Author Archives: 栗田 勇

本の紹介408 強い会社の教科書(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
強い会社の教科書

おなじみの小山社長の本です。

タイトルのとおり、会社を強くするために必要なことが書かれています。

やるべきことは非常にシンプルです。

大切なのは、それを信じてやり続けることですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

たくさんのことを教えようとすると、どれも中途半端になります。小学1年生のときに野球を学び、2年生で陸上、3年生でサッカー、4年生でテニス、5年生でバレーボール、6年生で水泳を学ばせると、結局はどれも身に付きません。ですが、『ひとつのことを継続すると、圧倒的に上達する』のです。王貞治はバットを振り続け、美空ひばりは歌い続け、千代の富士はシコを踏み続けたからこそ、『国民栄誉賞』を受賞できるレベルになれたわけです。」(149頁)

あれもこれも手を出したくなってしまうんですよね。

でも、それをやると、結局、どれも中途半端で、何一つ、使えるレベルに到達しないのがオチです。

職場でもそうかもしれませんね。

1度にたくさんのことを伝えても、結局、何も残らない。

最も大切なたった1つのことを毎日毎日繰り返し確認する。

あれもこれもと欲張らず、1つのことを大切にすることからはじめてみませんか?

労働者性12(神戸製鋼所(孫会社S)事件)

おはようございます。

今日は、労組法上の使用者性に関する命令を見てみましょう。

神戸製鋼所(孫会社S)事件(兵庫県労委平成26年11月20日・労判1102号92頁)

【事案の概要】

本件は、X組合がY社に対し、平成25年4月26日および同年6月20日付書面により団交の実施を申し入れたところ、Y社が、団交を受ける立場にない等としてこれに応じなかったことが、不当労働行為に該当するとして救済申立てがあった事案である。

【労働委員会の判断】

労組法上の使用者性を否定
→不当労働行為に該当しない

【命令のポイント】

1 確かに、A社はY社のいわゆる100%孫会社であること、A社の役員は全てY社の管理職及び出身者で構成されていること、Y社がA社の裕一の取引相手であり、Y社の委託業務発注量がA社の事業生命を直接に左右し得ることからすると、Y社がA社に対して一定の影響力があることは認められる。
しかしながら、Y社の、こうした資本関係、人的関係、取引関係に根拠付けられる一定の影響力が、直ちに、Y社がA社の従業員の基本的な労働条件等について、A社と部分的とはいえ同視し得る程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができることを意味するものではなく、そのことを認めるに足る疎明もない

2 しかし、A社は、従業員6人を擁し、特許出願関連業務等を行い、人事関係を含む業務全体に関する経営事項について、取締役会や取締役及び監査役を構成員とする経営会議における合議で意思決定されており、独立した法人としての実体を有するものであることが認められる。
以上のことからすれば、A社が独立した自由な経営が現実に阻害され、よって、A社の法人格が形骸化しているということはできない

3 また、X組合が、A社の法人格の形骸化を根拠付ける事実を主張することによって、Y社が、労組法上の不当労働行為責任を回避するためにA社の法人格を濫用しているとの主張を同時に行っていると解されるが、上記のとおり、A社の法人格は形骸化していないのであるからX組合の主張に理由がなく、よって、A社の法人格が濫用されているということもできない。

親会社の労組法上の使用者性が争われる場合には、多くの場合、上記命令のポイント1のような判断をされます。

参考にしてください。

一般的に労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

本の紹介407 ロングセラーを呼ぶマーケティング(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
ロングセラーを呼ぶマーケティング

