Daily Archives: 2022年8月24日

有期労働契約113 1度も更新されていない場合の雇止めが有効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、1度も更新されていない場合の雇止めが有効とされた事案について見ていきましょう。

アクティオ事件(横浜地裁川崎支部令和3年12月21日・労判ジャーナル122号30頁)

【事案の概要】

本件は、川崎市市民ミュージアムの指定管理者であるY社が、市民ミュージアムの副館長であったY社の元従業員Xを雇止めしたことについて、XがY社に対し、労働契約法19条2号を根拠に雇止めの無効を主張し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、未払賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xとの本件雇用契約は一度も更新された実績がなく、Xの雇用期間もわずか1年間であって短期間にとどまっており、X以外の学芸員ら市民ミュージアム従業員との関係で雇用契約が反復更新されていた実績がない以上、Xにおいて本件雇用契約も更新されるとの合理的期待が生じる状況だったとは認められず、そして、本件雇用契約において、雇用期間の更新可否の判断基準として、「勤務成績、態度」、「能力」が明記されているのであるから、これについて問題がある場合には雇用契約が更新されない可能性があることはXにおいて十分認識可能だったといえるところ、Xは、館長から①の問題(館長に事前に報告もなく他で講演することが問題となっている旨)を指摘され、また、②の問題(市民ミュージアム及び川崎市も巻き込んで市民ミュージアムに対する信頼を失墜させる大変な問題になっている旨の指摘)のように市民ミュージアムに対する信頼を失墜させる大変な問題であるといった強い非難を受けたのであるから、Xが本件雇用契約は当然に更新されるといった期待を抱く状況にはなかったというべきであるから、Xにおいて本件雇用契約が更新されることを期待していたとしても、その期待には合理的な理由があるものとは認められず、労働契約法19条2号の要件に該当しない。

特に目新しい判断ではありません。

更新回数が少ないことや他の同種従業員の実績等から更新への合理的期待が否定されています。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。