不当労働行為7(戸田工業事件)

おはようございます。

さて、今日は、労働協約の解約と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

戸田工業事件(山口県労委平成22年12月9日・労判1018号94頁)

【事案の概要】

Y社は、従業員約400名をもって機能性顔料事業等を営んでいる会社である。

Y社は、昭和49年、X組合との間で「社会保険料の労使負担割合を35対65とする内容の労働協約」
を締結し、労使折半を超えて社会保険料の15%をY社が補助する取扱いを全従業員に適用してきた。

平成21年3月、Y社は、X組合に対し、業績悪化を理由に本件補助を廃止し、労使負担割合を法定どおりの折半とする(手取給与は月平均1万5000円減)旨および代替措置として賞与に年間0.4か月を上乗せする(手取給与は月平均1万1000円減)旨提案した。

その後の交渉の中で、Y社は、廃止時期を先送りし、家族手当1000円の増額および保険手当(本件補助の25%相当額)の新設という代替措置(手取給与は月平均1万円減)を提案した。

これに対し、X組合は、本件補助の廃止提案の撤回を求め、本件補助の代償としては100%の別手当を要求して対立した。

その後、Y社は、給与規定の改定により本件補助の廃止を実施しようとしたところ、X組合から労働協約に違反する給与規定の改定は許されないと指摘されたことを受けて、労働協約の解約を予告した。

【労働委員会の判断】

労働協約の解約は不当労働行為にあたらない。

【命令のポイント】

1 Y社が平成21年3月に本件補助の廃止提案をした背景には、・・・平成20年度下期以降、会社の業績が急激に悪化したことに伴い、諸施策を実施していたこと、また、一般正規従業員を除いた、定年後再雇用社員、役員、執行役員及び管理職については、平成18年度以降、順次、本件補助を先行廃止していたという客観的事実が認められる

2 これらの事実からすると、経営状況の悪化に伴い、経営改善に向けた諸施策を実施して、さらなる労務費の適正化に努めていた会社が、一般正規従業員の本件補助の廃止提案をしたことには、それ相当の必要性があったと認められる。

3 Y社は、一連の労使協議の中で、順次、譲歩案を提示していったことが認められる。これに対してX組合は、本件補助の100%を別手当で支給することを求め続けたのであり、X組合が譲歩案を検討することについて言及したとはいえ、譲歩案を提示した事実はない

4 Y社は、本件労働協約の解約に先立って、社会保険事務所及び協会けんぽの担当者から、本件補助は法の趣旨に反するもので好ましくないという改善指導を重ねて受けていた。Y社はそれを是正すべく、平成21年10月から、本件補助の廃止及び会社提案による代償措置の運用を開始することを目的として、就業規則変更の手続きに移行したものであるが、その時点で、X組合の意見書により本件労働協約の存在を認識したのであるから、労働組合法第15条第3項及び第4項の規定に従ってその是正を急いだとの事情は理解できる

5 以上のとおり、Y社による本件労働協約の解約自体は、直接支配介入行為に該当するものとすることはできず、Y社が支配介入を行ったとするX組合の主張は採用できない。したがって、Y社の対応は、不当労働行為には該当しない。

妥当な結論だと思います。

会社が、代償措置として、かなりの譲歩案を提示している一方で、組合側が譲歩の姿勢をほとんど示していないことから、このような結論になりました。

なお、労働組合法15条3項、4項は以下のような規定です。

労働組合法15条(労働協約の期間)
3項 有効期間の定がない労働協約は、当事者の一方が、署名し、又は記名押印した文書によって相手方に予告して、解約することができる。一定の期間の経過後も期限を定めず効力を存続する旨の定があるものについて、その期間の経過後も、同様とする。

4項 前項の予告は、解約しようとする日の少くとも90日前にしなければならない。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。