著者は、テレビでよく見る「ショップジャパン」の代表の方です。

ショップジャパンといえば、ビリーズブートキャンプや低反発マットのトゥルースリーパーなど、大ヒット商品がたくさんありますね。

ショップジャパンが大切だと考えていることがこの本には書かれています。

とても勉強になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

確かに、ダイエット食品を購入する人には、その商品を通して『痩せる』ということを具体的に伝えなければ、その商品に対して見向きもしてもらえないかもしれません。しかし、『効果』を強調してみせただけでは、お客さまの心をつかむことはできないのです。商品の宣伝をする場合は、より深く、より具体的に表現されなければならないからです。つまり、『痩せた』だけでなく『その後こんな素敵なことがありました』という後半のアフターを伝えて初めて、お客さまの共感を呼び、『この商品なら私も・・・・・・』と豊かなストーリーをお客さま自身に描いてもらうことができるのです。」(167頁)

とても勉強になりますね。

自分の仕事にあてはめて考えたときに、どのような見せ方をすればよいのか。

直接的な効果にとどまらず、その後の豊かなストーリーを示すことが求められているわけです。

想像力と表現力が求められるのではないでしょうか。

イメージし、それを表現する。

その表現が顧客の共感に結びついたとき、はじめて選んでいただけるのではないでしょうか。

解雇164(帝産キャブ奈良(解雇)事件)

おはようございます。

今日は、乗務員らに対する会社解散を理由とする整理解雇等に関する裁判例を見てみましょう。

帝産キャブ奈良(解雇)事件(奈良地裁平成26年7月17日・労判1102号18頁)

【事案の概要】

本件は、タクシー乗務員であったXらが、会社の解散に伴って整理解雇等をされたことに対して、整理解雇の無効、会社の団体交渉拒否について不法行為による損害賠償などを求めた事案である。

【裁判所の判断】

整理解雇は有効(不当労働行為にも該当しない)

団交拒否は不法行為に該当する

【判例のポイント】

1 会社の解散など企業の廃止に伴ってされる全労働者の解雇についても労働契約法16条所定の解雇権濫用規制が適用される余地があるが、職業選択の自由や財産権の保障といった見地から企業を廃止することが事業主の専権に属すると解され、その権利行使の当然の結果としてされるものであることから、真実企業が廃止された以上、それに伴う解雇は、原則として、労働契約法16条が規定する「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると解するのが相当であると認められない場合」に当たらず、有効であると解するのが相当である。しかしながら、解散による企業の廃止が、労働組合を嫌悪し壊滅させるために行われた場合など、当該解散等が著しく合理性を欠く場合には、会社解散それ自体は有効であるとしても、当該解散等に基づく解雇は「客観的に合理的な理由」を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇であり、解雇権を濫用したものとして、労働契約法16条により無効となる余地があるというべきである。

2 会社解散による解雇の場合であっても、会社は、従業員に対し、解散の経緯、解雇せざるを得ない事情及び解雇の条件などを説明すべきであり、そのような手続的配慮を著しく欠いたまま解雇が行われた場合には、「社会通念上相当であると認められない」解雇であり、解雇権を濫用したものとして、労働契約法16条により無効と判断される余地がある
・・・本件解散決議については、Y社の株主が決定したものであるから、組合が団体交渉により求めようとしていたその決議の撤回等について、Y社役員らが団体交渉等において交渉することには限度があり、団体交渉を行ったとしても、これによって本件解散決議が撤回された可能性は乏しいと考えられる。また、人員削減等による整理解雇の場合には、従業員のうち特定の者が解雇されることから、その整理解雇の対象とされた者に対し、整理解雇の対象とされた理由を説明するなどしてその理解を得る努力が求められるが、本件各整理解雇は本件解散決議に基づく全従業員の解雇であるから、解雇される全従業員に説明すべき事項が本件解散決議の理由に限られることになるものの、本件解散決議はY社の株主の判断であるため、その理由をY社の役員らが全従業員に対し詳細に説明するのは困難であるといわざるを得ない。

