Daily Archives: 2019年7月26日

労働時間56 夜行バスの交代運転手が車内にいた時間は労働時間?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、夜行バスの交代運転手として車内にいた時間の労働時間性が争われた事案を見てみましょう。

K社事件(東京高裁平成30年8月29日・労経速2380号3頁)

【事案の概要】

本件は、XらがY社に対し、①労働契約に基づき、未払賃金+遅延損害金、②労働基準法114条に基づき、付加金+遅延損害金の各支払を求める事案である。

原審は、Xらの請求をいずれも棄却した。これに対し、Xらが控訴した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Y社において、交代運転手はリクライニングシートで仮眠できる状態であり、飲食することも可能であることは前記認定のとおりであって、不活動仮眠時間において労働から離れることが保障されている。Y社が休憩や仮眠を指示したことによって、労働契約上の役務の提供が義務付けられたとはいえないから、亡A及びDが不活動仮眠時間においてY社の指揮命令下に置かれていたものと評価することはできない。

2 交代運転手の職務の性質上、休憩する場所がバス車内であることはやむを得ないことであるし、その際に、制服の着用は義務付けられていたものの、Y社は制服の上着を脱ぐことを許容して、可能な限りXらがY社の指揮命令下から解放されるように配慮していたものである。そうすると、交代運転手の休憩する場所がバス車内に限られ、制服の着用を義務付けられていたことをもって、労働契約上の役務の提供が義務付けられていたということはできない。

3 ①亡A及びDが常務していたのは深夜夜行バスであり、車内は消灯して多くの乗客は入眠していること、②乗客に苦情や要望がある場合には、走行中の車内を歩いて交代運転手の席まで来るのではなく、サービスエリア等で停車している間に運転手又は交代運転手に伝えることが想定されていることは前記認定のとおりである。そうすると、交代運転手が不活動仮眠時間に乗客の苦情や要望に対する対応を余儀なくされることがあったとしても、それは例外的な事態であると考えられる。
また、交代運転手が不活動仮眠時間において道案内その他の運転手の補助を要する状況が生ずることを認めるに足りる的確な証拠はない。
これらの事情を総合すると、Y社における交代運転手の不活動仮眠時間は、労働からの解放が保障されているということができる。なお、上記のような例外的な事態が生ずる可能性があるけれども、その一事をもって、不活動仮眠時間についても交代運転手が乗客への対応等の業務を行うことを本来予定されている時間であるとはいえず、使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することもできない。

不活動仮眠時間については、大星ビル管理事件最高裁判決(最判平成14年2月28日)があります。

ドライバーの労働時間管理については、拘束時間が長いこともあり、いつも判断が悩ましいところです。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。