Author Archives: 栗田 勇

本の紹介166 絶対成功する大富豪のオキテ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。

絶対成功する大富豪のオキテ
絶対成功する大富豪のオキテ

アニキ本、第8弾です。 これで全て読み切りました(笑)

また、少し経てば、新しい本が出ると思いますが。 またそのときは読んでみたいと思います。

この本、今までのアニキ本の中で、2番目にいい本です。おすすめですよ!

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

守りに入ることは、おれ風に言うと、物事を停滞させんねや。」(48頁)

ラクしたくない奴こそ金持ちなっていくんや。おれ、金持ちなってから、もっと忙しなったわ。責任も増えた。ラクなんか全然してない。・・・ラクを選ぶなや。自分の選択肢に『ラク』を持ってたら、絶対に貧乏や。・・・ラクしないとしたら、やっぱり楽しまなアカンやんけ。」(164~165頁)

守りに入ることは、物事を停滞させることだという考え方はとてもいいですね。

私にとって、「守りに入る」ということは、「新しいことに挑戦しない」「現状維持を目的とする」といったことを意味します。

今から「守りに入る」なんていうダサい生き方はしたくありません。

日々、たくさんやるべきことがありますが、その中に「安楽」ではなく「充実」を求めるという発想が大切になってきます。

死ぬときに、「あー、僕の人生は、楽だったな~」と思うより、「あー、僕の人生は、充実していたな~」と思いたいですね。

派遣労働11(日本精工事件)

おはようございます。 

さて、今日は、偽装請負と明示・黙示の労働契約の成否に関する裁判例を見てみましょう。

日本精工事件(東京地裁平成24年8月31日・労経速2159号9頁)

【事案の概要】

本件は、派遣元会社から派遣先会社であるY社に対し、派遣元会社に雇用され、平成18年11月10日以前は、業務処理請負の従事者として、翌11日以降は、労働者派遣の派遣労働者として、Y社の工場等において就業していたXら(帰化者を含む日系ブラジル人)が、Y社と派遣元会社との労働者派遣契約の終了に伴い、Y社の工場における就業を拒否されたことについて、主位的に、(1)派遣元会社と派遣先であるY社との間の契約関係が請負契約であった当時のXら、派遣先会社であるY社及び派遣元会社の三者間の契約関係は、違法な労働者供給であり、XらとY社との間で直接の労働契約関係が成立しており、平成18年11月11日以降、派遣元会社と派遣先会社でありY社との間の契約関係が労働者派遣契約に変更された後も、労働契約関係は変化なく維持されていたから、Xらと派遣先会社であるY社との間に直接の労働契約関係が継続していたというべきであること、(2)そうでないとしても、XらとY社との間には、黙示の労働契約が成立していたというべきこと、(3)(1)及び(2)の労働契約の成立が否定されるとしても、Y社には、派遣法40条の4に基づき、Xらに対する雇用契約申込義務があったというべきであるから、XらとY社との間には当該義務に基づく労働契約が成立していたというべきであることを主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに上記労働契約に基づいて平成22年1月以降の月例賃金等の支払を求めるとともに、予備的に、(4)長年にわたりXらの労務提供を受けてきたY社には、Xらに対する条理上の信義則違反等の不法行為が成立すると主張して、Y社に対し、それぞれ200万円の慰謝料等の支払を求めたものである。

【裁判所の判断】

Y社に対し、慰謝料として50万~90万円の支払を命じた。

派遣先会社との労働契約の成立は否定

【判例のポイント】

1 労働者と派遣先会社との間に黙示の「労働契約」(労働契約法6条)が成立するためには、(1)採用時の状況、(2)指揮命令及び労務提供の態様、(3)人事労務管理の態様、(4)対価としての賃金支払及び労務提供の態様等に照らして、両者間に労働契約関係と評価するに足りる実質的な関係が存在し、その実質的関係から両者間に客観的に推認される黙示の意思表示の合致があることを必要とすると解するのが相当であって、労働者派遣においては、労働者に対する労務の具体的指揮命令は、派遣先会社が行うことが予定されているから、黙示の労働契約が認められるためには、派遣元会社が名目的存在にすぎず、労働者の労務提供の態様や人事労務管理の態様、賃金額の決定等が派遣先会社によって事実上支配されているような特段の事情が必要とされるところ、請負時代、派遣時代を通じて、XらとY社との間において、黙示の労働契約が成立していたと認めることはできない。

