労働時間99 研修医のオンコール待機時間等の労働時間該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、研修医のオンコール待機時間等の労働時間該当性について見ていきましょう。

医療法人社団誠馨会事件(千葉地裁令和5年2月22日・労判1295号24頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が開設する病院において後期研修医として勤務していたXが、Y社に対し、①雇用契約又は労働基準法37条1項及び同条4項に基づき、①未払の割増賃金658万2125円+遅延損害金、②付加金+遅延損害金、③上級医によるパワーハラスメントのために適応障害を発症し退職を余儀なくされ損害を被ったと主張して、安全配慮義務の違反による損害賠償請求権に基づき、703万9522円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、503万3005円+遅延損害金を支払え。

Y社はXに対し、付加金322万0483円+遅延損害金を支払え。

Y社はXに対し、233万9522円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 本件契約では、年俸922万8000円を12等分割(月額基本給76万9000円)にて支給する、原則として日直・当直などを行った場合は、別途規程により加算されるが、臨時日・当直及び時間外手当、早出、呼出、待機、手術手当等の手当については本給に含まれるとの合意がされたにとどまり、固定残業代額の明示はなく、また、Y社が、Xに対し、本件契約締結の際、基本給のうち20万4000円を固定残業代として支払う趣旨であるとの説明をしたとの的確な証拠もない。そうすると、Xが、月額基本給のうち時間外労働に対する対価がいくらかであるかを判別できたとはいえないから、上記合意は無効である。

2 オンコール当番医は、本件病院外においては、緊急性の比較的高い業務に限り短時間の対応が求められていたに過ぎないものであり、Xについても、これを求められる頻度もさほど多くないものと認められる。そうすると、本件病院外でのオンコール待機時間は、いつ着信があるかわからない点等において精神的な緊張を与えるほか、待機場所がある程度制約されているとはいえるものの、労働からの解放が保障されていなかったとまで評価することはできない

3 本件病院に出勤して勤務した時間は、別紙5の「病院側試算」欄の「オンコール対応」欄記載のとおりであり、その時間が労働時間であると認められる。

上記判例のポイント2の判断は、最高裁の考え方に沿うものですが、なぜこのような事情があると労働から解放されていると評価できるのか、いまだによくわかりません。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。