Daily Archives: 2011年12月13日

労災50(マルカキカイ事件)

おはようございます

昨日は、社労士勉強会の後、プチ忘年会をしました。

社労士の先生が1人新しく増えました! 興味のある社労士の先生方のご参加、歓迎いたします!

次回は、2月初旬です。テーマは、不当労働行為についてです。

今日は、午前中は、刑事裁判が入っています。

お昼は弁護士会で支部総会。

午後は、もう1つ、刑事裁判です。こちらは、恐喝未遂の否認事件の第2回証人尋問です。

準備は万全です!! 今回もどこまで証言の信用性を崩せるかがポイントです。

裁判終了後、事務所で新規相談が1件入っています。

夜は、弁護士M先生と税理士K山先生と忘年会です

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は、執行役員部長の出張中の死亡と労災保険法上の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

マルカキカイ事件(東京地裁平成23年5月19日・労判1034号62頁)

【事案の概要】

Y社は、各種産業機械や建設機械の卸販売を業とする会社である。

Xは、昭和40年にY社に入社し、業務に従事していた者である。

平成10年12月、XはY社の理事に就任したが、この際、Y社はXが一般従業員を退職したとして取り扱い、退職金を支払っている。12年2月にXはY社の理事を退任して取締役に就任した。

13年12月、Y社において執行役員制度が導入されたことに伴い、Xは執行役員に就任した。

Xは、平成17年2月、商談のため福島県へ出張した。その際、橋出血(大脳と小脳を連絡する部位である「橋」での出血)により死亡した(当時62歳)。

Xの妻は、Xの死亡は業務(過重労働)に起因するものであるとして、労災保険法に基づく遺族補償給付等の請求をした。

これに対し、労基署長は、Xは労基法9条に該当する労働者とは認められないとして不支給とする決定をした。

【裁判所の判断】

船橋労基署長による遺族補償給付等不支給処分は違法である。
→Xの労働者性を肯定

【判例のポイント】

1 労災保険法上の労働者とは、(1)使用者の指揮監督の下において労務を提供し、(2)使用者から労務に対する対償としての報酬が支払われる者をいうと解すべきであり、これに該当するかどうかは、実態に即して実質的に判断するのが相当である。

2 ・・・以上によれば、Xは、一般従業員であったときから、理事に就任し、次いで取締役に就任し、更に執行役員に就任したという一連の経過を通じて、その間に役職の異動はあったものの、船橋営業所を拠点として、一貫して、建設機械部門における一般従業員の管理職が行う営業・販売業務に従事してきたものであり、その業務実態に質的な変化はなかったものということができる

本件では、Xの労働者性を否定する事情がいくつもある中で、業務実態に質的な変化がなかったことを重視し、労働者性を肯定しています。

なお、原告の主張の中でも述べられている「執行役員」の位置付けですが、

執行役員については『業務執行に関しては相当の裁量権限を有するもの、法的には会社の機関ではなく、一種の重要な使用人(会社法362条4項3号)である。会社との契約が雇用契約か委任契約かの点については、通常は前者である』(江頭憲治郎「株式会社法(第3版)」380頁)、「会社法上は特に規定がない『執行役員』については『労働者』といえる場合が多いと考えられる。」(菅野和夫「労働法(第9版)」96頁)などと説明されており、執行役員を労働者と考えるのが、学者や実務家の一般的解釈であった。

ということです。

執行「役員」だから労基法上の「労働者」ではないという考えは、捨てましょう。