2 派遣法40条の4所定の労働契約申込義務は公法上の義務として規定されているものであり、これによって、私法上の雇用契約申込義務が発生したり、労働契約関係を形成したり、擬制したりするものではなく、しかも上記申込義務が発生するには派遣先会社が派遣元会社から派遣元通知を受ける必要があるところ、各社がY社に対して派遣元通知をしていないので、派遣元通知のないXら、各社、Y社の三者間の労働者派遣関係において、派遣先会社であるY社に申込義務が発生すると解することはできず、申込義務に基づくXらとY社との間の労働契約は成立しない

3 Y社は、Xらの派遣先会社であって、直接契約責任を負う者ではないが、派遣先会社が派遣労働者を受け入れて就労させるについては、派遣法の規制を遵守するとともに、その指揮命令下に労働させることにより形成される社会的接触関係に基づいて、派遣労働者に対し、信義誠実の原則に則って対応すべき条理上の義務を負うと解するのが相当であり、この義務に違反する信義則違反の行為は不法行為を構成するというべきところ、本件において、Y社のXらに対する対応は、Y社が、偽装請負又は派遣法違反の法律関係の下、長期間にわたってXらの労務提供の利益を享受してきたにもかかわらず、突如として、何らの落ち度のない派遣労働者であるXらの就労を拒否し、Xらに一方的不利益を負担させるものである上、Xらの派遣就労に当たって、日本人派遣労働者の正社員登用の事実があるにもかかわらず、その選別基準について合理的な説明をしたり、再就職先をあっせんしたりするなどのしかるべき道義的責任も果たしていないものといわざるを得ないものであり、前記条理上の信義則に違反する行為であり、不法行為に該当する

上記判例のポイント3は重要です。是非、押さえておいてください。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。

本の紹介165 夢をかなえるゾウ2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます 昨日から、声がガラガラです 
__←先日、仕事帰りに七間町の「こはく」に行きました

写真は、「自家製レバーペースト」です。 普段あまり注文しないものをたのんでみました。

温かいパンと一緒に食べます。 何を食べてもおいしいお店の1つです。

今日は、朝からずっと証人尋問の準備です。 

午後は、ずっと証人尋問です。 この声で尋問ができるのでしょうか・・・。

夜は、新規相談が2件入っています。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
夢をかなえるゾウ2 ガネーシャと貧乏神
夢をかなえるゾウ2 ガネーシャと貧乏神

先日紹介しました「夢をかなえるゾウ」の続編です。

1と同様に、小説の中で、ガネーシャたちがたまにいいことを言っています。

個人的には、1の方が、インパクトが強かったです。

変に期待して、ハードルが上がってしまっているからでしょうか・・・。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『いい人』というのは、他人を喜ばせるのではなく、他人から嫌われたくないという気持ちから自分の欲求を抑えつけてしまう人です。でも、そういう人が何かを手に入れることはありません。なぜなら-自分の欲求を抑え続けることで、どんどん『やる気』を失ってしまうからです」(222頁)

自分の欲求を口に出すと、他人の欲求とぶつかります。いい人ではいられなくなります。でもそうやって欲求をぶつけながら、それでもお互いが喜べる道を見つけていくこと-それが、成功するための秘訣なのです」(223頁)