3 Y社は、組合から本件解散及び本件整理解雇等についての説明会の開催を求められ、また、それらの撤回等のための団体交渉を求められたにもかかわらず、これらを拒絶しており、また、組合及びその組合員であるXらほか乗務員らに対する文書による説明も十分とはいえなかった。
このような団体交渉の拒絶及び説明を十分に行わなかったことは、組合の団体交渉権を違法に侵害するものであり、組合に対する不法行為に該当すると認めるのが相当である。
・・・上記不法行為による組合の損害の額については、30万円を認めるのが相当である。

会社解散に伴う整理解雇に関する裁判所の考え方がわかりますね。

参考にしてください。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介406 言葉の技術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
思いつくものではない。考えるものである。言葉の技術

著者は、電通クリエーティブ・ディレクター・コピーライターの方です。

正確な本のタイトルは、「思いつくものではない。考えるものである。言葉の技術」です。

また、本の最後にはこう書かれています。

考えよう。素晴らしい言葉がパッとひらめくほど、僕らは天才ではない。

この2つのフレーズがすべてを物語っています。

本の中で著者は、「言葉」を考える技術について教えてくれています。

とても勉強になります。 おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自分の第一印象をあわてて言葉にするのではなく、その第一印象を大事な手掛かりとして、一歩一歩丁寧に思考を深めてゆくのです。なぜ自分はそう思ったのか。なぜ自分はそう感じたのか。そこにはきっと理由があるはずです。なぜ?なぜ?と自分に意地悪になって、それぞれの扉を開けながら、その理由に向かって思考を深めてゆくのです。面倒ですけどね。大変ですけどね。でも、僕らフツーの人間が強い言葉・伝わる言葉をつくるためには、この方法しかないんじゃないかな、と思います。」(113頁)

心の中にもやもやしてあった感覚を、的確に言葉として表現することはとても難しいことです。

キャッチコピーを見ると、「あ、やられた!」と思うことがよくあります。

そういうときは、とても悔しい気持ちになります。

心に突き刺さる「伝わる」言葉は、瞬間的に思いつくものではなく(そういうときもあるのかもしれませんが)、時間をかけて練ることが、きっと必要なのでしょうね。

言葉の神様が降りてくるのをただ待ち続けるのではなく、伝わる言葉を考え抜く技術が求められているのだと思います。

不当労働行為104(小城新生興業社事件)

おはようございます。

今日は、賃上げの団交において回答の根拠となる売上高および人件費を含めた経費の内訳を提示しない会社の対応と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

小城新生興業社事件(佐賀県労委平成26年10月20日・労判1101号171頁)

【事案の概要】

本件は、X組合が、賃金引上げ要求事項を議題とする団交において、Y社が、貸借対照表や損益計算書、もしくはそれに類似する資料の開示を拒否したことが不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

将来の労使関係安定を考慮して誠実な団交の応諾を命ずるに当たり条件を付した

【命令のポイント】

1 Y社は回答について具体的根拠を示した説明をしておらず、Y社が提示した資料からは会社の経費に占める人件費の割合やその内容が全く読み取れないのであるから、このような状況の中で、組合が自己の要求額や会社回答の妥当性を判断するために会社の財務資料の提示を求めたことには、一定の理由があるというべきである。したがって、Y社は、組合との交渉に必要な範囲内において、賃上げ額の説明に必要な具体的数値、例えば売上高や人件費を示すべきであったといえる。

2 ただし、組合発行の機関紙の表現や団交の経過を見ると、組合と会社間の相互不信は根強く、正常な労使関係が構築できない現状を鑑みると同時に、労使関係の将来における安定のためという救済命令の目的を踏まえ、特に条件を付すものである。

3 なお、組合は、貸借対照表や損益計算書、もしくはそれに類似する資料を求めているが、主文の範囲の救済(当事者間で提示方法等について協議し、合意することを条件とする。)を命令することによって、救済の実をあげうるものと判断する。

救済命令に条件を付した例として参考になります。

会社として、財務資料の提示を躊躇することはよくあることです。

もっとも、団体交渉の際に、必要な資料の提示を拒むと、不誠実団交とされますので、注意しましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介405 捨てるべき40の「悪い」習慣(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
1つずつ自分を変えていく 捨てるべき40の「悪い」習慣

