賃金263 就業規則のない会社における賃金減額・配転命令の成否等(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、就業規則のない会社における賃金減額・配転命令の成否等に関する裁判例を見ていきましょう。

Ciel Bleuほか事件(東京地裁令和4年4月22日・労判1286号26頁)

【事案の概要】

本訴は、Y社との間で雇用契約を締結していたXが、①Y社からの賃金が一部未払であると主張して、Y社に対し、雇用契約に基づく賃金請求として、令和元年7月分から同年9月分までの未払賃金等合計73万9591円+遅延損害金の支払、及び、同年10月分の未払賃金30万4333円+遅延損害金の支払を求めるとともに、②Y社の経営者一族の身内であるA及びY社の執行役であるBから、一方的に減額をされる、横領疑惑をかけられる、理由のない配転命令をされるという違法行為を受けたと主張して、Aらに対し、共同不法行為に基づき、損害金220万円+遅延損害金の連帯支払いを求める事案である。

反訴は、Y社が、Xに対し、Xが真実はY社の経費として費消したのではないにもかかわらず、経費であると申告してY社を欺罔し、経費名下に金員を騙取したとして、不法行為に基づき、損害金675万5958円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社は、Xに対し、73万9591円+遅延損害金を支払え

2 Y社は、Xに対し、30万4333円+遅延損害金を支払え

3 A及びBは、Xに対し、連帯して55万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Y社らは、Y社においては、営業職の給与は、各人の売上の多寡といった成果に応じて不定期に昇給ないし降給がされる制度となっていたこと、Xの売上が平成26年から急激に降下し、その後も長期にわたって売上が低迷して改善の兆しがみられなかったことから、上記制度の中で本件減給措置を実施するに至ったのであって、本件減給措置はY社の裁量の範囲内である旨を主張する。
しかしながら、Y社においては、本件減給措置が実施されるまで、従業員の売上が低下したことを理由に降格・減給措置が実施されることはなかった。Y社の営業職の売上の増加に応じて営業職の給与が上昇することはあったにせよ、Y社において、営業職の給与が、各人の売上の多寡といった成果に応じて不定期に昇給ないし降給がされる制度が存在したことを認めるに足りる証拠はない。したがって、Y社らの上記主張は、Y社らの主張する制度の存在が認められない以上失当である。

言うまでもありませんが、営業マンの売上が減少したことを理由に当然に減給することはできません。

歩合給を採用するのであれば、その旨を契約書や就業規則、賃金規程等に予め規定しておく必要があります。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。