日頃、あまり考えたことのない視点ですね。

自分の欲求を抑え続ければ、他人の欲求とぶつかることもないわけですから、当然、人間関係での衝突はなくなるんでしょうね。

「いい人」でいることにどれほどの意味があるか、また、他人の視点で生きていくことにどれほどの価値があるかということは考える必要があると思います。

さまざまな価値観があることを前提として、自分はこうだ、自分はこうありたいと思いながら、日々、生活していけばいいのではないでしょうか。

やりたいことがあるのに、それを我慢する必要はまったくないと思います。

なんでもそうですが、挑戦して、失敗して、また挑戦しての繰り返しですよ。

まわりから、「おまえには無理だよ。時間の無駄からやめておけ。」と言われて、すんなり止めるくらいの意気込みなら、いずれにしても成功しないのではないでしょうか。

応援などの積極的な意見は素直に受け入れ、足を引っ張る意見はスルーをする、というくらいが丁度いいんじゃないかなと思っています(笑)

解雇93(ライトスタッフ事件)

おはようございます。

さて、今日は、分煙措置を求めた試用労働者の解雇に関する裁判例を見てみましょう。

ライトスタッフ事件(東京地裁平成24年8月23日・労経速2158号3頁)

【事案の概要】

本件は、試用期間中のXが受動喫煙による健康被害を理由に休職処分を受けるなどした後に解雇されたことを不当とし、併せて受動喫煙に関する安全配慮義務違反に基づく損害賠償を請求した事案である。

Y社は、生命保険の募集に関する業務及び損害保険の代理業等を業とする会社である。

【裁判所の判断】

解雇は無効

安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求は棄却

【判例のポイント】

1 留保解約権の行使は、留保解約権の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認され得る場合にのみ許されると解するのが相当であるところ、本件採用拒否は、(1)Y社就業規則61号に定める解雇事由(解約事由)に該当する事実が存在し(「適法要件A」)かつ、(2)その行使が社会通念上相当として是認される場合(「適法要件B」)に限り許されるものというべきである。

2 留保解約権の行使は、実験・観察期間として試用期間の趣旨・目的に照らして通常の解雇に比べ広く認められる余地があるとしても、その範囲はそれほど広いものではなく、解雇権濫用法理の基本的な枠組みを大きく逸脱するような解約権の行使は許されない

3 本件解約権行使が「解約権留保の趣旨・目的に照らして、社会通念上相当として是認されるか」(適法要件B)の有無は、解約権の留保の趣旨・目的に照らしつつ、(1)解約理由が重大なレベルに達しているか、(2)他に解約を回避する手段があるか、そして(3)労働者側の宥恕すべき事情の有無・程度を総合考慮することにより決すべきである。

4 本件解約権の行使が正当化されるためには、通常の解雇ほどではないとしても、それ相応の解約回避のための措置が執られていることが必要と解されるところ(要素2)、XがY社代表者等から受動喫煙に曝される場所でY社の保険業務を行っていたことは紛れもない事実であるから、Y社代表者は、使用者の責務として(労契法5条)、他覚的知見の提出の有無にかかわらず、Xに対し、より積極的に分煙措置の徹底を図る姿勢を示した上、あくまで保険営業マンとしての就労を促し、その勤務を続けさせ、その中で、改めて体調の回復具合や保険営業マンとしての能力、資質等を観察し、Y社社員としての適格性を見極める選択肢もあることに思いを致す必要があったのに、Xが本件休職合意を選択したのを機に、事実上とはいえXをY社事務所から締め出すに等しい措置を講じるとともに、Xの本件対応の拙さが認められるや直ちに、間髪を入れず、本件解約権を行使したのは、これを正当化するに足る解約回避のための措置が十分に講じられていなかったものと言わざるを得ないので、本件解約権の行使は、解約権留保の趣旨・目的に照らして、社会通念上相当として是認される場合には当たらず、適法要件Bを満たさない

