Daily Archives: 2014年12月5日

賃金84(日本テレビ放送網事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、傷病欠勤者の復職拒否を相当として、復職を前提とした賃金請求を認めなかった裁判例を見てみましょう。

日本テレビ放送網事件(東京地裁平成26年5月13日・労経速2220号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社を傷病欠勤等していたXが、Y社に復職の申出をしたところY社からこれを拒否されたことにつき、復職拒否は正当な理由がなく、Xは復職を前提とした賃金請求権を有する旨主張して、Y社に対し、雇用契約に基づき、復職可能時から支払われるべき賃金等の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、平成22年9月10日又は、同年10月26日の時点で、復職可能であったと主張するが、Y社がXの主治医に対し、文書で治療経過や症状等にかかる意見を照会したところ、平成22年10月15日付け文書回答では「今後も職場における対人関係が休職前と同様である場合には、再度症状の悪化を招く可能性があり、その点に対する配慮が必要」と記載されていたこと、Xの状態は、平成23年において、人事局員と会うのではないかと緊張して吐いてしまうなどの状態であったこと、これらの状況を踏まえ、産業医は復職可能という判断はできないとの意見であったこと、他方、Xは人事局及びビデオラウンジへのリハビリ出勤を恣意的、客観性を欠くとして拒否し続けたことなどの事実関係によれば、Y社が、Xの主治医であるD医師の意見につき、現状のままXをビデオラウンジに職場復帰させると再度症状の悪化を招く可能性があると理解したこと、その後も、Xが人事局及び原職場のリハビリ出社を経るまで、Xの休職事由が消滅したと判断できないと考えたことは、いずれも相当というべきであり、Xの復職を認めなかったことにつき、Y社に責めに帰すべき事由は認められない

2 Xは、平成23年4月11日までに復職プログラムを履践したから、平成23年4月12日以降、Y社がXの提供する労務の受領を拒絶したことには正当な理由がないと主張するが、Y社の復職プログラムでは、会社のメンタルヘルス不調者の職場復帰の可否判断について、三段階(診療所、人事局、原職)のリハビリ出勤を経る運用をしているところ、Xは、第一段階の社内診療所へのリハビリ勤務を平成23年1月5日から同年4月14日まで行ったものの、毎日社内で7時間、8時間を過ごすのはつらいなどの理由で、週2回約1時間程度社内診療所に滞在することとしてしまい、人事局、原職場へのリハビリ勤務へ進もうとしなかったこと、それまでの診療所へのリハビリ出勤において、人事局員と会うのではないかと緊張して吐いてしまうという状態であり、産業医であるE医師としては、復職した状況に近いかたちで人事局及び原職場へのリハビリ出勤をしてみないと、復職可能という判断はできないという意見であったという事情からすると、平成23年4月12日の時点では、Xが復職可能であったとは認められず、同日以降、Y社がXの提供する労務の受領を拒絶したことに正当な理由はないとは認められない。

3 以上のとおり、Xに対するY社の復職拒否はいずれも相当であって、Xの就労不能はY社の責めに帰すべき事由によるものとは認められずXの復職を前提とした賃金請求権は認められない。

復職拒否をし、退職処分をする場合、会社としては、どの程度の対応をしたらよいのかは悩ましいところです。

会社としては、今回のケースの中で、主治医に対し、意見照会をする等の対応は、参考にしてください。

また、リハビリ出社自体は、法的な義務ではありませんが、仮に復職プログラムを策定し、運用していこうと考える場合には、どのようなプログラムにしたらよいか、顧問弁護士や顧問社労士に相談してみてください。