解雇388 無断欠勤等を理由とする解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、無断欠勤等を理由とする解雇の有効性について見ていきましょう。

キョーリツコーポレーション事件(大阪地裁令和4年9月16日・労判ジャーナル131号24頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結していたXが、Y社に対し、無断欠勤等を理由とする解雇は無効であると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、本件解雇前の未払賃金等の支払を求め、XはY社のために時間外労働に従事したにもかかわらず、Y社は労働基準法37条所定の割増賃金を支払わないと主張して、未払割増賃金及び同法114条に基づき付加金等の支払を求めるとともに、XはY社の違法な業務命令により精神的苦痛を被ったと主張して、不法行為に基づき、損害金合計55万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇有効

未払割増賃金等一部認容

【判例のポイント】

1 令和2年5月10日までの期間について、同年4月ないし同年5月頃の社会情勢に鑑みれば、Y社が、頭痛、けん怠感、発熱等の新型コロナウイルス感染症への感染が疑われる症状を発症していたXに対し、感染のおそれが払拭され、体調が万全に回復するまで休業するよう指示したことについて、何らY社に責められるべき点はなかったというべきであり、また、同日以降の期間について、Xの主たる業務は、外回りを含む営業活動であるところ、この当時は、初の緊急事態宣言が発出されているまさにその期間中であり、一般市民及び私企業に対する行動の自粛も求められていたところであるから、Y社としては、微熱とはいえ、発熱が見られる状況にあったXを不特定多数人と接触する可能性の高い外回りの営業に従事させることが躊躇われる状況にあったことは明らかであるから、Xに外回りの営業を担当させなかったY社の判断は、何ら責められるべきものではなかったというべきであり、本件に関し、Y社の責めに帰すべき事由による就労拒否があったものと評価することはできない

2 Xは、取得することのできる有給休暇の日数を全て取得し終えた後もC営業所に出勤せず、また、X代理人を通じて職場復帰の意思を伝えたり、職場復帰のための条件を確認したりすることさえ一切せず、Y社はXに対して「コロナウイルス感染の恐れがなければ元通り業務に復帰していただきたい」との記載のある本件回答書を送付し、Xの復帰を歓迎する旨の連絡をしていたにもかかわらず、Xは、職場復帰に向けられた行動を何ら起こさないまま欠勤を続けていたのであって、上記期間におけるXの欠勤には正当な理由がないものといわざるを得ないから、Xには、就業規則所定の解雇事由(正当な理由がない欠勤が多く、労務提供が不完全であると認められるとき)があったものと認められ、また、Y社は、本件解雇に先立ち、X代理人に対し上記回答書を送付したものの、その後、約1か月半にわたり、Xからは何らの応答もなく、Y社において、これ以上、Xとの間の本件労働契約を維持することは相当でないと考えるに至ってもやむを得ないというべきであり、本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないものとはいえない。

結論には異論がないと思います。

本件同様、無断欠勤を理由とする解雇事案においては、「無断」といえるか否かが争点となるケースがあります。この点は、過去の裁判例を参考に慎重に対応する必要がありますので気を付けてください。

解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。