Monthly Archives: 5月 2017

本の紹介677 営業は絶対、謝るな!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
営業は絶対、謝るな! ―圧倒的に売れる「合理的な覚悟」 (知恵の森文庫 t な)

本当の営業のやり方を教えてくれています。

決して顧客に横柄な態度を取ることを薦めている本ではありません。

営業マンに限らず、参考になる本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

師と弟子の世界は、言葉で伝達して理解できるものは限られている。むしろ言葉にして『教えた』瞬間から、そのノウハウは単なる知識になってしまう。・・・あなたはそれが自分のものになるまで、上司のようにしゃべり、上司のように笑う。上司のようなしゃれを言い、上司のように歩く。」(247頁)

みなさんの周りにも、こういうことがとてもうまい人っていませんか?

そういう人って、上の人からかわいがられていませんか?

尊敬する人、目標とする人、メンターなど、真似をする対象を見つけたら、とことん真似をすべきです。

逆に真似をする対象の人が決して口に出さない言葉も絶対に口にしてはいけません。

「できない」「疲れた」「面倒くさい」・・・

こういう言葉を発した瞬間、負のオーラが出てしまうのです。

同様に、疲れるとため息を吐くのがくせになっている人も注意しましょう。

同じく負のオーラが出まくっていますので。

そんな人と誰が一緒にいたいと思うでしょうか。

解雇232 試用期間中の解雇の有効性はどのように判断される?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、問題点の改善の見込みが乏しく、試用期間中の解雇が有効とされた事例を見てみましょう。

まぐまぐ事件(東京地裁平成28年9月21日・労経速2305号13頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、試用期間中に留保解約権の行使により解雇されたところ、Y社に対し、本件解雇の無効を主張して、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、解雇後の未払賃金104万4395円+遅延損害金等を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ・・・このように、Xには上司の指導や指示に従わず、また上司の了解を得ることなく独断で行動に出るなど、協調性に欠ける点や、配慮を欠いた言動により取引先や同僚を困惑させることなどの問題点が認められ、それを改めるべくY社代表者が指導するも、その直後に再度上司の指示に素直に従わないといった行動に出ていることに加え、上記の問題点に対するXの認識が不十分で改善の見込みが乏しいと認められることなどを踏まえると、試用期間中の4月10日の時点において、Y社が「技能、資質、勤務態度(成績)若しくは健康状態等が劣り継続して雇用することが困難である」(就業規則15条3項)と判断して、Xを解雇したことはやむを得ないと認められ、本件解雇には、解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当というべきである。

2 これに対し、Xは、Y社がXに対する指導のために特命チームへの配属を予定していたのであれば、平成27年5月1日の配属予定を前倒ししてでも、Y社代表者がXを直接指導すべきであったなどとして、Y社が解雇回避努力義務を怠った旨主張する。
しかしながら、前記で説示したとおり、使用者が雇用契約に試用期間を設け解約権を留保する趣旨は、採用時には認識し得なかった労働者の資質、性格、能力その他の適格性を観察し、最終的な採否(本採用)を見極めるためのものであるから、試用期間中の留保解約権行使による解雇は、通常の解雇の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められ、Y社の負う解雇回避努力義務の程度も、通常の解雇の場合ほどには要求されないというべきである。
そして、3月20日の面談でY社代表者から他者との協調性について改めて指導されたにもかかわらず、Xがそのわずか4日後に上司のDからの指示を素直に受け入れず反抗的な態度を取っており、かかるXの非協調的な態度は改善の余地が乏しいと認めざるを得ないことに加え、XがY社入社までに約7年間の社会人経験を経ていることなどを踏まえると、試用期間完了時までXに対する指導を継続しなかったことをもって相当性を欠くとまではいえないから、Xの上記主張は採用できない。

勤務態度が悪いであったり、協調性がないなどという理由で解雇する場合には、裁判所に具体的にわかるように主張立証することがとても大切です。

訴訟の前の準備段階で8割がた勝負が決まっていると言っても過言ではありません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介676 お金をふやす8つの習慣(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
9割の日本人が知らない お金をふやす8つの習慣―――外資系金融マンが教える本当のお金の知識

著者はご自身の経験からストック収入の重要性を強く説いています。

お金を増やす王道ですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

みんなが同じ方向を向いて、人と違ったことはしないように教育されてきたのが私たち日本人です。だから人と違う行動を取ることは苦手です。しかし投資で人と同じことをやっていては稼ぐことはできません。」(177頁)