5 労働契約に基づく労働者の労務を遂行すべき債務の履行につき、使用者の責めに帰すべき事由によって、上記債務の履行が不能になったときは、労働者は、使用者に対して、賃金の支払を請求することができ(民536条2項)、使用者が労働者の就労を事前に拒否する意思を明確にしているときも、上記労働者の労務を遂行すべき債務は履行不能となるものと解されるが、その場合であっても当該労働者は、その履行不能が使用者の責めに帰すべき事由によるものであることを主張立証することを要し、その前提として、自らは客観的に就労する意思と能力を有しており、使用者が上記就労拒絶(労務の受領拒絶)の意思を撤回したならば、直ちに債務の本旨に従った履行の提供を行い得る状態にあることを主張立証する必要があるものと解するのが相当であるところ、Xは本件再就職を機に、Y社において就労する意思と能力を有しているとは認められない状態に至ったものというべきである

6 もっとも、この点、Xは、同日以降もY社において就労する意思と能力がある旨主張し、その尋問でも、これに沿う供述をしている。しかし上記のとおりXは、正社員としてY社とは全く異なる職種の税理士法人に本件再就職しており、その勤務時間や業務内容は、Y社における就労と両立し得るものでないことは明らかである上、Y社と比べ月額給与の額(額面額)は遜色なく、賞与として給与の1.5か月分が支払われる約束であること、そして、Xは、本件再就職までの間にCFPのほかに、社会保険労務士の資格を取得しており、敢えて受動喫煙の有害性について理解に乏しいものと思われる使用者の下で保険業務の仕事を続けなければならない理由は見当たらず、むしろ新たな職場(本件再就職先)で心機一転を計ろうとするのが通常と思われること、などの事情を指摘することができる。これらの事情に照らすと、少なくとも客観的にみる限り、本件再就職の時点でもなおY社において就労する意思と能力を有していたことを認めるに足る証拠はない

非常に参考になる判例です。

まず、試用期間中の留保解約権の行使(解雇)について、「試用期間中だから解雇も認められやすい」と簡単に考えている方は、上記判例のポイント2は注目すべきです。

また、解雇後、別会社で就職した場合における取り扱いについては、上記判例のポイント6での判断は頭に入れておくべきです。

実際の訴訟においても、復職の意思が有無という形で争いになることがありますが、労働者側とすれば、注意すべき点です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介164 ビジネススキル・イノベーション(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます
__←先日、藤枝での仕事の際、「カナキン亭」に行ってきました。

中学生・高校生のときは、部活帰りによく行きました。

あえてカナキンラーメンは注文せず、キムチを別に注文するのがミソです。

おいしゅうございました。

今日は、午前中は、裁判が2件、その後、相続財産管理人として、関係会社を訪問します

午後は、新規相談が3件、個人再生委員としての面談が1件入っています。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
ビジネススキル・イノベーション ― 「時間×思考×直感」67のパワフルな技術
ビジネススキル・イノベーション ― 「時間×思考×直感」67のパワフルな技術

タイトルだけで買ってしまいました。 いつもそうですが。

プロローグは、

あなが身につけたビジネススキルは、本当に仕事に役立っていますか。」(8頁)

という出だしから始まります。

著者曰く、仕事で求められるスキルは、時代の変化に伴い、更新していかなければならないと。

そして、サブタイトルにもなっている「時間」「思考」「直感」の3つについて転換が求められているそうですよ。

時間管理は、量から質へ。 思考は、過去から未来へ。 物事のとらえ方は、知性から感性へ。」(12頁)

だそうです。 よくあるタイプの本です。

こういうタイプの本は、書いてある内容は、当然、他の本と似通ってきます。

目新しさなんて、ここまでくるとほとんどありません。

そんな中で、大切になってくるのは、「切り口」や「見せ方」です。 いかに読み手の心を揺さぶるかなのだと思います。

ビジネスと同じことです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

大量生産大量消費の時代は、みんなが同じように動けることが企業の強みになりました。そのため日本企業の多くは、模倣性の強い社員を中心に採用・育成して、仕事を機械的に割り当ててきました。ところが、企業を取り巻く環境は大きく変化し、模倣性の強い社員を中心とした組織構成では成長していくことが難しくなりました。いまは創造性の強い社員の育成が急務です。
模倣性は経験を積ませることで伸ばせます。同じ作業を積み重ねて腕を磨いていく職人のイメージです。一方、創造性は自由な領域を与えることで伸びます。模倣性と創造性。そのバランスがチームにも求められています。
」(91頁)

