Daily Archives: 2021年4月14日

メンタルヘルス7(多摩市事件)

おはようございます。

今日は、病気休職中の産業医面談(月1回)の不実施が安全配慮義務違反には当たらないとされた裁判例を見てみましょう。

多摩市事件(東京地裁令和2年10月8日・労経速2438号20頁)

【事案の概要】

本件は、普通地方公共団体であるY市の職員として勤務していたXが、Y社から人事権を濫用した違法な転任処分を受けたことにより、自律神経失調症にり患して病気休職に追い込まれ、さらに、病気休職中にY社職員から違法なパワーハラスメント行為を受けたことにより、退職に追い込まれたなどと主張して、Y社に対し、民法415条又は国家賠償法1条1項に基づき、①精神的苦痛に対する慰謝料200万円、②逸失利益としてXが休職をしなければ得ることができた1年分の給与相当額418万8340円、③弁護士費用61万8834円の合計680万7174円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 一般に、産業医面談は、休職中の治療を目的とするものではなく、使用者が休職者に対して復職又は休職に係る適切な処分をするにあたり、当該休職者の体調を把握する目的で実施されるものであるところ、本件要綱も、第1条において、「心身の故障のため病気休職をする職員について、病気休職の手続、職場復帰に際しての審査等について定める」ものとされていることから、本件要綱に基づく産業医面談も上記目的で実施されるものであることを認められる。以上に加えて、本件要綱が、産業医面談を受けることを休職者の義務として規定し、Y市が休職者の病状等に応じて上記義務を免除することや正当な理由なく上記義務を履行しない休職者に対して受信命令を発令することを定めていることに照らすと、本件要綱の規定を根拠に、Y市において休職者に対して月1回の産業医面談を実施すべき義務があると解釈することはできない

2 労働契約法5条は、使用者の労働者に対する一般的な安全配慮義務を定めたものであり、労働安全衛生法13条は、事業者の産業医選任義務を定めたものであるから、これらの規定から直ちに、Y市について、休職者に対して月1回の産業医面談を実施すべきであるという具体的義務が発生すると解することはできない。

3 Y市は、Xに対し、平成29年7月に2回目の産業医面談が実施された後、平成30年6月11日までの間、Xに対して産業医面談を実施していないが、その間、Xから体調不良を理由として平成29年9月の産業医面談がキャンセルされたこと、Xは、特定の産業医による面談を希望するとともに、Y市庁舎外での面談実施を希望していたため、産業医面談の日程調整が困難であったこと、P1保健師は、上記期間中にXとの間で3か月に1回程度の頻度で電話でやり取りを行っており、その際、Xに対して体調等を確認することもあったこと、Y市は、病気休職期間の延長申出の都度、Xから提出される主治医の診断書により、Xの病状を一定程度把握することができたことが認められる。
以上で認定した事実に照らせば、Y市は、上記期間中、産業医面談以外の方法でXの体調を一定程度把握していたことが認められ、上記期間中にY社がXに対して産業医面談を実施しなかったことをもって、Y市のXに対する安全配慮義務違反があったということはできない

休職期間中の使用者の安全配慮義務について問題となっている事案です。

使用者として何をどの程度行うべきかについては、顧問弁護士の助言の下に判断するのが賢明です。