Daily Archives: 2013年3月25日

有期労働契約37(本田技研工業事件)

おはようございます。

さて、今日は、不更新条項を有効として雇止めを認めた原判決を相当とした裁判例を見てみましょう。

本田技研工業事件(東京高裁平成24年9月20日・労経速2162号3頁)

【事案の概要】

Y社は、四輪車、二輪車、耕うん機等の製造・販売等を目的とする会社である。

Xは、平成9年12月、期間契約社員としてY社に入社し、パワートレイン加工モジュールに所属して業務に従事した。

Xは、それ以降も、同業務に従事し、Y社との間で有期雇用契約の締結と契約期間満了・退職を繰り返してきたところ、平成20年12月末、1年間の有期雇用契約が満了したとしてY社から雇用契約の更新を拒絶された。

原審は、Y社のXに対する雇止めを有効と判断した。

そのため、Xは、控訴した。

【裁判所の判断】

控訴棄却
→雇止めは有効

【判例のポイント】

1 Xは、平成20年11月28日、勤務シフト別に期間契約社員に対して開催された説明会に出席し、栃木製作所においては、部品減算に対応した経営努力(モジュール間の配置換え等)だけでは余剰労働力を吸収しきれず、そのため、期間契約社員を全員雇止めにせざるを得ないこと等について説明を受けたこと、Xは上記の説明を理解し、もはや期間契約社員の雇止めは回避し難くやむを得ないものとして受け入れたこと、Xは、本件雇用契約書と同じ契約書式にはそれを明確にするための雇止めを予定した不更新条項が盛り込まれており、また、その雇止めが、従前のような契約期間の満了、退職と空白期間経過後の再入社という形が想定される雇止めではなく、そのようなことが想定されず、再入社が期待できない、これまでとは全く趣旨を異にする雇止めであると十分理解して任意に同契約書に署名したが、その時点で印鑑を持参していなかったために拇印を押してY社に提出したこと、以上の各事実が認められることは引用に係る原判決認定事実のとおりであり、Xは、本件雇用契約は、従前と異なって更新されないことを真に理解して契約を締結したことが認められる

2 従前は更新があり得る内容の有期雇用契約を締結していた労働者が、不更新条項が付された有期雇用契約を締結する際には、不更新条項に合意しなければ有期雇用契約が締結できない立場に置かれる一方、契約を締結した場合には、次回以降の更新がされない立場に置かれるという意味で、いわば二者択一の立場に置かれることから、半ば強制的に自由な意思に基づかずに有期雇用契約を締結する場合も考えられ、このような具体的な事情が認められれば、不更新条項の効力が意思表示の瑕疵等により否定されることもあり得る(Xがその主張において引用する裁判例は、このような具体的な事情が認められた事例であるとも考えられる。)。
しかしながら、不更新条項を含む経緯や契約締結後の言動等も併せ考慮して、労働者が次回は更新されないことを真に理解して契約を締結した場合には、雇用継続に対する合理的期待を放棄したものであり、不更新条項の効力を否定すべき理由はないから、解雇に関する法理の類推を否定すべきである

先日の社労士勉強会でも取り上げた裁判例です。

第1審判決についてはこちらをご参照下さい。

労働契約法が改正され、5年ルールが新たに誕生しました。

施行はまだ先ですが、今から取り組むべき内容であることは、労務管理をかじっている人であれば誰でも知っていることです。

今後、この5年ルールとの関係で、雇止めに関する訴訟が相当数提起されることは間違いないことです。

現実には、裁判例の集積を待っている時間はないので、適切だと考える対策を各企業で実施する必要があります。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。