著者は、「模倣性」と「創造性」を対極にある概念ととらえているように読めます。

しかし、私は、「模倣性」の延長線上に「創造性」があると考えてます。

決して対極にはない。

真似もできない人間に新しいものを創造することなんてできるのでしょうか。

また、世の中の「新しいもの」のほとんどが模倣の組み合わせではないでしょうか。

一切模倣せず、新しいものを創造しなければ、今の時代はやっていけないとも思いません。

徹底的に模倣する、そして、新しい「切り口」や「角度」で表現し直すことこそが「創造」だと思っています。

労働災害56(DNPメディアテクノ関西事件)

おはようございます また一週間が始まりましたね。今週もがんばっていきましょう!!
__
←先日、スタッフと一緒に静岡駅の駅南にある「あさ八」に行ってきました

写真は、「焼きトマト」です。 めちゃうまなので、よく注文します。

まだまだ駅南には、知らないお店がたくさんあるので、開拓していきたいと思います。
 
今日は、午前中は、顧問先の会社の社長と打合せです。

午後は、証人尋問の打合せが1件入っています。

夕方からは、月一恒例のラジオです。

夜は、弁護士会で労働事件の勉強会に参加します。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は、労働者の自宅での転倒事故と業務との因果関係の有無に関する裁判例を見てみましょう。

DNPメディアテクノ関西事件(大阪高裁平成24年6月8日・労経速2157号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の事業場において写真製版作業に従事していたXが、過重労働による疲労の蓄積等が原因で、正月休み中の自宅で失神、転倒した結果、外傷性頸髄損傷を受傷し、四肢不全麻痺を後遺したと主張し、Y社に対し、労働契約又はこれに準ずる法律関係上の安全配慮義務違反ないし不法行為による損害賠償を請求した事案である。

争点は、(1)Y社がXに対して安全配慮義務を負うべき法律関係にあるのか、(2)業務と転倒との因果関係、(3)Y社の責任、(4)Xの損害額である。

原審は、争点(1)につき、X、Y社間には、雇用等の典型的な労働契約関係があったとは直ちにいえないとしても、実質的な使用従属関係があったものと評価することができるから、Y社は、Xに対し、使用者と同様の安全配慮義務を負っていたものと解されるとし、争点(2)につき、Xの転倒と業務との因果関係を認定するには、なお疑問の余地が残るとし、結局、Xの請求を棄却した。

これに対し、Xが控訴を申し立てた。

【裁判所の判断】

控訴棄却
→労働者の自宅での転倒事故と業務との因果関係を否定

【判例のポイント】

1 Xが時間を近接して2回転倒しているのは同一原因によるとみるのが自然で、この場合、当日の飲酒の影響下における平衡感覚の乱れによる転倒と、X主張のような身体内在的要因による失神、転倒の二方向からの理解が可能であるが、Xが正月休みに入って5日目であったことをも考え合わせると、本件各転倒を業務と関連付けることには相当な疑問を払拭することはできないが、他の転倒原因(失神)の可能性も排除できない状況にある

2 Xは、本件各転倒前3か月の実労働時間として事業場への入退門時刻をタイムレコーダーに打刻した入退記録表を整理した「労働時間表」のとおり主張し、X本人も「平成10年11月、12月には多数回にわたる徹夜勤務があり、平成10年12月21日から同月23日にかけて連続徹夜勤務をし、12月29日から1月1日までの正月休みには疲労困憊してほとんど家で寝ていた。」旨述べているが、Xの業務には手待ち時間が多かったこと等から在社時間即労働時間と判断できず、また在社時間から休憩時間を除いた時間をXの労働時間と仮定しても、Xの労働時間がXの主張するような過酷なものであったとは到底認められず、またXが供述する長時間労働や過重労働に関する供述もあいまいさが否定できず、Xの供述を否定する事実、証拠が見られること等に照らせば、平成10年10月から12月にかけての労働によりXにある程度の疲労が蓄積されていたとしても、平成10年12月28日から本件各転倒事故までの間には、労働負荷から解放され、当該疲労が回復する程度に休養ができていると推測される。 

