Daily Archives: 2015年3月19日

賃金89(泉レストラン事件)

おはようございます。

今日は、固定残業代の有効性と割増賃金請求に関する裁判例を見てみましょう。

泉レストラン事件(東京地裁平成26年8月26日・労判1103号86頁)

【事案の概要】

本件は、Y社で稼働していたXらがY社に対し、雇用契約に基づき、時間外労働等に対する割増賃金およびその遅延損害金の支払いを求め、併せて、労働基準法114条に基づき、付加金およびその遅延損害金の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社に対し、合計約430万円の割増賃金の支払+付加金約330万円の支払を命じた。

【判例のポイント】

1 一定額の手当の支払がいわゆる固定残業代の支払として有効と認められるためには、少なくとも、①当該手当が実質的に時間外労働の対価としての性格を有していること、②当該手当に係る約定(合意)において、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外割増賃金に当たる部分とを判別することができ、通常の労働時間の賃金に当たる部分から当該手当の額が労基法所定の時間外割増賃金の額を下回らないかどうかが判断し得ることが必要であると解される。

2 これを本件について見るに、①の要件につき、本件時間外勤務手当制度は、ポスト職を除く全従業員を対象に導入していると認められ、そうすると、従業員に実際に恒常的に発生する時間外労働の対価として合理的に定められたものとはいえない。また、Xらの在職中、これらの時間外労働を前提とした割増賃金が支払われていた様子はうかがえない。以上の点からすると、本件時間外勤務手当が実質的に時間外労働の対価としての性格を有しているとは認められず、①の要件は認められない。よって、その余の点について判断するまでもなく、本件時間外勤務手当制度をXらに適用することはできない。

中途半端に固定残業制度を導入すると、こうなりますので、注意しましょう。

中途半端にやるくらいなら、導入しないほうがまだましです。

会社としては残業代の二重払いのような感覚に陥りますが、やむを得ません。

控訴して、和解するか、割増賃金+遅延損害金全額を支払い、付加金だけは勘弁してもらいましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。