配転・出向・転籍42 退職勧奨と配転命令の関連性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、退職勧奨との関連性を否定され、配転命令が有効とされた裁判例を見てみましょう。

学校法人日本学園事件(東京地裁令和2年2月26日・労判1222号28頁)

【事案の概要】

本件は、学校法人であるY社との間で労働契約を締結したXが、Y社に対し、Y社がXに対してした、Y社の営繕部で勤務するよう命ずる配転命令は権利の濫用に当たり無効であるとして、Y社の営繕部で勤務する労働契約上の義務のないことの確認を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、Y社の支出を伴う行為の決裁権限が事務長にあること、消耗品等の発注について事務室で一元管理していること等を指摘し、営繕室での事務職員としての業務がない、事務室において対応が可能であるなどと主張する。しかし、本件学校に約600名の生徒がおり、日々本件学校の敷地内で学生生活を過ごしていること、本件学校の敷地内で学生生活を過ごしていること、本件学校の敷地が広いことなどからすれば、年間を通じて本件学校の設備等の改修、整備作業等が想定されるところ、作業自体の決裁権がないとしても、作業計画の立案、関係部署との調整を含む作業の進行管理等の業務は容易に想定されるところであるし、これを決裁権者自らが執り行うことは現実的ではない。また、支出の最終的な決裁権限が事務室に勤務する職員にあったとしても、現場における問題点や要望を把握するために、当該現場に責任ある職員を配置し、当該職員に現場の事務の改善を提案させたり、支出を申請させたりすることには十分合理性が認められるところである。そうすると、その他原告が指摘する諸点を考慮しても、Xに事務職員として営繕業務を担当させ、その勤務場所を営繕室とすることについて、なお業務上の必要性は否定し難く、Xの主張を採用することはできない。

2 E事務長は平成30年9月11日、Xに退職を勧めているが、これはXが教務室において本件学校に対する不満を口にしていたことが、他の職員の間で問題となっていたことをきっかけとするものであり、B前校長との関係を前提とした退職勧奨とはいえない。そして、同日において、Xが当該言動を否定し、退職する意思がないことを明らかにした後には、Y社からXに対し、退職を勧めた事実も認められないから、Xがその他主張するE事務長の言動を考慮しても、当該退職勧奨と本件配転命令との間に何らかの関係を認めることもできない。

配転命令については、不当な動機目的の不存在が配転の業務上の必要性の要件と表裏の関係にあります。

解雇等と比べて、会社側の裁量は広く認められますが、有効要件を意識して適切に行うことが肝心です。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。