労働時間61 週6日、週所定労働時間48時間の労働契約はアリ?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、週6日・計48時間の労働契約の適法性と割増賃金の算定方法等に関する裁判例を見てみましょう。

しんわコンビ事件(横浜地裁令和元年6月27日・労判1216号38頁)

【事案の概要】

本件は、建築工事業等を業とする特例有限会社であるY社において就労していたXら5名が、Y社に対し、①未払の時間外割増賃金等+遅延損害金、②付加金+遅延損害金の各支払を求め、また、X1が、Y社に対し、③Y社がX1の健康保険料等を賃金から過剰に控除していたと主張して、主位的に未払賃金請求として、予備的に不法行為に基づく損害賠償請求として、過剰控除した金員の合計2万9378円+遅延損害金の各支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xらに対し、以下のとおりの金員を支払え。
1 X1:①460万8024円+遅延損害金、②付加金368万6154円+遅延損害金
2 X2:①106万6691円+遅延損害金、②付加金86万6538円+遅延損害金
3 X3:①208万4018円及び+遅延損害金、②付加金178万5775円+遅延損害金
4 X4:①212万8304円+遅延損害金、②付加金182万7817円+遅延損害金
5 X5:①138万1207円+遅延損害金、②付加金118万6189円+遅延損害金

【判例のポイント】

1 Y社における従業員の出退勤管理は、出勤簿に基づいてなされており、Xらは、原則として毎日これに出退勤時刻を記載し、毎月1回、X1を通じてY社に提出していたこと、Xらは日々の業務内容を、当該業務に従事した時間とともに、原則として毎日、日報に記載していたこと、この日報についても、X1を通じてY社に提出し、総務担当者やC、Bの決裁を得ていたことからすれば、出勤簿及び日報には、Xらの出退勤時刻が概ね正確に記載されているものと推認するのが相当である。
・・・Xらは、出勤簿について30分単位で出退勤時刻を記載していたのであるから、同じ時刻の記載が多く並んでいるからといって、何ら不自然ではなく,出勤簿等の記載内容の信用性を減殺するとはいえない。・・・Xら労働者の労働時間を管理する義務を負っているのは、使用者であるY社自身であることからすれば、およそ失当といわざるを得ない。その点は措くとしても、これらの出勤簿及び日報は、いずれもY社に提出され、毎日ではないにせよ、Y社側が決裁をした上で管理していたものであるところ、Y社からXらに対し、その記載内容に疑義があるなどの指摘をした等の事実も認められないことからすれば、これら出勤簿等の信用性がないとは到底いえない

2 XらとY社との間で締結された本件労働契約は、いずれも1日8時間、週6日勤務に対してその給与を月給制で支払うことを内容とするものであるところ、これは週48時間の勤務を所定労働時間とする点で、労基法32条1項に違反することが明らかである。そのため、本件労働契約の内容は、労基法13条、32条1項により、一週間当たりの所定労働時間を48時間と定める部分が無効となり、これが40時間(1日8時間、週5日勤務)へと修正されるものと解されるところ、月給制は原則として、月当たりの通常所定労働時間の労働への対価として当該金額が支払われる旨の合意であるから、Y社がXらに支払った月給は、上記のとおり労基法に従って修正された所定労働時間に対する対価として支払われたものと解するのが相当である。

3 Y社のXらに対する未払の割増賃金額は、最も少額であるX2についても確定遅延損害金を加えて100万円を超えており、最も高額であるX1については400万円にも上ること、Y社はXらとの間で、1日8時間,週6日勤務という明らかに労基法に違反した契約を締結させていることに加え、Y社においては就業規則や賃金規程が存在せず、Xらとの間でも労働契約書を作成していないこと、X1に対して健康保険料等を過剰に控除し、賃金の一部を支払っていなかったことからすれば、Y社は全体として労基法軽視の態度が著しく、賃金未払は悪質であるといわざるを得ない。したがって、Y社に対しては、各未払賃金計算書記載のとおりの付加金の支払を命じるのが相当である。

もはやどこから手をつけていいのかわからない状態です。

治外法権かのような状態ですので、いざ訴訟になるとこのような結果となってしまいます。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。