Monthly Archives: 3月 2021

不当労働行為259 組合員に対する定時帰宅指示と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、組合に加入した組合員2名に対し、定時帰宅を指示したことが不当労働行為にあたるとされた事案を見てみましょう。

近物レックス事件(大阪府労委令和2年4月20日・労判1231号168頁)

【事案の概要】

本件は、組合に加入した組合員2名に対し、定時帰宅を指示したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社における従業員の出退勤の時間管理が適正に行われていたかについて判然としない中で、Y社は、組合加入公然化後、組合活動が活発化していた時期に突然、組合が未払賃金の支給を要求している分会長及びG組合員に対し、根拠の説明もしないまま合理的な理由なく30.1.6Y社指示及び30.2.27Y社指示を行っているといえ、このことは、組合活動を嫌悪したY社による組合員であるが故の不利益取扱いであるとともに、組合の活動を委縮させ、組合を弱体化させるものであるから、組合に対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為である。

時期やプロセスから、不当労働行為該当性が判断されていることがよくわかります。

組合員に対する対応は、事前に顧問弁護士に相談をすることが大切です。

本の紹介1139 同調圧力なんかクソくらえ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

堀江さんらしい内容です。まあ、堀江さん自身は書いていないでしょうけど(笑)

内容的にはこれまでの本でも触れている内容が多いですかね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

多数派にとっての正義が、個人にとっても等しく正義であるはずがない。『同調圧力』に抗うために必要なのは、違和感を覚えたことに対して、自分自身の頭を使い『なぜ』『どうして』と思考を続けること。」(7頁)

本当は望んでいないことでも、「同調圧力」に屈して行っていることがとても多いです。

決められたレールの上をいやいや歩く人生なんて、まっぴらです。

人生はあっという間に終わってしまいます。

一時の選択がその後の人生に大きな負担となることはいくつもあります。

同調圧力に屈して、一度、選択するとあとで「やっぱやーめた」と簡単に放棄できない選択が人生においてはいくつかあります。

容易に抜け出せない選択を極力しないことが、自分の人生を生きる秘訣かもしれませんね。

解雇343 確たる証拠もなく産前休業直前に解雇したことと不法行為責任(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、売上金窃取等を理由とする妊娠中の普通解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

アニマルホールド事件(名古屋地裁令和2年2月28日・労判1231号157頁)

【事案の概要】

甲事件は、Y社に雇用されていたXが、後記窃取を理由に普通解雇されたが、窃取事実はなく解雇は無効であるなどと主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び解雇後である平成30年7月21日以降の賃金の支払を求めるとともに、違法解雇であり不法行為が成立するとして、解雇により受給できなかった出産手当金相当額52万7967円及び慰謝料300万円の小計352万7967円の損害賠償金のうち300万円の支払を求める事案である。

乙事件は、Y社が、Xが平成29年9月23日から平成30年5月11日の間の計40日間・41回にわたり、Y社の運営する動物病院の診療費明細書(控)を破棄・隠匿すると同時にレジスターから計26万3966円の診療費を窃取したとして、不法行為に基づき、上記診療費に加えて無形の損害100万円、弁護士費用50万円の損害賠償を求める事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効
→バックペイ

Y社は、Xに対し、17万7288円+遅延損害金を支払え

Y社は、Xに対し、102万7967円+遅延損害金を支払え

X・Y社のその余の請求を棄却

【判例のポイント】

1 本件解雇は、客観的合理性・社会的相当性を欠いており、権利濫用と評価され、認定事実の平成30年5月11日以降の経過や本件訴訟での主張立証状況に鑑みても性急かつ軽率な判断といわざるを得ず、少なくともY社に過失が認められることは明らかであるから、Xの雇用を保持する利益や名誉を侵害するものとして、不法行為を構成するというべきである。

2 Xは、Y社から確たる証拠もなく窃取を理由に産前休業の直前に解雇されたものであること、本件解雇の通告後、その影響と思われる身体・精神症状を呈して通院していることに照らすと、未払賃金の経済的損失のてん補によっても償えない特段の精神的苦痛が生じたと認めるのが相当である。・・・Xの精神的苦痛に対する慰謝料額として50万円が相当である。

