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解雇257 育休取得後の解雇は有効?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は育児休暇取得後の解雇が無効とされた裁判例を見てみましょう。

シュプリンガー・ジャパン事件(東京地裁平成29年7月3日・労経速2332号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、産前産後休暇及び育児休業を取得した後にY社がした解雇が男女雇用機会均等法9条3項及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律10条に違反し無効であるなどとして、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と、解雇された後の平成27年12月分以降の賃金+遅延損害金の支払を求めるとともに、Y社がXの育児休業後の復職の申出を拒んで退職を強要し、解雇を強行したことは、均等法9条3項及び育休法10条に違反し、不法行為を構成するとし、損害賠償金200万円及び弁護士費用20条+遅延損害金の支払を求めている事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

Y社はXに対し、55万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 結論において、事業主の主張する解雇理由が不十分であって、当該解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められなかった場合であっても、妊娠等と近接して行われたという一事をもって、当該解雇が妊娠等を理由として行われたものとみなしたり、そのように推認したりして、均等法及び育休法違反に当たるものとするのは相当とはいえない

2 このようにみてくると、事業主において、外形上、妊娠等以外の解雇事由を主張しているが、それが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないことを認識しており、あるいは、これを当然に認識すべき場合において、妊娠等と近接して解雇が行われたときは、均等法9条3項及び育休法10条と実質的に同一の規範に違反したものとみることができるから、このような解雇は、これらの各規定に反しており、少なくともその趣旨に反した違法なものと解するのが相当である。

3 Y社では、Xの問題行動に苦慮し、これへの対応として弁護士、社会保険労務士及び産業医に相談し、助言を受けていたというのであるが、助言の内容は、要するに、今後の原告の問題行動に対して、段階を踏んで注意を与え、軽い懲戒処分を重ねるなどして、Xの態度が改まらないときに初めて退職勧奨や解雇等に及ぶべきであるとするものであるが、第2回休業までの経過及びその後の経過をみる限り、こうした手順がふまれていたとは到底いえないところである。そして、その助言の内容に照らせば、Y社(その担当者)にあっては、第2回休業の終了後において直ちに、すなわち、復職を受け入れた上、その後の業務の遂行状況や勤務態度等を確認し、不良な点があれば注意・指導、場合によっては解雇以外の処分を行うなどして、改善の機会を与えることのないまま、解雇を敢行する場合、法律上の根拠を欠いたものとなることを十分に認識することができたものとみざるを得ない。

4 解雇が違法・無効な場合であっても、一般的には、地位確認請求と解雇時以降の賃金支払請求が認容され、その地位に基づく経済的損失が補てんされることにより、解雇に伴って通常生じる精神的苦痛は相当程度慰謝され、これとは別に精神的苦痛やその他無形の損害についての補てんを要する場合は少ないものと解される。
もっとも、本件においては、Xが第2回休業後の復職について協議を申し入れたところ、本来であれば、育休法や就業規則の定めに従い、Y社において、復職が円滑に行われるよう必要な措置を講じ、原則として、元の部署・職務に復帰させる責務を負っており、Xもそうした対応を合理的に期待すべき状況にありながら、Xは、特段の予告もないまま、およそ受け入れ難いような部署・職務を提示しつつ退職勧奨を受けており、Y社は、Xがこれに応じないことを受け、紛争調整委員会の勧告にも応じないまま、均等法及び育休法の規定にも反する解雇を敢行したという経過をたどっている。こうした経過に鑑みると、Xがその過程で大きな精神的苦痛を被ったことが見て取れ、賃金支払等によって精神的苦痛がおおむね慰謝されたものとみるのは相当でない

上記判例のポイント1、2は理解しておきましょう。

いずれもせよ、労働契約法16条の要件を満たすか否かが主戦場であることに変わりはありません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。