Author Archives: 栗田 勇

解雇127(財団法人日本相撲協会事件)

おはようございます。 

さて、今日は、故意による無気力相撲を行ったことを理由とする引退勧告に応じなかった力士の解雇に関する裁判例を見てみましょう。

財団法人日本相撲協会事件(東京地裁平成24年5月24日・判タ1393号138頁)

【事案の概要】

本件は、力士であるXが故意による無気力相撲を行ったことを理由とする引退勧告に応じなかったことがY社の秩序を乱す行為であるとして、Y社がXを解雇したところ、Xが本件解雇は無効であると主張して、Y社に対し、地位確認及び解雇後の給与等の支払並びに不法行為又は債務不履行に基づく慰謝料等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇は有効

【判例のポイント】

1 本場所相撲は、力士の技量を審査するためのものであり、その勝星により当該力士の階級順位の昇降が決定され、当該力士の給与額等その待遇を左右するものであり、Y社に所属する各力士は、それが故に若いころから日々厳しい鍛錬に耐えて階級順位を上げるために全力を尽くすのである。またそうであるが故にY社が興行する本場所相撲は、わが国で国技と称せられる相撲のうちの最高水準のものであるとして、世間から注目され、国民の間に人気を保っているのであって、本場所相撲の興行をしているY社にとって、特に「故意による無気力相撲懲罰規定」と相撲競技監察委員会を設けて本場所相撲における故意による無気力相撲を禁止することは、何物にも替え難い重要な意味を持っているといわなければならない。そうすると、Xが本場所相撲である本件取組において、故意による無気力相撲を行ったことは、Y社の存立基盤に影響を与え得るものであって、X・Y社間の信頼関係を大きく損ねる事情にほかならず、継続的な契約関係である本件役務提供契約の維持を困難にすると認めるだけの合理的な理由に当たるものということができるのである。

2 Xは、過去に故意による無気力相撲を行った力士がある程度の数いたのに、これを理由として解雇された者がいないのであって、Y社が故意による無気力相撲を行うことを黙認していたと主張する。確かに、C及びBの各供述のみを見ても、X(ないしこの機会に処分を受けた力士)以外にも、過去に故意による無気力相撲を行った力士がいたことは、はなはだ遺憾ながら充分に窺うことができる。しかしながら、上記のようなY社にとって故意による無気力相撲の有する意味あいを考慮すれば、過去に、又はXの他に、故意による無気力相撲に関与した者がいるからといって、そこから直ちにXに対する本件解雇が、社会通念上相当でないと断ずることはできないし、Y社としては、具体的な取組に関して、証拠もない力士に対して、故意による無気力相撲に関与したとして処分を行うことはできない以上、結果として故意による無気力相撲に関与した力士が見逃されたとしても、それから直ちに、本件解雇が違法性を帯びると評価することはできない

上記判例のポイント1の評価のしかたは参考になります。

解雇の合理性を主張するために、これでもかというくらい掘り下げる姿勢は勉強になります。

また、解雇事件では、労働者側が相当性を争う際、過去の事案との比較をすることがあります。

しかし、事案がそれぞれ異なるのが普通ですので、過去の事案と比べて処分が重いということだけで簡単に解雇が無効になるわけではありません。

なお、原告は、控訴しましたが、控訴審でも解雇は有効と判断されています(控訴棄却)。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介280 カルロス・ゴーン リーダーシップ論(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。
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←先日、無性にうなぎが食べたくなり、「うなぎ亭」に行ってきました。

このお店は、リーズナブルでおいしいのがいいですね。

普通のお店の半額(は言い過ぎか?)くらいです。

すばらしい!

