労働災害57(富国生命・いじめ)事件

おはようございます
__←先日、久しぶりに「アンアン」のピザをテイクアウトして、事務所で食べました

さすがに一人で2枚は食べられません。休日出勤をしていたスタッフと一緒に食べました。

具がてんこもりです。 やみつきになりますね。

今日は、午前中は、顧問先会社の打合せが入っています。

お昼は支部総会に参加します。

午後は、建物明渡しの裁判が1件、新規相談が1件、裁判の打合せが2件入っています。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は、いじめ・嫌がらせによるうつ病発症・休業と業務起因性に関する裁判例を見てみましょう。

富国生命・いじめ事件(鳥取地裁平成24年7月6日・労判1058号39頁)

【事案の概要】

本件は、Y社において営業職のマネージャーとして勤務していたXが、Y社鳥取支社長であったA及び鳥取支社米子営所長であったBの、逆恨みによるいじめ、嫌がらせにより、過重な心理的負荷を受け精神疾患(ストレス性うつ病)を発症し、3週間にわたり休業に追い込まれたとして、鳥取労基署長に対して労災保険法による休業補償給付を各休業期間について請求したところ、処分行政庁がそれぞれの期間ともに不支給処分を行ったことから、それぞれ不支給処分には、Xの罹患した精神疾患を業務に起因するものではないと誤って判断した違法があるとして、同処分の取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

鳥取労基署長による休業補償給付不支給処分は違法である。
→業務起因性肯定

【判例のポイント】

1 相当因果関係の判断基準である、当該業務自体が、社会通念上、当該基礎疾患を発症させる一定以上の危険性の有無については、職場における地位や年齢、経験等が類似する者で、通常の勤務に就くことが期待されている平均的労働者を基準とするのが相当である。
そして、労働者の中には、一定の素因や脆弱性を有しながらも、特段の治療や勤務権限を要せず通常の勤務に就いている者も少なからずおり、これらの者も含めて業務が遂行されている実態に照らすと、上記の「通常の勤務に就くことが期待されている平均的労働者」とは、完全な健常者のみならず、一定の素因や脆弱性を抱えながらも勤務の軽減を要せず通常の勤務に就き得る者を含むと解することが相当である。
そこで、当該業務が精神疾患を発症ないし増悪させる可能性のある危険性ないし負荷を有するかどうかの判断に当たっては、当該労働者の置かれた立場や状況、性格、能力等を十分に考慮する必要があり、このことは業務の危険性についていわゆる平均的労働者基準説を採用することと矛盾するものではない。

2 被告は、精神障害の業務起因性は、判断指針及び認定基準に基づいて行われるべきであると主張する。
しかしながら、判断指針及び認定基準は、各分野の専門家による専門検討会報告書に基づき、医学的知見に沿って作成されたもので、一定の合理性があることは認められるものの、精神障害に関しては、生物学的・生理学的検査等によって安定できるものではなく、診断に当たっては幅のある判断に加えて行うことが必要であり、あたかも四則演算のようなある意味での形式的思考によって、当該労働者が置かれた具体的な立場や状況等を十分斟酌して適正に心理的負荷の強度を評価するに足りるだけの明確な基準となっているとするには、いまだ十分とはいえない
したがって、精神障害の業務起因性を判断するための一つの参考資料にとどまるものというべきである

3 Xは、平成15年2月初旬から本件発症に至る同年7月末の終わりまでの間に、上司とのやり取り、それによって生じた軋轢、感情的対立及び自己を巡る環境の変化から精神的負荷を蓄積させていったことになり、また、この間においてXに蓄積していた精神的負荷は、平均人の立場から見ても非常に強いものだったと解される。そして、Xの症状が、一連の出来事によるXの精神的負荷の蓄積に併せて、前記のとおり悪化し、その強い精神的負荷は、仕事や職場において得てして見られる上司と部下の関わり、人間関係に端を発し、営業成績や職場環境によって醸成されたものであることからすれば、社会通念上、Xの精神的負荷は業務の遂行により発生し、しかも、その発症は発症すべくして発症したものというべきであり、Xの精神的負荷は、客観的にみてストレス性うつ病を発症させる程度に過重であったと認めるのが相当である。
したがって、本件では、社会通念上、Xの業務に内在ないし随伴する危険の現実化として、本件発症に至ったものということができるから、本件発症との間には相当因果関係が存在する。

上記判例のポイント2は、判断それ自体には特に目新しいさはありませんが、言い回しは参考になりますね。