窃盗、横領事案については、いかに裏付けをとるかが鍵となります。

「そうではないか」程度で解雇すると、訴訟になってから立証に苦労することになります。

訴訟になる前の段階から顧問弁護士に相談しながら対応することが大切です。

本の紹介1138 ニューノーマル時代にお金を育てる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

アフターコロナ時代をいかに生きるかを、お金や経済の観点から考えています。

これからの時代がどのように進んで行くかを知りたい人は読んでみましょう。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・こうやって会社というパッケージも、どんどん溶けていくことになるでしょう。指針が失われていく中で生き抜いていくには、マイルールを持てているかが重要です。周囲が右往左往する中でも、自分がどうやったら生きていけるかをわかっている人は強い。マイルールを持って自分を信じ続けられる人には、生きやすい社会が到来している気がします。」(15頁)

どれほどの人が「自分がどうやったら生きていけるかをわかっている」でしょうか。

昔ながらの会社や学校のルールに縛られて生きるのに慣れてしまい、もはや何が「マイルール」なのかもわからなくなってしまっているのではないでしょうか。

「マイルール」を持って生きている人は本当に幸せです。

労働時間70 美容師の練習会参加は労働時間?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、美容師の練習会参加の労働時間該当性が否定された裁判例を見てみましょう。

ルーチェ事件(東京地裁令和2年9月17日・労経速2435号21頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結して就労していたXが、①平成27年8月16日から平成29年9月3日までの間(以下「本件請求期間」という。)に時間外労働及び深夜労働をした旨主張して、Y社に対し、労働契約に基づく上記の時間外労働等に対する割増賃金の支払及び労基法114条に基づく付加金の支払を求め、②Y社の代表取締役であるY2からいわゆるパワーハラスメントを受けて人格権を侵害された旨主張して、Y社らに対し、不法行為(Y社に対しては会社法350条又は債務不履行)による損害賠償金の連帯支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、44万0450円+遅延損害金を支払え。

Y社は、Xに対し、付加金30万9027円+遅延損害金を支払え。

Y社は、Xに対し、3万3000円+遅延損害金を支払え。

Y社らは、Xに対し、連帯して、5万5000円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社がアシスタントである従業員に対してスタイリストに昇格しないことによる不利益を課していたなどの事情は証拠上見当たらないのであって、仮にスタイリストに昇格するための経験を積む機会が練習会のほかにないとしても、このことから直ちにアシスタントである従業員が練習会への参加を余儀なくされていたということはできない。加えて、証拠及び弁論の全趣旨によれば、練習会に参加する従業員は、練習のためのカットモデルとなる者を各自で調達し、カットモデルを調達できないこともあったこと、従業員は練習会でカラー剤等の費用相当額をカットモデルとなった者から徴収してY社に支払っていたが、カットモデルとなった者から個人的な報酬を受け取ることができたことが認められる。
これらのことに照らすと、練習会は従業員の自主的な自己研さんの場という側面が強いものであったというべきである。
このような練習会の性格に鑑みると、Y2が練習会における練習の開始や終了に関する指示等をしていたとしても、店舗の施設管理上の指示等であった可能性を否定することができないし、XがY2から施術について注意等を受けた際に練習不足であるとの指摘を受けたことを契機として練習会に参加したとしても、これをもって練習会への参加を余儀なくされたとはいえない。
これに対し、Xは、練習会の途中で帰宅することは許されておらず、原則として従業員全員が練習会に参加しており、体調不良等を理由として練習会に参加しない場合にはY2の許可が必要であった、スタイリストに昇格した後にY2から練習が足りないと言われて練習会への参加を命じられた、練習会でのアシスタントの指導をする必要があった旨供述等するが、これを裏付ける的確な証拠はなく、Y2がXの上記供述等の内容を否定する供述等をしており、Y2の供述等の内容に特段不自然、不合理な点は見当たらないことに照らすと、Xの供述は直ちに採用することができない。
以上に述べたところによれば、Xが練習会に参加し、自らの練習や後輩の指導をしたことがあったとしても、Y社の指揮命令下に置かれていたと評価することはできないのであって、Xが練習会に参加した時間が労基法上の労働時間に該当するとはいえない。