今日は、午前中は、打合せが1件、新規相談が1件入っています。

午後は、離婚調停が2件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

日経ビジネス経営教室 カルロス・ゴーン リーダーシップ論

経営教室シリーズです。
このシリーズは、いろいろな会社の社長が経営のポイントを解説しているのですが、重くなく、さくっと読めるのでいつも買っています。

今回は、ゴーンさんですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

アライアンスに特別な成功の秘訣やプロセスはなく、ただ『心構え』が重要なのです。相手に敬意を表し、尊重する。そのうえでプロジェクト志向で物事を進め、シナジーを出すことに専念するのです。」(71頁)

・・・緊密な関係を持ちながらも、『お互いにとってメリットがないことはしない』のがポイントです。シナジー追求という観点に立てば、パートナーを対等の立場で尊重するのは当たり前だからです。理想論ではありません。このスタンスをしっかりと守るからこそ、アライアンスが実際的に機能するのです。相手を出し抜こうとする考えで、うまくいくはずがありません。リーダーは、対等と尊重の精神を組織の隅々まで浸透させなければならないのです。」(70頁)

このゴーンさんの意見は、非常に重要なポイントだと思います。

この視点、アライアンスだけの話ではないですよね。

誰かと一緒に仕事をするときに、相手を利用してやろうといった考え方では決してうまくいきません。

いかに相手の役に立つか、自分がどのような役割を求められているかといったことをお互いに考えられないのであれば、複数のメンバーが集まって共同で仕事をすることは百害あって一利なし。有害無益です。

以前紹介した本にも書かれていましたが、仕事は、何をやるか(も大切ですが)ではなく誰とやるかが大切なのです。

同じ気持ち、精神を持った人と一緒に仕事したいと思います。

退職勧奨11(プレナス事件)

おはようございます。

 

さて、今日は、懲戒解雇や退職金不支給の可能性は動機の錯誤にすぎないとして、退職勧奨による退職が有効とされた裁判例を見てみましょう。

プレナス事件(東京地裁平成25年6月5日・労経速2191号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、平成23年9月14日に同年10月5日をもってY社を退職する旨の退職願を提出したが、これによる退職の意思表示が無効であるとして、Y社に対して地位確認、賃金支払を求めるとともに、本件退職願を提出させる際のY社による退職の強要が不法行為に当たるとして、慰謝料及び社宅からの退去費用等相当額の損害賠償を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、本件退職願のよる退職の意思表示は、E部長の退職勧奨に応じなければ、懲戒解雇になり、その場合は退職金も支給されないものと誤解したためにされた錯誤によるものであり、無効である旨を主張し、X本人尋問の結果中には、これに沿う供述部分がある。
しかしながら、X供述等においても、Xが本件退職願を提出することを決断するに至った動機については曖昧で明らかではないし、X供述等によれば、9月3日面談においては、退職の意思はなかったが9月12日電話で退職せざるを得ないと決断したというのであるが、直接の面談ではなく、電話での会話によってそのような決断に至った事情も明確とはいい難く、Xが主張するような上記の誤解が何故その時点で生じたのかも明らかではないところである。また、9月3日面談及び9月12日電話のいずれにおいてもE部長が懲戒処分や解雇の可能性、ましてや懲戒解雇による退職金不支給について言及したことはなく、Xも退職勧奨に応じなかった場合の処遇等に関して何ら言及していないことは上記認定のとおりである。そうすると、この点に関するX本人尋問の結果中の供述部分は直ちには信用し難く、Xに上記のような誤解があり、これに基づき本件退職願が提出されたとすることには疑問があるものといわざるを得ない。
仮に、Xが上記のような誤解に基づき本件退職願による退職の意思表示をしたものであるとしても、これは動機の錯誤であるといわざるを得ず、これが表示されていたことは一切うかがわれないのであるから、退職の意思表示につき要素の錯誤があったということはできない

2 また、9月3日面談による退職勧奨後、Xによる本件退職願の提出がされるまでの経過をみると、9月3日面談がされた後には1週間以上の考慮期間があったものであり、さらに、この間、Xは、労働局に相談をして、安易に退職届を出すことがないように指導を受けるなどしていること、9月12日電話は、約15分程度の会話であり、その際、Xからは、退職事由については会社都合としたいとの具体的な要望が出されるなどしていること、実際に、Xが、その要望どおり退職事由を会社都合によると記載した本件退職願を提出したのは、その2日後の平成23年9月14日であることが認められ、このような経過に照らせば、本件退職願の提出による退職の意思表示自体がXの真意に基づかないものということもできないというべきである