貧乏な人や怠け者は、成功する人より『できない』という言葉をよく使う。彼らが『できない』という言葉をよく使うのは、『できる』と言うより簡単だからだ。『それはできない』と言ってしまえば、たとえ本当はできても、やらなくてよくなるんだから」-ロバート・キヨサキ(190頁)

成功したいのであれば、人ができないこと、やらないことをやり続ける。

いろいろな表現はありますが、結局、この一文に尽きます。

たいして考えもせずにすぐに「できない」と言う人は、実際のところ、できるかどうかには関心がなく、単に「やりたくない」だけなのです。

やるのが面倒くさいのです。

でも、そうは言えないからがんばってできない理由を探しているだけなのです。

それがくせになってしまっているので、いざというときにふんばりがきかなくなるのです。

結局、いつもと同じように「できない理由探し」です。

成功したい人は、こういう人と一緒にいてはいけません。 伝染しますので。

不可能を可能にする人の近くでできるだけ時間を共有するようにしましょう。

有期労働契約71 貸与物の私的利用を理由とする雇止めの有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れ様でした。

来週一週間は出張のため、ブログはお休みいたします。

今日は、契約更新への期待と貸与物の私的利用による雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

大阪ガス・カスタマーリレーションズ事件(大阪地裁平成28年12月22日・労判ジャーナル61号11頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で、有期雇用契約を締結し、その後に更新を繰り返していた元従業員Xが、契約の更新がされなかったことについて、本件不更新は期間の定めがない労働契約における解雇と同視しうるものであるうえ、Xは契約の更新がされることに合理的な期待を有していたところ、本件不更新は合理的理由を欠き、社会通念上相当なものとは認められないとして、労働契約法19条に基づき、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認とそれを前提とした賃金の支払い等を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件では、XとY社の間では、契約更新の手続きが形式的なものであるとか、形骸化していたとまで認めることはできないから、有期雇用契約を終了させることが、期間の定めのない雇用契約を締結する労働者に対する解雇と同視できるとまでいうことはできず、労働契約法19条1号に該当するとは認められないが、他方において、雇用契約書に契約更新がありうる旨が記載され、すでに3度の更新がされていること、D事務所においては、過去に更新を希望しながら更新がされなかった者はいないこと等の事情を総合すれば、Xが契約期間の満了時に有期雇用契約が更新されることには、合理的な理由があると認められるから、労働契約法19条2号には該当する。

2 Xは、貸与バイクを私的に利用し、その頻度も少ないとはいえないうえ、その際には私的利用を含めてY社から貸与を受けた給油カードで給油をすることがあったものであり、さらには、私的利用が発覚しないようにするため、ドライブレコーダーからSDカードを抜き、隠蔽を図っていたほか、長期間にわたって走行カードに事実と異なる記載をしていたものであり、加えて、少なくとも1年以上の長期にわたって、勤務時間中にA診療所で業務を行っていたものであり、これらXの行為は、その内容や程度に照らせば軽微なものとはいえず、Y社との信頼関係を著しく損なうものといわざるを得ないこと等から、Y社が掲げる雇止め事由のうち、以上の各点のみをもってしても、Y社が本件雇用契約を締結しないとの判断に至ることは不合理とはいえず、本件雇止めが合理的理由を欠くとか、社会通念上の相当性を欠くと評価することはできない

有期雇用契約における雇止めに関する労働契約法19条については、まず1号・2号該当性が問題となります。

各号の判断のしかたについてはこれまでの裁判例を参考にして、トラブルを未然に回避できるように準備をすべきです。

1号、2号のいずれかに該当する場合には、解雇に関する労働契約法16条と同様に合理的理由と相当性の判断をすることになります。

1号と2号で判断の厳格さが異なるという見解もある(2号のほうが緩やか)ことに留意しましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介675 危険な二人(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
危険な二人 (幻冬舎文庫)

幻冬舎の見城社長とエイベックスの松浦社長の対談をまとめた本です。

このお二人、AbemaTVの「徹の部屋」でもその仲の良さがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

うちは新卒を採用してなくて、それでも毎年、東大とか京大とか早・慶とかの学生から応募があるんだけど、偏差値より大事なのは、人の気持ちをつかめる人間かどうかだと思ってる。編集者に限らず、仕事なんて自分の思ってることを人を動かして、どう実現できるかでしょ。そういう意味で、他者への想像力がある人は何をやっても結果を出せる。あと、自分に何かを課すことができて、バーを高く設定できる、っていうのも大事。」(145頁)