2 Y社の休憩時間に関する主張は、要するに、顧客の本件各店舗への来店状況(予約状況)及びカット等の施術の補助業務に要する時間に基づいてXの作業時間を推定し、当該作業時間を除く時間の大部分の時間が休憩時間であるというものである。
この点、証拠及び弁論の全趣旨によれば、青山店における客の多くはY2による施術の予約客であり、Xを含む各従業員の主たる業務は、Y2による施術の補助業務(カットの場合はシャンプーや髪を乾かすブロー)のほか、タオル等の洗濯や清掃等の業務であったが、1人の客に対する施術の補助業務は同時に複数の人数でする必要はなかったこと、Xが担当していたパソコンに関する業務は頻繁にあったわけではなかったことが認められる。そして、青山店では、Xのほかに3名の従業員がいたことに照らすと、少なくとも来客がない時間にはXが実際に業務をしていない時間が相当程度あったことが推認される。また、下北沢店におけるXの業務量が青山店におけるそれよりも多かったと認めるに足りる証拠はない。
しかしながら、本件各店舗では完全予約制が採用されているところ、当日予約も受け付けており、来客の有無にかかわらず営業終了まで継続して開店し、かつ少なくとも客からの予約の電話等があり得る状態であったことが推認されることに照らすと、営業時間中にXが業務をしていない時間があったとしても、直ちに労働からの解放が保障されていたとみることはできない
このことに関し、Y2は、来客がない時間は従業員がそれぞれ自由に過ごすことを許しており従業員は自由に休憩を取得していたなどの旨供述等するが、証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件各店舗では、従業員間の取り決めで、それぞれ交代で1人ずつ順番に20分の休憩を取得し、1回目の休憩を「1番」、2回目の休憩を「2番」と呼称していたこと、Y2は上記取り決めに関与していないことが認められるのであり、来客がない時間に自由に休憩を取得することが許されているというのに、従業員が自発的に上記のような取り決めをして休憩を取得していたというのは不自然である。また、Y2の上記供述等を裏付ける的確な証拠はない。
したがって、Y2の上記供述等は直ちに採用することができず、Xの勤務日のうち来客がない時間帯の大部分において労働からの解放が保障されていたと認めることはできない
ところで、前記のとおり、従業員間の取り決めで、それぞれ交代で1人ずつ順番に20分の休憩を取得して、1回目の休憩を「1番」、2回目の休憩を「2番」と呼称していたことに関し、Xは、上記取り決めのとおり休憩を取得することができたわけではなく、予約が多いときには最初の20分の休憩を取ることもできなかったことがある旨供述等する。
この点、前記のとおり、青山店の従業員の主たる業務はY2による施術の補助業務であり、少なくとも来客がない時間は実際に業務をしていない時間が相当程度あったことが推認されるところ、本件サンプル期間中の勤務日のうち来客がない時間が合計1時間以上あったと考えられる日が半数を超えていることに照らすと、Xの上記供述等が休憩の取得が最長でも1日1回の20分のみであったとする趣旨であればそのまま採用することはできない。
一方で、本件サンプル期間中には来客のない時間がなかった日も存在し、かつY社では労働時間の管理は一切されておらず、取得すべき休憩時間も定めていなかったことに照らすと、Xが毎勤務日に必ず2回以上の休憩を取得していたと認めることもできない。
これらのことに照らすと、本件サンプル期間中の1勤務日当たりの休憩時間は平均して30分であったと認めるのが相当である。