訴訟提起時から、厳しい戦いが予想されていたとは思います。

労働者側が参考にすべき点としては、上記判例のポイント1の動機の錯誤に関する判断です。

最高裁判決によれば、動機に錯誤がある場合には、原則として無効とならず、ただ、動機が表示された場合には、動機が意思表示の内容となって意思表示の錯誤が成立しうるとされています。

動機の錯誤の場合、意思表示そのものではなく、意思形成過程としての動機の点に錯誤があるにすぎず、内心的効果意思と表示に不一致はないわけです。

表示の要件を満たすことが大切だということを認識しておくだけで、かなり準備の仕方が変わってくるのではないでしょうか。

詳細は顧問弁護士に確認をしてみてください。

本の紹介279 テトラポッドに札束を(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

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←年末年始の連休中も、朝は、ジョギングから始まります。休みだからといって、生活のリズムは崩しません。

今年は、さらに体と心を鍛えていきます。

今日は、午前中は、事務所のHPに関する打合せが入っています。

午後は、浜松の会社を訪問します。

夕方から、静岡で裁判の打合せ、労働事件の弁護団会議、フランチャイズ研究会が入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 テトラポッドに札束を (単行本)

著者は、12歳のときに事故で首の骨を圧迫骨折し、以後、車いすの生活をしているそうです。

体の70%が麻痺しているとのことです。

そんな著者が、17歳のときに年商1億円を達成し、その後もビジネスを成功させていく過程が書かれています。

説得力が違います。おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

僕らは70億分の1として生を受け、生まれた瞬間からコモディティと化している。教育や常識は僕らをコモディティのままに成長させる。そして、この世界は『資本主義社会』というシステムによって動いています。資本主義はこの世のあらゆるものを取引の対象とし、命ですらも金で買えてしまいます。僕らがどんなに嫌がっても、『70億分の1であること』や『資本主義社会に生きていること』から逃げ出すことはできません。逃げ出すことができないということは『自分も1つの商品であること』『自由競争に巻き込まれていること』『社会に必要のない人間は淘汰されること』、これらを素直に認める必要があります。」(177~178頁)

きれいごとなしの事実です。

「自分も1つの商品であること」、「自由競争に巻き込まれていること」、「社会に必要のない人間は淘汰されること」 もうこれらの言葉だけで、甘えは一切許されないということが伝わってきますね。

いつ会社がなくなるかわかりませんし、いつリストラされるかなんてわかりません。

この先、何があるかわからない状況において、できることは何か。

それは、自分に力をつけるしかありません。

最後は、自分で自分を守るしかないですから。

僕たち凡人が成功したいのであれば、周りの人が遊んでいるとき、休んでいるときに、努力するしか方法はありません。 そう確信しています。

ワーク・ライフ・バランスとは縁遠い生活をしていますが、私は、労基法上の労働者でないので、どれだけ働いてもどこからもとやかく言われません(笑) ほんとラッキーです。

好きな仕事を好きなだけできることに感謝しつつ、圧倒的な仕事をしていきたいと思います。

解雇126(財団法人日本相撲協会事件)

おはようございます。 あけましておめでとうございます。

本日から事務所が動きます。 本年もよろしくお願いいたします。

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←毎年12月31日、母親を連れて、法多山に行きます。母が元気なうちは、一緒に行くと決めています。

法多山の階段をゆっくり上っている母を見ていると、年をとったな、と思います。

歩けなくなったら、おんぶして連れて行こうと思います。 いつまでも元気でいてください。

今日は午前中は、債務整理の打合せが1件入っています。

午後は、成年後見の打合せが1件、新規相談が1件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は野球賭博への関与等を理由とする力士の懲戒解雇に関する裁判例を見てみましょう。