午堂さんの本です。

お金に関する本が多いですが、今回の本は、自分を変えるために必要な「悪い習慣」について取り上げています。

習慣の重要性を理解するにはいい本だと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『経営者は孤独』と言われる理由の1つは、彼らがたいてい一人で考え一人で決断するからです。その強さが、すべてを自己責任として引き受け、周囲がどうあろうと自分の目的を達成しようとする原動力となります。会社が成功している社長ほど、一人で考える時間を確保します。急成長する若い会社でひずみが発生しやすいのは、多忙すぎて社長が一人で考え抜く時間が確保できなくなるからではないでしょうか。」(53頁)

何かを考えたり、決断したりする場合には、一人で静かに過ごす時間が必要です。

多忙すぎて一人で考え抜く時間を確保できなくなると、適切な判断ができなくなるのはそのとおりだと思います。

もっとも、時間はつくるものですから、どれだけ忙しくても、一人で考える時間をつくることは可能です。

まずは、一人になる時間の重要性を理解し、その時間を確保する意識をもつことが大切なのではないでしょうか。

私は、朝型なので、毎朝、一番に事務所に来ます。

私にとっての一人で考える時間は、この朝の3~4時間なのです。

他の弁護士やスタッフが出社するまでの時間がゴールデンタイムですね。

「人が休んでいるときに猛烈に働く」というのが私のモットーです。

不当労働行為103(リコー(出向)事件)

おはようございます。

今日は、代理人弁護士を交渉担当者とする団交でなければ応じられないとする会社の対応と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

リコー(出向)事件(中労委平成26年10月15日・労判1101号173頁)

【事案の概要】

本件は、X組合が、平成25年、Y社に対し、当時会社からB社へ出向していたA組合員の復帰等を交渉事項とする団交を申し入れたところ、Y社がこれを無視し、回答しなかったことは不当労働行為に該当する旨主張し、大阪府労委に対し救済を申し立てた事案である。

【労働委員会の判断】

代理人弁護士を交渉担当者とする団交でなければ応じられないとした会社の対応は不当労働行為には該当しない

【命令のポイント】

1 代理人による再三にわたる説得にもかかわらず、4.18団交後も、代理人を団交における窓口及び交渉担当者として認めないという従前と同様の主張に固執し、これを譲る姿勢を全くみせない組合の態度に照らせば、本件団交申入れ当時、このまま交渉担当者の問題について解決せずに組合との間で団交を行っても、4.18団交と同様、組合が弁護士を会社側交渉担当者として認めないという自己の見解に固執し、交渉事項について実質的な交渉をすることができない可能性が高かったということができる。

2 代理人による5.10回答は、こうした状況の下で行われたものであり、その回答内容も考慮すると、その趣旨は、弁護士が交渉担当者として出席することを認めないという組合の主張には応じられないとしつつも、4.18団交と同様の事態が生ずるのを回避し、正常な団交を行うべく、本件団交申入れを応諾する前提として、本来労使間で合意の上取り決めるべき団交ルールの一つである交渉担当者の問題についてあっせん手続において話し合い、交渉担当者の問題が解決した後に団交を行うことを提案したものと解するのが相当であり、これをもって団交を拒否したものと認めることはできない

3 したがって、本件団交申入れに対するY社の対応は、正当な理由のない団交拒否であるとは認められず、労組法7条2号の不当労働行為には該当しない。

団体交渉の場に弁護士が代理人として参加することはよくあることです。

代理人弁護士が交渉担当者となることを組合が拒否した場合には、是非、この事案を参考にしてください。

本の紹介404 アンソニー・ロビンズの自分を磨く(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
アンソニー・ロビンズの自分を磨く (単行本)