この事案においても、休憩時間と手待時間に関する論点が登場します。

予約管理を従業員に行わせ、かつ、休憩時間中も対応させる場合には、本件同様の問題は生じます。

予約管理はすべてネットで行うようにすればこの問題は解決します。

労働時間に関する対応は、事前に顧問弁護士に相談したほうが間違いがないです。

本の紹介1137 SWITCH(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは「オートファジーで手に入れる究極の健康長寿」です。

アンチエイジングに関する総合的な本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

不健康な食事によって命を落とす人は、喫煙や高血圧が原因で死ぬ人よりも多い。・・・今日の世界では、慢性病の主な原因は食事である。現代人の多くは食べ物に困ってはいない。にもかかわらず、不適切な食事によって病気になっている。これはとても残念なことだ。」(13頁)

これもまた日々の習慣の問題です。

食べるもの、量、頻度等についていかなる習慣を持っているかがその人の健康、人生に大きく影響を与えます。

食事は睡眠と同様、習慣と密接に関連しています。

日々の習慣が年齢を重ねるごとに蓄積し、徐々に顕在化していきます。

労働時間69 バス運転手の待機時間は労働時間?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、バス運転手の待機時間のうち1割は労働時間に当たるとした原判決を取り消し、請求がいずれも棄却された裁判例を見てみましょう。

北九州市事件(福岡高裁令和2年9月17日・労経速2435号3頁)

【事案の概要】

Y市は、交通局(交通局)を設置し、北九州市市営バス(北九州市バス)事業を経営しているところ交通局は、バスが一つの系統の路線の終点に到着した後、次の系統の路線の始点から出発するまでの時間の一部に対して1時間当たり140円の「待機加算」を支給していた。
本件は、交通局に雇用され、北九州市バスの定期路線バス(乗合バス)運転手として稼働していたXらが、上記待機加算が支給される時間(以下「本件待機時間」という。)は労基法32条の労働時間(労基法上の労働時間)であり、同時間に係るXらの賃金及び時間外割増賃金と支払済みの待機加算との差額が未払であると主張して、Y市に対し、未払賃金+遅延損害金の支払を求めるとともに、労基法114条本文に基づき、上記未払賃金と同額の付加金+遅延損害金の支払をそれぞれ求めた事案である。

【裁判所の判断】

本件各控訴をいずれも棄却する。

原判決主文第1項中控訴人兼附帯被控訴人らに関する部分を取り消す。

上記の部分につき,控訴人兼附帯被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Xら18名は,被控訴人が労基法上の休憩時間と待機加算の支給される本件待機時間とを明確に区別して取り扱ってきたことなどから、交通局の乗務員は、待機時間が労基法上の労働時間ではなく休憩時間として取り扱われていたことを認識しておらず、大半の乗務員は待機時間に労働から解放されているとの認識を有していなかったと主張する。
しかしながら、待機加算は、もともと交通局が、当時交通局で唯一の労働組合であったd労働組合との間で協定書(平成9年協定書)を作成し、労基法上の労働時間として扱っていた調整時間のうち転回時間を除く時間を労基法上の労働時間ではないことを前提として中休手当相当額を支給することとされたことから支給されるようになったものであり、その金額が1時間当たり140円と低額であることに照らすならば、その支払は本件待機時間が休憩時間であることを前提としてされていたものであるというべきである。

2 そして、Y市は、平成24年2月20日付けの本件通知により、待機時間を労基法上の労働時間ではなく休憩時間であると取り扱うことを乗務員に周知していたものであり、交通局の労働組合も、平成22年、a駅及びe郵便局の各転回場所における待機時間について、乗客が乗車している場合には実働時間とするよう要求し、平成25年4月及び平成26年4月にも、待機時間中の乗車等の勤務の申告を徹底させ、実働時間にすることを求めていたことに照らすならば、本件においてXら18名が支払を求めている未払賃金の期間において、交通局の乗務員は、Y市が待機時間を労基法上の労働時間ではなく休憩時間であると取り扱っており、待機時間には労働から解放されているとの認識を有していたものと認めるのが相当である。