財団法人日本相撲協会事件(東京地裁平成25年9月12日・労経速2191号11頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で力士所属契約を締結したY社所属の力士であるXが、Y社がした懲戒処分としての解雇が無効であると主張して、Y社に対し、主位的請求として、Xの番附階級が大関であることの確認並びに未払賃金、旅費及び日当、交通費の支払等を求め、Xの番附階級が大関であることの確認請求が認容されない場合に備えて予備的請求1として、Y社の寄附行為36条に定める力士としての権利を有することの確認を求め、主位的請求及び予備的請求1ががいずれも認容されない場合に備えた予備的請求2として、本件所属契約が終了したことを前提とする力士老金及び勤続加算金、預かり懸賞金の支払等を求める事案である。

なお、Y社のXに対する処分事由は、①野球賭博を行ったこと、②①について理事会での事情聴取における虚偽申告、③自らの野球賭博に関する恐喝事件の現場での暴力団関係者と疑われるものとの協議である。これらの事由により、相撲の本質をわきまえず、Y社の信用もしくは名誉を毀損するがごとき行動をなしたとして、Y社理事会の決議によりXに対し、本件解雇の意思表示をしたものである。

【裁判所の判断】

請求棄却
→懲戒解雇は有効

【判例のポイント】

1 Y社理事会は、Y社及び特別調査委員会による調査結果にXの弁明を加味した上で、本件処分事由がいずれもあると認定し、Xに酌むべき事情があるかどうかを含めて討議した結果、Xに対する懲戒処分として解雇(退職金は全額支給するが、功労金は支給しない。)が相当であると議決し、Y社は、Xに対し、本件解雇の意思表示をしたことが認められるところ、本件処分事由の非違行為としての重大性に加えて、Y社所属の力士の頂点である大関という地位にあったXの立場、本件処分事由がY社に及ぼした結果及び社会的影響の大きさに照らせば、XにはY社における懲戒処分歴がないこと、その他本件に顕れたすべての事情を考慮しても、Y社が、Xに対し、Y社寄附行為施行細則93条が規定する懲戒処分として本件解雇をしたことは相当であるというべきである

2 Xは、本件解雇が、Xとの間の本件所属契約の解雇件又は解除権を放棄するとの合意に反し、あるいは、本件野球賭博に関与したとの申告をすれば、厳重注意にとどめるという利益誘導又は偽計を用いたものであるから、禁反言に反し、信義則に反すると主張する。
・・・しかし、・・・厳重注意で済ませるとの誘引をしたことがあるとしても、その誘引の対象には、Xが含まれていなかったものと認めるのが合理的である。
仮に、Xが、同日までに本件野球賭博への参加を申告すれば、厳重注意にとどまるのではないかとの期待を有していたとしても、Xについては、すでに公表された本件記事においてその中心人物として名前が記載され、Y社理事会からの事情聴取を受けるなどしており、客観的にみても、Y社が厳重注意という措置の前提としていた自主申告をすることを許容される状況にあったとはいえないことY社は、Xが恐喝被害を相談した警察等の情報から、Xの本件野球賭博への参加につき既に疑いを有しており、Xからの申告の有無が、現にXが行っていた本件野球賭博への参加に対してY社が何らかの処分を行うための必須の要素であったとはいい難いことを考慮すると、Xが、仮に上記のような期待を有していたとしても、それは、Y社の懲戒権限を制約するなどして保護しなければならないものとはいえず、また、本件処分を違法、無効たらしめるような手続き違背に当たるともいい難い。

力士に対する処分に関する裁判例をいくつか出ています。

今回の事案では、上記判例のポイント2での裁判所の切り返しが参考になりますね。

非常に雄弁です。

本の紹介278 仕事に必要な言葉(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今日で、仕事納めです。 今年も一年、お世話になりました。

新年は1月6日(月)から仕事開始です。

顧問先の会社様は、年末年始におきましても、通常通り、栗田の携帯電話に御連絡をください。
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←先日、いつもお世話になっている社長と、ホテルセンチュリーにディナーを食べに行ってきました。

