賃金68(八千代交通事件)

おはようございます。

さて、今日は、無効な解雇により就労できなかった期間は、年休取得要件である「全労働日」に算入され、かつ、出勤した日として扱うのが相当であるとした原審を維持した最高裁判例を見てみましょう。

八千代交通事件(最高裁平成25年6月6日・労経速2186号3頁)

【事案の概要】

本件は、解雇により2年余にわたり就労を拒まれたXが、解雇が無効であると主張してY社を相手に労働契約上の権利を有することの確認等を求める訴えを提起し、その勝訴判決が確定して復職した後に、合計5日間の労働日につき年次有給休暇の時季に係る請求をして就労しなかったところ、労働基準法39条2項所定の年次有給休暇権の成立要件を満たさないとして上記5日分の賃金を支払われなかったため、Y社を相手に、年次有給休暇権を有することの確認並びに上記未払賃金及び遅延損害金の支払を求める事案である。

法39条1項及び2項は、雇入れの日から6か月の継続勤務期間又はその後の各1年ごとの継続勤務期間において全労働日の8割以上出勤した労働者に対して翌年度に所定日数の有給休暇を与えなければならない旨定めており、本件では、Xが請求の前年度においてこの年次有給休暇権の成立要件を満たしているか否かが争われた。

一審および二審ともにXの主張を認めたため、Y社が上告した。

【裁判所の判断】

上告棄却

【判例のポイント】

1 法39条1項及び2項における前年度の全労働日に係る出勤率が8割以上であることという年次有給休暇権の成立要件は、法の制定時の状況等を踏まえ、労働者の責めに帰すべき事由による欠勤率が特に高い者をその対象から除外する趣旨で定められたものと解される。このような同条1項及び2項の規定の趣旨に照らすと、前年度の総暦日の中で、就業規則や労働協約等に定められた休日以外の不就労日のうち、労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえないものは、不可抗力や使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日等のように当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でなく全労働日から除かされるべきものは別として、上記出勤率の算定に当たっては、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものと解するのが相当である

2 無効な解雇の場合のように労働者が使用者から正当な理由無く就労を拒まれたために就労することができなかった日は、労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえない不就労日であり、このような日は使用者の責めに帰すべき事由による不就労日であっても当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でなく全労働日から除かれるべきものとはいえないから、法39条1項及び2項における出勤率の算定に当たっては、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものというべきである。

異論はないと思います。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。