見城社長の言葉です。

全く同感です。

他者への想像力がある人とない人とでは、仕事のあらゆる点においてアプローチのしかたが異なります。

そもそもあらゆる仕事は他者への想像力が源になっているはずです。

こうしたらもっと顧客に喜んでもらえるんじゃないかと想像するところからあらゆるサービスが生まれるんじゃないでしょうか。

そうだとすれば、他者への細やかな配慮ができる人が仕事を結果を残すのは当然ですし、その逆もまたしかり。

一事が万事ですから、日々の小さな仕事で他者への想像力を発揮できない人がどうして大きな結果を出せるのでしょうか。

競業避止義務21 競業避止合意に基づく競業行為差止請求が棄却された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、競業避止合意に基づく競業行為差止等請求に関する裁判例を見てみましょう。

デジタルパワーステーション事件(東京地裁平成28年12月19日・労判ジャーナル61号21頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、元従業員Xらとの間の競業避止合意に基づき、同人らに対し、A社において使用人として稼働することの禁止を求めるとともに、上記合意における競業避止義務の不履行に基づき損害金約141万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、アダルトゲームのパッケージやキャラクターグッズの企画・製造・販売業という特殊な業界において、顧客であるゲームソフト会社との間で、受注生産しているところ、退職者に競業避止義務を負わせることにより、顧客や取引先、各種商品の仕様や製造単価などの内部情報の無断利用ないし流出を防ぎ、既存顧客を維持するなどの利益確保の必要性は認めることができ、また、Xらと顧客らとの間には強固な人的関係があり、Xらが退職後に競業行為を行うことにより、Y社に不利益が生じるおそれも大きいものと窺えるが、本件合意は、Xらに対し、退職後3年間という比較的長期にわたり、地域的な制限もなく、競合企業に雇用されたり、競合事業を起業したり、競業行為を行うこと、Y社の顧客と交渉したり、受注することを広範囲に禁止するものであり、Xらの職業選択又は営業の自由に対する制約が大きいにもかかわらず、これに対する代替措置は何ら講じられていないこと等から、本件合意は、合理的な制限の範囲を超えるものであり、Xらの職業選択又は営業の自由を不当に侵害するものであるから、公序良俗に反し無効である。

よく見かける競業避止に関する裁判例です。

この分野の裁判は、多くの場合、会社側に不利な結論で終わります。

納得はしづらいと思いますが、これが現実です。

訴訟の是非を含め、対応方法については事前に顧問弁護士に相談しましょう。

本の紹介674 ハードワーク(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
ハードワーク 勝つためのマインド・セッティング

ラグビー元日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズさんの本です。

エディーさんの目から見た日本・日本人の長所・短所が書かれています。

とても参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

日本人は、自分の長所に気付くことが、非常に不得手だと思います。そこへ内向きでシャイな資質が加わり、『どうせうまくいくはずがない』と、マイナス思考を凝り固まらせている人が、とても多いのではないでしょうか。『自分はどうせダメだ』というマイナス思考が、成功を阻んでいるのです。それを取り除きさえすれば、誰でも成功を手に入れることができます。」(5頁)

エディーさんが言うとおり、日本人には「どうせうまくいかない」と考える人がとても多いですよね。

どうしたら自信が持てるのでしょうか。

人よりも多くの時間、準備するしかないのではないでしょうか。

人と同じだけ休憩していて、それでいて自信を持つ方法を私は知りません。

なんとなくそれなりに生活できればいいというのなら、それでいいでしょうが、

結果を残したいと考えているのであれば、人よりもハードワークを続ける覚悟を持つ以外にないと思います。

従業員に対する損害賠償請求4 退職する際は3か月前に退職届を提出するとの合意は有効か?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間がんばりましょう。

今日は、退職する労働者への損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

美庵事件(大阪地裁平成28年12月13日・労判ジャーナル61号24頁)

【事案の概要】

本件は、エステティックサロンを営むY社が、Xに対し、就業規則では退職する際には3か月前に退職届を提出しなければならないとされているにもかかわらず、Xが同義務を履行せず、一方的に1週間後に退職する旨の退職届を提出し、引継ぎも行っていないことが債務不履行に該当する、あるいは、Y社とXとの間で退職時期に関する合意が成立したにもかかわらず、就業規則の定めに反して一方的に退職届を提出し、就労していないことが不法行為にも該当するとして、損害賠償を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 労働基準法の趣旨に照らせば、労働契約から離脱する自由を保障することで労働者の保護を図っているということができ、民法627条1項の期間については、使用者のために延長することはできないものと解するのが相当であり、退職する際には3か月前に退職届を提出しなければならないとする規定は無効である。