写真は、「鮟鱇のポワレと鮟肝のバプール 赤ワインソース 菊芋のピューレを添えて」です。

アンコウといえば、鍋をイメージしてしまうのですが、今回は、洋食でいただきました。

繊細な味付けで、おいしゅうございました。

今日は午前中は、顧問先会社の社長との打合せ等が2件入っています。

お昼は、スタッフとともに年越しそばを食べに行きます。

午後は、打合せが1件と事務所の大掃除です。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 仕事に必要な言葉

著者は、三井物産副社長、日本ユニシス社長を経て、住宅金融支援機構理事長になられた方です。

いい言葉がわかりやすく紹介されています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

縁を支配しようとすると、かえって縁は逃げていく。自分が選ぶのではなく、まわりが自分を選ぶという謙虚な気持ちが大切。」(172頁)

よく言われることですが、異業種交流会で名刺を配りまくっても、人脈なんて広がりません。

人脈は、広げるものではなく、自然と広がるものではないでしょうか。

まずは周りに選んでもらえるように力をつけることが大切です。

なんでもそうだと思いますが、無理矢理、支配しようとすればするほど、相手は逃げていきます。

他人に支配されたいと思う人はいませんから。

強引に他人を支配しなければ、つなぎ止めておけないような縁は、そもそも縁ではないのです。

お互いが依存しない関係にある人同士だからこそ、縁はつながっていられるのです。

不当労働行為81(全日本建設運輸連帯労組関西地区生コン支部(大谷生コン・本案)事件)

おはようございます。

さて、今日は、産業別組合による業務妨害行為に対する差止め・損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

全日本建設運輸連帯労組関西生コン支部(大谷生コン・本案)事件(大阪地裁平成25年3月13日・労判1078号73頁)

【事案の概要】

本件は、Y社がXに対し、Y社の営業権に基づき、XによるY社に対しての業務妨害行為(Y社の取引関係者へのY社との取引停止の要請、納入先現場におけるY社の取引関係者への圧力、広域協組幹部会社への圧力、Y社の納入妨害及びこれらに準ずる行為)の各差止めを請求するとともに、Xによる業務妨害行為を理由とする不法行為に基づき、損害賠償を請求し、併せて遅延損害金の支払を請求した事案である。

【裁判所の判断】

Xによる取引先への要請行為、情宣活動、出荷妨害等に対するY社からの妨害差止請求と損害賠償請求(330万円)を認容

【判例のポイント】

1 Xが行ったと認められる本件業務妨害行為は、その態様からして、一般市民に許容される要請活動、宣伝活動または説得活動の域を超えているといわざるを得ず、Y社の取引関係者をして、Y社との取引の開始及び継続について心理的に委縮させる効果をもつものであると一般的に認められる。したがって、Y社は、本件業務妨害行為により、それが取引関係者にもたらす委縮効果を通じて、その営業権を侵害されているというべきであり、本件業務妨害行為は正当な組合活動と認められるなどして違法性を阻却されない限り、違法であるという評価を免れない

2 組合活動は、その目的及び行為態様を考慮して、労働者の労働義務、誠実義務、使用者の施設管理権との調整という観点も併せて斟酌して正当性が認められる場合には、憲法上の保護を受けて違法性が阻却されると解される

3 本件業務妨害行為の行為態様、頻度、違法性の程度を考慮し、これまでXがY社に対して業務妨害行為を繰り返してきたことを斟酌するならば、将来において同様の、またはこれらに準ずる方法、態様による業務妨害行為が行われる蓋然性は高く、それによりY社に軽度とはいえない不利益が生ずるおそれが高いと認められる。したがって、差止めの必要性は高く、これらについて差止請求権が認められる