要するに、業務起因性についてはよくわからないということです。

そうともいえるけど、そうじゃないといえなくもない。

また、タイムレコーダーに打刻されている時間から労働時間を推測するということはよくある話ですが、本件では、より実質的に仕事の内容をみたときに、Xの業務には手待ち時間が多かったという事実に着目し、仕事の苛酷さについて消極的な心証を抱いたようです。

本の紹介163 出稼げば大富豪 成功が見えた編(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
出稼げば大富豪 成功が見えた編 (調子ぶっこきシリーズ)
出稼げば大富豪 成功が見えた編 (調子ぶっこきシリーズ)

アニキ本、第7弾です。

これで、ひとまずシリーズは最後です・・・と思っていたら、新しい本が出版されました(笑)

さすが、アニキ。終わらせてくれません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

一番最初は好奇心100%でええねや。好奇心がなかったら探究がはじまれへん。そこで、何かみつかったら、探究心の割合を増やしていくねや。」(302頁)

好奇心は聞いたらしまいやけど、探究心というのは試してみてこそなんや。好奇心を全うする。持続こそがパワーなんや。」(303頁)

「好奇心」だけでは十分ではなく、「探究心」も必要だというアニキの意見には頷けます。

いろんなことに興味を持つことは大切なのでしょうが、食べ散らかして、結局、何も探究できないということもありますよね。

趣味の世界であればともかく、仕事では、ある程度、的を絞ることが必要なのだと思っています。

会社の経営でも、いろんなことに手を出しているところもあれば、1つのことに注力し、決して浮気をしないという会社もあります。

1つのことがうまくいくと、他の分野も制覇したくなる気持ちはよくわかります。

大切なのは、いかに業務範囲を拡げるかではなく、いかに範囲を拡げず我慢できるか、だと思っています。

私たちが、フルパワーで仕事ができる時間というのは、思っている程長くはありません。

複数の分野を制覇するほど時間は長くないのではないでしょうか。

「いろんなことをやりたい」という本能に近い衝動をいかに落ち着かせるか、という視点も好奇心の一方で持っておくべきだと思います。

継続雇用制度20(社会福祉法人甲会事件)

おはようございます。

さて、今日は、有効な戒告処分を受けた者の再雇用拒否に関する裁判例を見てみましょう。

社会福祉法人甲会事件(東京地裁平成24年10月9日・労経速2157号24頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期限の定めのない雇用契約を締結していたXが、Y社がXの定年後の再雇用を拒否したことは権利の濫用として無効である旨主張して、Y社に対し、雇用契約に基づく地位確認及び賃金の支払を求めた事案である。

Y社は、援護または更生の措置を要する者に対して援助することを目的とする第一種社会福祉法人であり、児童養護施設及び知的障害児施設を運営している。

Xは、昭和26年生の男性であり、昭和50年、Y社との間で期限の定めのない雇用契約を締結し、児童指導員として勤務していた者である。

Y社には、高年法9条2項に基づく定年後の再雇用制度に関する労使協定が存するところ、「懲戒処分該当者でないこと」等を同制度の対象としている。ただし、本件再雇用基準を充たさない場合であっても、Y社が業務上必要と認めた者については、本件再雇用制度の対象としている。

Xは、園児の指導について、就業規則に反するとして戒告処分を受けていた。

【裁判所の判断】

再雇用拒否は有効

【判例のポイント】

1 高年法自体は企業に一定の措置を講ずるよう義務づける行政法規であって、同法に基づいて定年後も労働者を雇用する義務まで課するものではないこと、同法9条2項は、労働者の過半数の代表者との書面協定によって、事業主が継続雇用の対象とする労働者を選別することを許容しているものと解されること等からすれば、その選定基準を具体的にどのような内容とするかについては、基本的に各企業の労使の判断に委ねられているというべきであり、その内容が公序良俗に反するような特段の事情がない限り、当該選定基準が違法無効となるものではない

