Daily Archives: 2018年6月15日

セクハラ・パワハラ40 セクハラを理由とする懲戒解雇と相当性要件(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、女子大教授のセクハラに基づく懲戒解雇に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人渡辺学園事件(東京地裁平成29年10月20日・労判ジャーナル73号28頁)

【事案の概要】

本件は、女子大学を経営する学校法人であるY社の男性である元教授Xが、女性職員や女子生徒に対して性的な発言等のセクシャル・ハラスメント等をしたことを懲戒事由として懲戒解雇されたことから、Y社に対し、本件懲戒解雇は懲戒事由の事実を欠き又は懲戒権を濫用したものとして無効であるなどと主張して、労働契約上の地位の確認、賃金、賞与、不当解雇による慰謝料300万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

賃金一部認容

賞与認容

慰謝料請求は棄却

【判例のポイント】

1 Y社が主張する懲戒事由のうち、懲戒事由に該当する行為の存在とハラスメントの該当性が認められるものは懲戒事由(10)(Xが、Aなど特定の女性職員に対する呼びかけやメールなどで、下の名前で呼び捨て、あるいは様付けで呼び、また「東方三美人」等と呼称したこと)のみであって、懲戒事由(1)から(9)まで及び(11)は行為の存在が認められないか又は行為があってもハラスメントに当たるとは認め難く、そして、懲戒事由(10)がそれほど悪質なものとはいえないこと、Xにこれまで懲戒処分歴はないことに照らすと、懲戒解雇は重きに失し、相当性が認められないから、本件懲戒解雇は無効である。

2 Y社と教職員組合の協議の結果、Y社の教職員の平成27年度賞与は、俸給を基にした一定の計算式で算出された額を支給され、以降の賞与も同程度であったと認められるから、Xは、Y社に対し、・・・の賞与支払請求権を有している。

3 懲戒処分された労働者が被る精神的損害は、当該懲戒処分が無効であることを確認され、懲戒処分中の賃金が支払われることにより慰謝されるのが通常であり、これによってもなお償えない特段の精神的損害を生じた事実が認められる時に初めて慰謝料請求権が発生するところ、Xには懲戒事由に該当する事実が存在することを考慮すると、本件において、上記特段の精神的苦痛を生じた事実は認められないから、Xの慰謝料請求は理由がない。

めずらしく賞与請求が認容されています。

それはさておき、上記判例のポイント1のように、たくさんのハラスメント行為を列挙しても、それらが違法性を有する程重大なものかを冷静に判断しなければなりません。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。