4 本件業務妨害行為の態様からすると、その対象となった取引関係者の中に、現場の混乱を回避し、また、自社の社会的イメージを維持するという目的から、Y社との取引を縮小し、あるいは、解消することを考えるに至る業者が出ることは十分にあり得ることであると考えられる。そのような意味において、Y社の名誉及び信用の低下は現実に生じたものと認められ、そのこと自体がXの違法な本件各業務妨害行為によりY社に生じた損害であると認めるのが相当である。
このことが現実に売上げの減少につながったかをみると、・・・前記の損害は売上げの減少にはつながっていないことが認められる。しかしながら、売上げの上下は、Y社の営業努力による取引の維持や新規取引先の開拓、景気の動向等、複数の要因に影響されるものであるから、売上げの減少がないからといって、前記の損害がないとすることは相当でない
前記の損害は、その性質上、具体的な損害額の算定が困難であり、その損害額を立証することが極めて困難であるというべきであるから、民事訴訟法248条に基づき損害額を認定することとし、本件各業務妨害行為の態様等を考慮して、これを300万円と認定し、その一割の30万円を弁護士費用に関する損害と認定することとする

非常に参考になる裁判例ですね。

会社としては、組合の組合活動に正当性が認められないと考える場合には、差止請求や損害賠償請求を検討することになります。

裁判所がどのような要素を重視して判断しているのかを認識することが大切です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介277 掟破り(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。

掟破り

僕が大好きな原田さんの本です。

今回の本は、テーマごとにとても簡潔にまとめられているため、すぐに読めてしまいます。

原田本初心者の方におすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

前項で『忙しいからランニングを1日休もう』と中断すると、とたんに能力が落ちてしまうと書きました。しかし、悪影響はこれだけではありません。一度休むと、ほかにも休む理由を探すようになり、歯止めがきかなくなるのです。・・・このように何かを休むクセをつけると、たとえそれが本来はあきらめてはいけない仕事であっても、自らに対する言い訳を探すようになります。・・・どんな環境でもあきらめず、乗り越えようと努力してこそ、そこに成長があるのです。」(217頁)

私はよく自分に「例外をつくらない」と言い聞かせています。

意味は、原田さんが言っていることと同じです。

一度、例外をつくると、なし崩し的に例外が広がっていくことを経験的に知っているのです。

だから、やらない理由をつくらないことが大切なのです。

目的を達成したければ、そのために必要な準備を継続することが求められます。

準備を継続するとは、すなわち、習慣化するということです。

習慣化をするのを妨げるのは、唯一、「弱い自分の心」なんだと思います。

そう。いつでも、弱い自分との戦いなのです。

まずは自分は弱いことを認め、そんな自分に負けないために必要な考え方を身につける。

必要な考え方とは、どんなときでも「やらない」という例外をつくらないことです。

寒くても、眠くても、二日酔いでも、疲労困憊でも、早朝のジョギングをやると決めたら、最後までやりぬく。

この繰り返しが、「自分に達成できないことはない」という自信につながるのです。

解雇125(秋本製作所事件)

おはようございます。 今年最後の1週間ですね。今週もがんばっていきましょう。

さて、今日は、分会長に対する非違行為等を理由とする降格・解雇等に関する裁判例を見てみましょう。

秋本製作所事件(千葉地裁松戸支部平成25年3月29日・労判1078号48頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社から降格処分を受けて賃金及び賞与を減額された上、普通解雇されたことについて、①賃金減額及び賞与減額は、そもそもY社にその権限がなく、仮に権限があったとしても人事権を濫用してされたものであるから無効であり、②上記普通解雇は、解雇事由が存在せず、仮に存在したとしても解雇権を濫用してされたものであり、不当労働行為にも該当するものであるから無効であるなどと主張して、Y社に対し、(1)雇用契約上の地位にあることの確認を求めるとともに、(2)平成20年8月以降減額されたことによる賃金未払分(月額15万円)及びこれに対する遅延損害金、(3)平成19年以降減額されたことによる賞与未払分及びこれに対する遅延損害金などの支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

