をしているマンションの管理運営を行っている株式会社)で雇ってもらえるように社長に言うてみる」旨回答したが、その後、Z社での雇用は、社長の了解が得られなかったと伝えた。

労働組合は、経営悪化を理由に会社を廃業し、これに伴って組合員であるXを解雇したことが不当労働行為にあたると主張した。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない。

【命令のポイント】

1 Y社と申立組合とがさほど険悪な関係にもなっていない状況で、申立組合を排除するため、あるいはXが組合員であることを嫌悪してこれを排除するため、Y社が廃業という究極の手段を取ろうとすることは考えられない

2 専務が従業員らにZ社での雇用の話をしたとしても、同社の社長の承認がないままに明確な雇用の約束をしたとは考えられず、せいぜいが同社での雇用についての検討をする程度での話があったと認めるのが相当であり、それも結局は社長の同意が得られずに、Xを含めて従業員全員が解雇されて、同社に雇用はされなかったのであるから、Xが不利益取扱を受けたということはできず、さらにこれだけでY社の申立組合あるいは組合員排除の意思を推認することもできない

結論は妥当だと思います。

この事案で、不当労働行為に当たると判断することはかなり無理があります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。