労働者性12(神戸製鋼所(孫会社S)事件)

おはようございます。

今日は、労組法上の使用者性に関する命令を見てみましょう。

神戸製鋼所(孫会社S)事件(兵庫県労委平成26年11月20日・労判1102号92頁)

【事案の概要】

本件は、X組合がY社に対し、平成25年4月26日および同年6月20日付書面により団交の実施を申し入れたところ、Y社が、団交を受ける立場にない等としてこれに応じなかったことが、不当労働行為に該当するとして救済申立てがあった事案である。

【労働委員会の判断】

労組法上の使用者性を否定
→不当労働行為に該当しない

【命令のポイント】

1 確かに、A社はY社のいわゆる100%孫会社であること、A社の役員は全てY社の管理職及び出身者で構成されていること、Y社がA社の裕一の取引相手であり、Y社の委託業務発注量がA社の事業生命を直接に左右し得ることからすると、Y社がA社に対して一定の影響力があることは認められる。
しかしながら、Y社の、こうした資本関係、人的関係、取引関係に根拠付けられる一定の影響力が、直ちに、Y社がA社の従業員の基本的な労働条件等について、A社と部分的とはいえ同視し得る程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができることを意味するものではなく、そのことを認めるに足る疎明もない

2 しかし、A社は、従業員6人を擁し、特許出願関連業務等を行い、人事関係を含む業務全体に関する経営事項について、取締役会や取締役及び監査役を構成員とする経営会議における合議で意思決定されており、独立した法人としての実体を有するものであることが認められる。
以上のことからすれば、A社が独立した自由な経営が現実に阻害され、よって、A社の法人格が形骸化しているということはできない

3 また、X組合が、A社の法人格の形骸化を根拠付ける事実を主張することによって、Y社が、労組法上の不当労働行為責任を回避するためにA社の法人格を濫用しているとの主張を同時に行っていると解されるが、上記のとおり、A社の法人格は形骸化していないのであるからX組合の主張に理由がなく、よって、A社の法人格が濫用されているということもできない。

親会社の労組法上の使用者性が争われる場合には、多くの場合、上記命令のポイント1のような判断をされます。

参考にしてください。

一般的に労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。