2 本件再雇用基準は、基準自体に特段不合理な点はないこと(懲戒権の濫用にわたるような懲戒処分でない限り、懲戒処分該当者を再雇用の対象から除外することにも合理性があると認められること)、ただし書規定という救済措置もあること等にかんがみれば、公序良俗に反する内容とは認められず、他に本件再雇用基準の効力を否定する事情を認めることはできない

3 本件再雇用制度は、それまでの雇用契約を継続する定年延長制度とは異なり、定年後に新たな労働契約を締結して雇用を継続する制度であるから、新たな労働契約を締結したといえるためには、改めて、賃金等の主要な労働条件に関する双方の合意を要する。
再雇用契約の成立につき、Xは、本件戒告処分は無効であるから、Xは再雇用を求めうる地位にあり、再雇用契約が成立したものとして取り扱われるべきであると主張するが、本件再雇用制度における再雇用契約の労働条件は、雇用期間のほかは就業規則に規定がなく、再雇用協定においても、個別の嘱託雇用契約書によって定めることになっていることからすれば、本件再雇用制度において再雇用契約が締結されたといい得るためには、基準該当者による再雇用の申し出があっただけでは足りず、別途、再雇用契約の労働条件に関し、Y社と基準該当者の双方が明示または黙示に合意することが必要というべきである

4 ・・・本件戒告処分は有効というべきである。
・・・以上によれば、Xを基準該当者と認めることはできないから、X・Y社間に再雇用に関する黙示の合意があったといえるか否かについて判断するまでもなく、Xの請求は認めることができない。

久しぶりの継続雇用に関する裁判例です。

従来型の継続雇用制度を前提とした争点です。

継続雇用については法改正があったところなので、今後の動向に注目しています。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

本の紹介162 30代の飛躍力(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。

30代の「飛躍力」 成功者たちは逆境でどう行動したか (PHPビジネス新書)
30代の「飛躍力」 成功者たちは逆境でどう行動したか (PHPビジネス新書)

サブタイトルがいいですよね。 そそられます。

登場するのは、スティーブ・ジョブズさん、盛田昭夫さん、松下幸之助さん、本田宗一郎さんなどです。

成功者が、逆境に直面したときに、どのように行動したかを学ぶことは、とても有意義です。

1度も失敗せずに成功した人など世の中にいないということがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

1つの成功と次の成功がもし同じ道の上にあるのなら、1つの成功で歩んだ道を修正する必要はない。だが現実のビジネスの世界は、1つの成功と次の成功は同じ道の上にはないことを、ネクストでの失敗は教えてくれる。・・・一度は成功した企業の多くが消え去るのは、同じ道を行けば次の成功が待っていると思い込んだからだ。」(218~219頁)

よく「成功体験は捨てろ」などと言われます。

なかなか難しいですよね。

私は、「成功体験は捨てろ」という意味を、「油断するな」「個別具体的な状況から柔軟に考えろ」といった意味で考えています。

「1つの成功と次の成功は同じ道の上にはない」というのは、表現としてとてもわかりやすいですね。

すべての状況が同じでは、前と同じようにやれば成功するのかもしれませんが、そのような条件設定自体、非現実的です。

結局のところ、1つ1つ冷静に状況を判断するしかないんでしょうね。

解雇92(F社事件)

おはようございます。

さて、今日は、精神疾患により休職した者の退職扱いに関する裁判例を見てみましょう。

F社事件(東京地裁平成24年8月21日・労経速2156号22頁)

【事案の概要】

本件は、Y社(コンピュータのソフトウェアの作成及び販売等を目的とする会社)に正社員として勤務していたXが、Xの休職は業務上の傷病によるものであるにもかかわらず、Y社は、これを業務上の疾病によるものでないとして扱った結果、平成21年12月31日をもって休職期間満了による事前退職扱いとしたものであって、当該退職は無効である旨を主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位の確認を求めた事案である。

