有期労働契約53(東京医科歯科大学事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、期間の定めのある大学の助教の雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

東京医科歯科大学事件(東京地裁平成26年7月29日・労経速2227号28頁)

【事案の概要】

Xは、Y社が設置する東京医科歯科大学の助教として、期間を定めてY社に雇用されていたが、雇止めされた。本件は、Xが、本件雇止めに効力がないと主張し、Y社に対し、地位確認と雇止め後の月例賃金及び期末手当の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 任期のある助教にも、定年の定めのある職員就業規則が適用され、採用の日から35年以内の期間支給される初任給調整手当の定めのある職員給与規則が適用されることに加え、本件大学の大学院医歯学総合研究科(歯学系)においては平成25年3月に任期が終了する3年任期の助教で再任を希望した33名のうち30名が再任されたことからすれば、任期のある助教も継続した雇用が前提とされているものと認められる。そして、X自身、過去2回の再任を経ていることからすれば、Xには、更新の合理的期待が認められる。

2 教員任期に関する規則において、再任の可否を決定するに際しては業績審査を行うものとされており、原則として更新されるという期待までは認められない。再任の業績審査は、大学教員としての適格性の判断という性質上、本件大学の専門的裁量的な判断に委ねざるを得ないものであり、その判断過程に著しく不合理なものがない限り、雇止めの合理的理由が肯定されると解するのが相当である

3 再任の決定の判断過程は、分野長による評価が最も重要視されていることは双方当事者の主張から明らかである。
Xの分野長であるC教授は、Xの再任不適とした判断過程について、①Xに対して、本件基準①を満たす論文を作成するよう再三指導してきたが、Xは応えなかった、②分野長に着任してからさほど期間が経過しておらず、Xの再任を否定するような評価をするのは憚られたので業績評価表1及び理由書1を作成した、③D学部長からXのヒアリングの結果を伝えられ、その際受けた指摘が自己の考えと同じであったため、業績評価表2及び理由書2を提出し直したと、Y社の主張に沿う供述をする。
上記①から③については、次のとおり指摘ができる。まず、①については、XがC教授による度重なる指導にも全く応えなかったとすれば、理由書2にそのことが記載されているはずであるが、そのような記載はない。次に、②については、C教授が業績評価表1等を作成した平成24年10月は、同教授が分野長に就任してから1年が経過しており、Xの業績を評価する期間としては十分であったし、C教授自身の管理職としての評価が疑われるような安易な評価をしたというのも考え難い。そして、③については、D学部長自身、平成24年12月に研究業績の評価を2として、「引き続き、活躍を期待する」と記載した評価結果を通知しているのであって、同年11月に行われたヒアリングの結果で際に再任不適の評価をしたというD学部長の供述は信用できない

4 Y社が、一旦、Xを再任に適すると判断しながら、再任不適とした判断過程に合理性を認めるべき事情はなく、著しく不合理であったと認められる。したがって、本件雇止めには合理的理由を認めることができない。

再任の適否については大学側の専門的裁量的判断に委ねられているとしながらも、判断過程に「著しい」不合理があったと判断しました。

評価書1・理由書1と評価書2・理由書2との比較をしながら、判断過程の合理性を検討してくれています。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。