3 Xら18名は、乗務員が、待機時間中、5分以上にわたってバスを離れることはなく、仮に離れていたとしても、それはトイレに行ったためであると主張する。
しかしながら、ドライブレコーダーの記録によれば、複数の乗務員が、休憩施設の有無にかかわらず、転回場所において5分以上バスから離れることがあったことを認めることができ、その全てがトイレに行く目的であったということはできないから、バスから離れることが許容されていたというべきである。ドライブレコーダーの記録の撮影範囲が限られていることなどXら18名の主張する事情は、いずれも同記録の信用性を失わせるものではなく、原審証人Bの証言及び前件訴訟におけるCの証言は、いずれも転回場所から5分以上バスから離れることがあることを否定するものではない。

休憩時間なのか手待時間なのかの議論は、今もなおさまざまな業種における残業代請求事件で論点となります。

日頃から労務管理に力を入れている会社はともかく、多く会社ではなあなあになってしまっているため、手待時間と判断されるリスクが高いといえます。

顧問弁護士に相談し、早急に対応することをおすすめします。

本の紹介1136 行動の品質(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

「はじめに」は、「なぜ、僕たちは同じ人間にもかかわらず、成果に対して大きな差がつくのでしょうか?」という一文からスタートします。

著者が10年にわたる起業家支援の中で見出した、成功する必要の共通項が紹介されています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・まさにお節介化、コスト化と言われるわけです。進歩は、往々にして自己満足的になってしまいます。そのコストはお客様が負担をします。行き過ぎると、最悪の結果になってしまうのです。日本は、本当に進歩が得意です。ただ、あまりにも進歩が行き過ぎてしまい、あらゆるところで、このような異常ともいえることが起きています。」(42頁)

手段の目的化が引き起こす無駄な進歩です。

いまや車に乗っていても、運転席のまわりには1度も使わないボタンだらけです。

使わない機能を削除したらどれだけコストダウンできるのでしょう。

サービスはシンプルでわかりやすいのが一番です。

労働者性33 劇団員は労働者?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、劇団員の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

エアースタジオ事件(東京高裁令和2年9月3日・労判ジャーナル106号38頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の下で劇団員として活動していたXが、Y社に対し、(1)法定労働時間に対する最低賃金法による賃金及び時間外労働に対する法定の割増率による割増賃金について未払があるとして、雇用契約に基づく賃金支払請求権に基づき、428万5143円+遅延損害金の支払並びに労基法114条に基づく付加金請求として355万6074円+遅延損害金の支払を、(2)長時間労働を強いられた上、劇団幹部らから暴言、脅迫を受けたなどとして、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料300万円+遅延損害金並びに弁護士費用30万円+遅延損害金の支払をそれぞれ求める事案である。

原審は、(1)公演への出演は任意であり、労務の提供とはいえないものの、大道具、小道具及び音響照明業務等並びにY社が経営するカフェにおける業務は、労務の提供に当たるとして、その実労働時間及びそれに伴う割増賃金を算定し、未払賃金51万6502円+遅延損害金の限度でXの未払賃金等の請求を認容したが、(2)長時間労働や劇団幹部らからの暴言、脅迫等を理由とする慰謝料等請求は理由がないとして、これを棄却した。

Xは、原判決中敗訴部分を不服として、本件控訴を提起し、Y社は、原判決中敗訴部分を不服として、本件附帯控訴を提起した。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、185万6501円+遅延損害金を支払え。