なお、Xは、自分が精神疾患による休職を余儀なくされたのは、(1)Y社の従業員Cからパワーハラスメントを受けたこと、(2)Y社の産業医Dが産業医として不当ないし不適切な行為をしたこと、(3)Y社健康保険組合がXの傷病を「私傷病」として取り扱ったこと、(4)Y社労働組合が、Xの力とならず会社側の立場で行動したこと、及び(5)XがA社の業務に従事していた際に、A社から過重労働を強いられたことが原因であると主張して、各被告らに対し、不法行為ないし使用者責任に基づき慰謝料の支払をも求めている。

【裁判所の判断】

本件退職扱いは有効

慰謝料請求はいずれも棄却

【判例のポイント】

1 Y社の就業規則においては、業務外の傷病による欠勤が引き続き6か月に及んだときは、その翌日から一定期間休職とするものとされており、さらに、休職となった者が休職期間満了までに休職事由が消滅しないときは同日をもって自動的に退職とするものとされているところ、休職期間満了時に休職事由たる精神疾患が寛解していたと認めるに足りる証拠はないから、Xは、Y社を自動的に退職したというべきである

2 平成16年2月にXが「うつ状態」との診断を受ける直前の6か月間のうち、100時間を超える残業のあった月が5か月あったことなど、Xの精神疾患が業務に起因するものであることを疑わせる事情も認められないではないが、少なくとも当該事実のみによっては、Xの傷病が業務上のものであると直ちに断定することはできない

3 Xは、当裁判所の再三の釈明にもかかわらず、業務と傷病との間の相当因果関係の存在について具体的な主張及び立証(特に医学的な見地からの主張立証)をしようとしないから、本件においては、Xの傷病につき業務起因性を認めるに足りる証拠はないといわざるを得ず(なお、Xは、多数の人証申請をしているが、いずれも上記相当因果関係の立証との関係では取調べの必要性が認められない。)、結局、本件退職扱いの無効をいうXの上記主張は採用の限りではないというべきである。

4 Xは、Cのパワーハラスメントが原因となって、本件退職扱いの結果が生じた旨を主張する。しかしながら、仮にX主張に係るCの行為の全部ないし一部が存在すると認められたとしても(ただし、現時点において、Cの行為がパワーハラスメントに該当すると評価するに足りる証拠はない。)、当該行為と本件退職扱いの結果との間に相当因果関係があると認めるに足りる証拠はないから、その余の点につき検討するまでもなく、Cのパワーハラスメントを理由とするXの慰謝料請求は理由がない。

5 Xは、Dが産業医として不当・不適切な行為をしたため、Xは職場に復帰することもできず、本件退職扱いという結果が生じた旨を主張する。しかしながら、仮にX主張に係るDの行為の全部ないし一部が存在すると認められたとしても(ただし、現時点において、Dの行為が産業医として不当ないし不適切であったと評価するに足りる証拠はない。)、当該行為と本件退職扱いの結果との間に相当因果関係があると認めるに足りる証拠はないから、その余の点につき検討するまでもなく、XのDに対する慰謝料請求は理由がない。

この事案では、原告は、考えられるあらゆる相手の行為を損害賠償の対象としましたが、すべて棄却されています。

なかには、さすがに難しいだろう・・・と思われるものもありますが、代理人の考えがあってのことだと思います。

うつ状態になったことは、労災であるから、事前退職扱いは無効であるという主張はあり得る主張です。

今回は、業務起因性が否定されたため棄却されましたが、争点としてはよく見かけるものです。

うつ状態になる直前半年間のうち5か月は残業が100時間を超えているようですが、裁判所は、この事実だけでは業務起因性を肯定することはできないと判断しました。

裁判所としては、残業時間が多いのはわかったから、協力医の意見書を提出する等、医学的見地からの立証もしてほしいと求めましたが、難しかったようですね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。