メンタルヘルス17 労災認定後に行われた解雇が労基法19条1項本文の解雇制限に反せず有効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、労災認定後に行われた解雇が労基法19条1項本文の解雇制限に反せず有効とされた事案を見ていきましょう。

一般財団法人あんしん財団事件(東京地裁令和7年7月24日・労経速2595号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結し、平成27年6月から休職をしていたXらが、令和4年5月にY社からそれぞれ解雇されたことについて、被告に対し、①上記各解雇が労基法19条1項本文に反し無効であるとして、Xらが労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、②上記各解雇が不法行為を構成し、これによって精神的苦痛をそれぞれ被ったとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料及び弁護士費用相当損害金の合計各440万円+遅延損害金の各支払をそれぞれ求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 療養期間に関する医学的知見に関して、精神医学等の専門家から成る専門検討会においては、最新の医学的知見を踏まえ、業務による心理的負荷等につき適切かつ迅速に評価・判断する方法が検討され、令和5年7月にその検討結果が取りまとめられており、これによれば、一概に示すことは困難とされつつも、療養期間の目安について、「うつ病の経過は、未治療の場合、一般的に(約90%以上は)6か月~2年続くとされていること」、「適応障害の症状の持続は遷延性抑うつ反応(F43.21)の場合を除いて通常6か月を超えず、また、遷延性抑うつ反応については持続は2年を超えないとされている」との医学的知見が示されている。
そして、Xは、平成27年3月中旬に適応障害を発病したとされており、令和4年5月に被告により解雇をされた時点において、7年間余りが経過していたものである。
また、Xは、この間の平成29年6月には、Y社に対し、「復職願」を提出して復職しているところ、復職に際し、Xの主治医は、その当時のXの状態について、「心理検査:(略)病的所見は見られない。」、「業務に影響を与える可能性のある精神症状または状態像」は「特になし」、「予想される現時点での職場への適応度」は「職場として平均的な業務遂行能力を満たすと思われる」、「職場復帰への準備状況」は「総合職として社内外の関係者と連携・協力を行うなど、対人折衝等複雑な調整等にも耐え得る程度の精神状態にまで回復していることを前提にした職場復帰に関する全体的評価」に関し「81%以上:ほとんど問題なく復職可能」等と診断している。そして、復職後の就労状況については、実際に営業業務を開始した平成30年1月から同年9月までのコール数は合計782件であり、この間のアポ率は2.2%であり、平成30年度における被告の女性職員による平均アポ率1. 02%を上回るものであった

2 以上のような諸事情を総合考慮すると、平成27年3月中旬における適応障害の発症と令和4年5月の解雇当時におけるXの休業との間に相当因果関係があると認めるには足りず、当該解雇の当時、Xが労基法19条1項本文所定の「療養のために休業する」状態にあったということはできないと判断するのが相当である(なお、当該解雇が「療養のために休業する期間」「の後30日間」にされたということもできない。)。
なお、Xらが、前記のとおり、本争点については相当因果関係が問題とならない旨主張することに鑑み、ここで説示すると、労基法19条1項本文の解雇制限について、業務起因性のある疾病の療養と関わりのない療養や治ゆ後に新たに発症した疾病の療養、症状固定後の後遺障害等の療養等のために休業している場合にまで解雇を制限する趣旨であると解することはできず、このような見地から、同条項の適用においては業務と休業との間に相当因果関係が認められることを要するものと解するのが相当である。

上記判例のポイント1の「令和5年7月にその検討結果が取りまとめられており」は、「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書」です。

同種事案における検討においては必読です。

使用者としていかに対応すべきかについては、顧問弁護士の助言の下に判断するのが賢明です。