Xのその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 確かに、Xは、本件劇団の公演への出演を断ることはできるし、断ったことによる不利益が生じるといった事情は窺われない。
しかしながら、劇団員は事前に出演希望を提出することができるものの、まず出演者は外部の役者から決まっていき、残った配役について出演を検討することになり(原審におけるE及びDの証言によると1公演当たりの出演者数20から30人に対して劇団員の出演者数4人程度)、かつ劇団員らは公演への出演を希望して劇団員となっているのであり、これを断ることは通常考え難く、仮に断ることがあったとしても、それはY社の他の業務へ従事するためであって、劇団員らは、本件劇団及びY社から受けた仕事は最優先で遂行することとされ、Y社の指示には事実上従わざるを得なかったのであるから、諾否の自由があったとはいえない。また、劇団員らは、劇団以外の他の劇団の公演に出演することなども可能とはされていたものの、少なくともXについては、裏方業務に追われ(小道具のほか,大道具,衣装,制作等のうち何らかの課に所属することとされていた。)他の劇団の公演に出演することはもちろん、入団当初を除きアルバイトすらできない状況にあり、しかも外部の仕事を受ける場合は必ず副座長に相談することとされていたものである。その上、勤務時間及び場所や公演についてはすべてY社が決定しており、Y社の指示にしたがって業務に従事することとされていたことなどの事情も踏まえると、公演への出演、演出及び稽古についても、Y社の指揮命令に服する業務であったものと認めるのが相当である(Xが本件劇団を退団した後に制定されたY社の就業規則によれば、出演者が出演を取りやめる場合は代役を確保することが求められており、Xが本件劇団在籍中も同様であったものと窺われる。)。

2 Xは、本件劇団における業務について長時間労働を強いられた旨主張するが、一公演当たり稽古期間が10日間、本番期間が6日間であったことからすると、本件劇団における活動時間が長時間にわたっていたのは、X自身が自ら希望して出演者として参加するために必要な稽古等に相当な時間が割かれていたことが理由の一つであるといえるから、公演への出演を含む本件劇団の活動に多くの時間を割いていたとしても、そのことをもってY社に不法行為が成立するものとは認められない
また、Xは、Cが平成25年7月28日にXに対して暴行を加えたことが不法行為に当たると主張し、原審において、Cが遅刻してきたXに対して他の出演者の前において控訴人の胸倉をつかみ、右の平手で左頬を殴打したと供述ないし陳述しているが、Y社はCの暴行の事実を否認しているところ、顔面を殴打した具体的態様(顔面の部位や回数等)が明らかではなく、Xの上記供述及び陳述以外にこれを裏付ける証拠がないこと、本件訴訟提起まで長年にわたりCの暴行やそれによる損害の請求等をしていないことからすれば、暴行の事実を認めるには十分ではない。他に、Cの暴行を認めるに足りる証拠はない。
さらに、Xは、Fをして労基署への相談を取り下げさせたことが不法行為に当たるとも主張するが、FがXに対して労基署への相談を取り下げるよう求めた事実は認められるものの、それを超えて、脅迫によって上記取下げを強要したとまでは認めるには十分ではなく、他にFの脅迫を認めるに足りる証拠はない。

賛否両論あると思いますが、労働者性を肯定されるリスクを考えながら、経営をしていくほかありません。

雇用と業務委託等との区別は、契約書のタイトルによって決まるものではなく、実態により判断されますので注意が必要です。顧問弁護士に相談の上、慎重に対応してください。

本の紹介1135 不老長寿メソッド(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

死ぬまで若いは武器になる」と書かれています。

83ものアンチエイジングに関する最新情報が書かれています。

すべてをいっぺんに日常生活に取り入れることはハードルが高いですが、半分くらいならすぐに取り入れられる内容です。

あとはやるかやらないか、ただそれだけ。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

あなたの心と体を若返らせるためには適切な量の苦しみが必須であり、同時に徹底的な癒やしが欠かせません。2つのフェーズの往復により正のスパイラルが生まれ、あなたの老化スピードは遅くなっていきます。」(54頁)

「適切な量の苦しみ」が必須というのが興味深いですね。

すべてが満ち足りており、毎日、来る日も来る日も、特にやらなければいけないことが1つとしてない生活は、楽しいのでしょうか。

最初の数週間はそれでいいのかもしれませんが、早晩、飽きるでしょうね(笑)

誰かの役に立っている、社会に貢献しているという感覚こそが、喜びの根源にあると個人的に思っているので、ただ満ち足りているだけでの生活ではまだ満ち足りないのです。

年齢は単なる数字にすぎません。

いくつになっても、肉体、精神ともに成長していきたいと思います。