降格処分、解雇はいずれも無効

賞与の減額分の支払請求は棄却

【判例のポイント】

1 人事権の行使としての降格処分は、労働者を特定の職務やポストのために雇い入れるのではなく、職業能力の発展に応じて各種の職務やポストに配置していく長期雇用システムの下においては、雇用契約上、使用者の権限として当然に予定されているということができ、その権限の行使については、使用者に裁量権が認められるというべきである。そうすると人事権の行使としてされた本件降格処分の有効性については、その人事権の行使に裁量権の逸脱又は濫用があるか否かという観点から判断していくべきである。そして、その判断は、使用者側の人事権の行使についての業務上・組織上の必要性の有無・程度、労働者がその職務・地位にふさわしい能力・適性を有するか否か、労働者の受ける不利益の性質・程度等の諸点を総合してされるべきものである

2 本件解雇事由(ア)(懲戒処分後の就労拒否)及び(イ)(出勤停止期間中の出勤等)に係るXの行為は、ずれもY社の業務上の指示・命令に従わず、会社の秩序を乱すものであって、本件解雇に至る経緯に照らしても、本件解雇の主たる理由になったものということができる。
しかしながら、本件解雇事由(ア)については、本件解雇の際にXに示された事実自体についてはこれを認めることができないのであり、就業規則所定の解雇事由に該当する行為として認められるのは、懲戒処分2で既に制裁を受けた行為であって、解雇の理由としてこれを重視するのは相当でないというべきである
・・・以上の点を考慮すると、本件解雇事由として認められるXの行為は、いずれも解雇を相当とする重大なものではないのであって、これらの事実を総合し、かつ、本件情状事由を考慮しても、Xに対して解雇をもって対処するのは著しく不合理で、社会通念上相当性を欠くといわざるを得ない。したがって、本件解雇は、解雇権を濫用したものである。

本件では、Y社が数多くの解雇事由を主張しましたが、その多くが就業規則所定の解雇事由とは認められていません。

また、解雇事由と認められた数少ない事実についても、それだけで解雇とするのは不十分なものであるため、相当性を欠くという理由から解雇は無効と判断されています。

解雇事由については、単純な足し算ではないので、1つ1つの事実が解雇事由とはならない場合には、何百個主張しても、解雇は有効にはなりません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介276 「悩み」は「お金」に変わる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。__ 明日から3連休ですね。

3連休も打合せや相談がてんこ盛りです。ばりばり働きますよ!!

←先日、常磐町の「結(リボン)」に行ってきました。

このお店は、何を食べてもおいしいです。

メニューも豊富で、なによりリーズナブルです。

超おすすめのお店です。

今日は、午前中は、立川支部で離婚調停です。

午後は、そのまま名古屋の顧問先の会社へ向かい、セミナーです。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 「悩み」は「お金」に変わる (角川フォレスタ)

多くの仕事は、人の悩みを解決することでその対価を得ています。

この本は、その当たり前のことを強く意識させてくれる内容になっています。

結局、多くの人は、読むだけで何もやらないわけですけどね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私は、日本で昔から伝えられてきた『言霊』や『念』の力を信じています。『言霊』は、思いを言葉に出すことで願っている状況を引き寄せます。『念』は思いを強くイメージすることで、そのイメージを実体化させるといわれています。・・・あなた自身が『ほしい』と思う気持ちを押さえ込もうとしていては、目標達成する速度が遅くなるのは当たり前のこと。ほしいものを恥ずかしがらずに口にすると、思いもかけないところで、安く手に入る方法を教えてもらえたり、ほしいものについてよく知る人を紹介してもらえたりします。・・・人にやりたいこと、欲しいものを話すことのデメリットはありません。メリットしか無いものなのです。」(228~229頁)

思考は現実化すると言います。

思考を言葉にすることはとても大切です。

たとえば、自分の目標を口に出すことによって、目標に賛同してくれる人たちが応援をしてくれます。

もちろん、いつもいつも欲しがってばかりではいけません。

周りの人たちが目標に向かって努力しているときには、そっと手をさしのべて、応援してあげることから始めるのです。

まずは、周りの人を応援するところから始めることが大切です。