Daily Archives: 2015年3月17日

有期労働契約55(X学園事件)

おはようございます。

今日は、非常勤講師の雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

X学園事件(東京地裁平成26年10月31日・労経速2232号18頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で有期雇用契約を締結し、Y社の設置する高等学校において非常勤講師として勤務したが、平成25年度において契約の更新が行われなかった。Xが、①Xにおいて雇用契約が更新されることについて合理的な理由なく更新を拒絶したと主張氏、労働契約法19条2号に基づき労働契約上の地位の確認、並びに②本件雇止め後の賃金、賞与及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまでの遅延損害金の支払いを求めるとともに、③担当授業の間に生じる空き時間につき、これが労働時間であると主張し、当該空き時間に対応する平成23年度の未払賃金として58万0800円、平成24年度の未払賃金として41万6300円及びこれらに対する遅延損害金の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 有期雇用契約の契約期間の満了時における雇用契約更新に対する合理的期待(労働契約法19条2号)の有無を判断するに当たっては、最初の有期雇用契約の締結時から、雇止めされた有期雇用契約の満了時までのあらゆる事情を総合的に勘案すべきであるところ、具体的には、当該労働者の従事する業務の客観的内容、契約上の地位の性格、当事者の主観的態様、契約更新の際の状況及び同様の地位にある他の労働者の契約更新状況等の諸事情を勘案することが相当である。

2 本件学校における非常勤講師の契約期間は1年間であり、Y社の事情により雇用延長の必要が生じた場合、雇用契約を更改する方法がとられていたが、本件学校において、非常勤講師が必要となる科目及びその人数は、当該年度の生徒のクラス選択及び科目選択並びに専任講師ないし専任教諭への時間数の配分によって変わりうることは前記で認定した事実に照らして明らかであり、前年度に必要とされていた非常勤講師であっても、翌年度にその必要性が維持されるという関係にないことは自明である。このことは、本件学校において、非常勤講師の雇用契約を締結する際は、担当コマ数、給与額等を新たに定めた上で1年単位の契約を新たに締結する方法を採用していることからも明らかである。
また、本件学校の非常勤講師は、私立学校教職員共済組合の加入条件を満たすために専任講師に近いコマ数を担当することになっていたが、専任講師及び専任教諭とは異なり、授業以外の業務に関与しないこととされていた。
以上の点からすると、本件学校の非常勤講師は、専任講師と同程度の授業負担を負っているとはいえ、飽くまでも臨時的な地位であることが前提であり、その結果、期待されている業務も、生徒指導等、授業以外で教員の指導力が求められる業務は除かれ、授業を行うことに限定されているということができる

3 ・・・こうした客観的状況に照らすと、Xが、飽くまで臨時的な地位である非常勤講師として、実例がほぼ存在しないにも関わらず、4年を超えて勤務することができると期待するに値する合理的な事情があるとはいえない

業務内容があくまでも臨時的なものであるということを重視し、契約更新の合理的期待を認めませんでした。

更新回数が多数回にわたったとしても、それだけで合理的期待が肯定されるわけではありません。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。