アンソニー・ロビンズさんの本は以前にも紹介したことがあります。

自己啓発のど真ん中をいくような本です。

人生をより豊かに生きるために何を大切にすべきかが説かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

困難な問題の解決には、超人的な行動が必要だという考えほど、事実とかけ離れた考えはない。人生は積み重ねだ。・・・人生の成功や失敗は、大地を揺さぶるような大変動や大英断の結果のように見えることもあるが、決してそうではない。それどころか、成功も失敗も、あなたの毎日の小さな決断と行動の結果なのである。」(348頁)

力強い炎も、小さな火花から始まる -ダンテ」(348頁)

成功者の多くは、「成功も失敗も、あなたの毎日の小さな決断と行動の結果なのである」ということをよく理解しています。

毎日毎日、自分の目標を達成するために必要な決断と行動を繰り返す。

成功する方法は、もうわかっているわけです。

あとはこれを続けられるかどうか、だけです。

そういう意味では、成功することは本当に簡単なことです。

どうすれば成功するかわかっているわけですから。

人が寝ているとき、休んでいるときに、必要な準備をする。 それを毎日続ける。

日々の小さな習慣を変えることによって、人生は大きく変わり始めると思っています。

解雇163(A住宅福祉協会事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、協会の名誉を毀損したこと等を理由とする懲戒解雇に関する裁判例を見てみましょう。

A住宅福祉協会事件(東京高裁平成26年7月10日・労判1101号51頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の職員として稼働していたXが、Y社から懲戒解雇されたところ(なお、Y社は、当審において予備的に普通解雇の主張を追加した。)、解雇無効を主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、Y社に対し、解雇後の未払月額賃金及び未払賞与の支払を求める事案である。

原審は、Y社の主張する事実は懲戒解雇の事由に当たらず、また、手続の相当性も欠いているとして、Y社のした解雇は無効であるとし、Xの本件請求について、地位確認を求める請求を認容した。

この原判決に対し、Y社のみが敗訴部分の取消を求めて控訴した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Y社の当審における新たな主張を時機に後れた攻撃防御方法として却下すべきか否かについて検討する。上記のとおり、人事異動命令の拒否など当審で新たに主張した3つの解雇事由は、Xに対する解雇通知に明文で掲げられていたものであるから、これを原審で主張せずに当審になって主張したことは、攻撃防御方法の提出として時機に後れていることが明らかである。そして、原審においてこれらの解雇事由についての主張及び立証をすることが、不可能あるいは困難であったとする事情は何らうかがうことができないことに加え、原審におけるY社の訴訟追行が弁護士である訴訟代理人によってされていたことも考慮すると、当審においてY社の訴訟代理人が変わり、訴訟追行の方針等に変更があったことを考慮したとしても、当審に至って新たな主張をすることが時機に後れたことについては、故意又は重大な過失があるというべきである。

2 ・・・当審において新主張についての当否を判断するについては、従前の双方の主張や証拠調べの結果だけでは訴訟資料が不足していることが明白であり、当事者双方の主張立証を尽くさせる必要があり(少なくともXがこれを争っている以上、X本人の尋問の実施は必須であるし、併せてY社関係者の尋問が必要となることが想定される。)、その主張整理や証拠調べには、なお相当の時間を要するとみられるから、訴訟の完結が大幅に遅延するものというべきである

3 なお、念のため付言しておくと、仮に上記各解雇事由に関するY社の主張を時機に後れた攻撃防御方法として却下しなかった場合には、これまでの当事者双方の主張立証を前提とする本件証拠によっては、Y社主張の各解雇事由がXにあるとは認めるに足りないから、上記各事由による懲戒解雇をいうY社の主張を採用することはできないと判断することになる。

控訴審で新たな解雇事由を追加すると、本件のように、時機に後れた攻撃防御方法だと言われてしまいます。

一審のうちに、もっと言えば、一審の早い段階で解雇事由を固めておく必要がありますので、注意しましょう。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。