2 労働者の急な退職や病気等による欠勤という事態はいつでも生じ得る事態であり、様々な事態が生じても業務を遂行できる勤務シフトを設定することは使用者の権限であり責任でもあることからすれば、賃金カットがされることはともかく、労働者に損害賠償責任を負わせるためには、例外的な特段の事情があることが必要と解されるが、そのような特段の事情があるとは認められない。

民法627条1項では以下のとおり規定されています。

「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」

今回の裁判例では、この規定は強行法規だと解されています。

多くの会社の就業規則では、1か月前に退職届を提出しなければならない等と規定されていますが、この裁判例によれば、無効となってしまいます。

実務対応は、必ず顧問弁護士に相談をしながら行いましょう。

本の紹介673 ありえないレベルで人を大切にしたら23年連続黒字になった仕組み(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
ありえないレベルで人を大切にしたら23年連続黒字になった仕組み

10年以上離職率ほぼゼロという会社の社長が書いた本です。

離職率の高い会社というのは必ず理由があるのと同じように、離職率が低い会社というのにも必ず見習うべき理由があります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

赤字になるかどうかは、社長の意識の問題です。円高だから儲からない。中国が安い製品をつくるから儲からない。国の施策が悪いから儲からない。取引先に値切られたから儲からない・・・と、経営者が他責の発想になった時点で会社は赤字へ転落します。そして、社員も『社長が悪い、上司が悪い、取引先の担当者が悪い』と人のせいにして、努力をしなくなります。」(208頁)

先日のブログにも書きましたが、「他責」ではなく「自責」の意識を持つことが大切です。

結果・成果が出ないことを他人や環境や制度のせいにしてはいけません。

理由は、他でもなくダサいからです。

結果を出す人は、どんなに不景気だろうがどんなに競合が多かろうが、そんなこと関係なく結果を出しています。

結果が出ないのは不景気のせいでも競合が多いからでもありません。

顧客に選ばれるだけの価値を提供できていないからです。 ただそれだけです。

どれだけ不景気でも、どれだけ競争が激しくても、お客さんが並んでいるお店があるという現実を受け入れなければなりません。

セクハラ・パワハラ27 パワハラ事案で慰謝料400万円が認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、パワハラを理由とする損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

コンビニエース事件(東京地裁平成28年12月20日・労判1156号28頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の経営するコンビニ店舗で平成22年9月から平成23年12月26日までの間勤務していたXが、その勤務期間中に、Y社の代表者であったA及び前記店舗の店長であったBから、暴行、サービス残業の強要等のいじめ・パワーハラスメントを日常的に受けたと主張して、Y社らに対し、損害賠償等として3287万3765円+遅延損害金等の連帯支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社及びAは、Xに対し、連帯して930万4211円+遅延損害金を支払え

Bは、Xに対し、910万4211円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Xは、人とコミュニケーションをとるのが苦手であり、物事がうまくいかないとすぐ投げ出してしまうところもあって、本件3店舗でも、手順が悪かったり、仕事が遅かったりしたことがよくあったと認められ、このようなXに注意、指導をしようとしたのがきっかけになっていることもうかがわれるが、前記認定に係る事実は、いずれも適正な業務上の注意、指導の範疇を超え、暴力を伴うなど、相手方たるXに過度の心理的負荷を与えるものとして、いじめ・パワハラに当たり、不法行為を構成するというべきである。

2 本件では、1年数か月にわたっていじめ・パワハラが継続された上、その態様をみても、暴力的ないじめ・パワハラでは、身体に対する具体的な危険を伴うものがいくつもあり、右手の傷に関しては、具体的な後遺障害を認定するまでには至らず、後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料や休業損害を認めることはできないものの、その結果は軽視できないし、その他の部位に対する暴行も含めて、場合によっては重大な結果を生じかねなかったことは否定し得ないのであって、非常に悪質である。精神的・経済的ないじめ・パワハラでも、商品を買い取らせるなど、様々な方法で経済的負担を強要したりしており、非常に悪質である。かかるいじめ・パワハラにより、Xが身体的にも、精神的にも多大な苦痛を被ったことは明らかであって、このほかに、具体的な損害としては算定し難い事柄など、本件に顕れている諸事情を総合考慮すると、個別に認めたもののほかに、慰謝料として400万円を認めるのが相当である。

パワハラ事案としては、非常に高額な慰謝料が認められています。

態様を見るかぎり、刑事責任も問われる可能性が高い事例です。

通常問題となる指導とパワハラの区別のような限界事例とは程遠いケースです。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。